薬屋の依頼
店の奥の部屋に移動して改めて話を聞くことになった。
「それで、何かしら? その依頼って」
「えと2つほどあって、片方はもしできたらなんですが。もう片方はなるべくできるなら頼みたいです……」
「じゃあ、ひとまずもしできたらの方から聞かせてくれる?」
あたしがそう言うと彼は後ろにある棚から2つの植物を持ってくる。片方は枯れたというよりはしなびていて、もうひとつはとてもきれいな形をしている。
「これは?」
「こっちのしなびているほうは、まあ一般的に魔力が豊富な土で普通通りの育て方をした植物です。そしてこっちの元気な方は、これ自体は違いますがアンジュさんが作ってるものです」
「えっと……どういうことかしら?」
「簡単に言えば魔力の豊富な土での植物の育て方のコツみたいなものを教えていただきたいということです」
「あー。そういうこと」
野菜で話は聞いてたけど、ここまで差がつくのね。
「これなんでしなびちゃってるの?」
「魔力を取りすぎて毒になってしまった結果です。適度に魔力を与え続けると耐性がついていき、野菜自体が多くの魔力を含んでも大丈夫になるんですが、それがかなり難しいんです」
「へー」
知らないままに試行錯誤してたから、それが当たり前だと思ってた。
「まあ、つまり作り方を教えてほしいってことね」
「はい」
「まあ、あたしの方法でどこでもやれるって言うなら教えるけど、実際に場所が違うとどうなるかはわからないけどいい?」
「それは大丈夫です!」
「じゃあ、ひとまずそれは機会を見て教えてあげるわ」
あたしがそういうと彼はガッツポーズを隠れてるつもりでする。だけど、丸見えだ。
「それじゃあ、もうひとつのなるべくお願いしたいっていうのは何かしら?」
「簡単に言えば冒険者の仕事とも言えるのですが、薬屋含めてよく使うルートの近くに魔物が巣食ってしまったんです」
「本当にそれって冒険者の仕事じゃない。ギルドに頼んだほうが早かったんじゃない?」
「一応頼んではいたのですが、最近忙しいのか人がいないのかで後回しにされてて。一応、回り道ではありますが道はあるので全く商売ができないわけじゃないのも理由かもしれません」
「ふーん。それで、わざわざ言い方はあれだけど、ギルドで活発に活動してるわけじゃないあたしにってこと?」
「簡単に言えばそういうことになります」
「まあ、魔物次第ではあるけどいいわよ。報酬さえ用意してくれればね」
「は、はい! どうにか」
「……ねえ、その様子だとそのあんまりお金に余裕ない感じ?」
「え、えっと、はい。大きな商業ギルドができたのに加えて材料にしても売り出しにしても迂回のためで費用が増えましたから」
「それなら、材料の一部はあたしも提供するからポーションの現物を報酬にしてくれればお金はいいわよ。今何かと入り用でね」
「え? そ、それでいいんですか? 素材まで提供していただけるならこっちも願ったり叶ったりですけど」
「いいのよ。お金には困ってなくてむしろ今は現物が欲しかったところだからね。まあ、そういうことなら明日までに契約書用意しておいて頂戴。またくるから、それで契約成立としましょう。それと今ある魔物の情報も」
「は、はい! わかりました!」
よし、これでポーションの問題は解決できそう。仕事ぱぱっと片付けちゃいましょう。




