今の自分
「まあ、そんな感じの剣の柄よこれ。刃がどこにいったかはさっぱりしらないけど」
あれって何百年前のことなんだろう。死んでから転生するまでに空いた時間も細かく覚えてない。
聖剣との出会いを話し終わると、目の前の2人はなんとも言えない表情で言葉を失っていた。
「ちょ、ちょっと待って下さい。シエーラさんが……あの勇者?」
「そうだけど」
「いやいや……いやいやいや! さ、さすがに私でもそれには騙されないわ!」
「しかし、柄に残っている聖なる気配はワタシが知っている神官などのものとは違ったから、本当ならば納得はいく。だが、それならなぜ生きているかということや名前のことや別の謎がでてくるが」
まあ、普通はそうだよね。あたしだって、目の前に数百年前の元勇者ですとかいってきて、その証拠に近いものがあったら疑問がいっぱいでてくる。
「まあでも一気に今日話すのは疲れるからここまでってことで」
「気になりまくるんだけど!」
「まあ仕方ない。少なくともその柄が聖剣である可能性が高いということがわかっただけでも少しスッキリした。しかし、シエーラさんに興味はさらにわいたよ」
「そ、そう」
そこまであっさり引き下がられるとそれはそれで寂しいな。あたしってもしかしてかなり面倒くさい性格なのかも。改善を目指していこうかな。
外を見ればまだ明るいので少し森を散歩することにした。
すると一緒に行きたいということでシグニアさんもついてくる。
「明日来る人はどんな人なのかな?」
適当に森の中の歩きやすい道を歩いているとふとそんなことを聞いてきた。
「アリアさんは……一生懸命な人かしら。出会いは結構利益とかも絡んじゃってたかもしれないけど、今となってはあたしにとって大切な友人よ」
「信頼してるんだな」
「まあね。ただ、仕事しすぎて倒れるんじゃないかって最近は心配なのよね。でも、なんでそんなこと聞くの?」
「初対面とはいえ少し知っていたほうが話しやすいから。ちなみにその人には元勇者だということは?」
「言ってない言ってない。むしろ、2人に言ったのが初めてだしね」
「そうか……何かすまないことをした」
「いいのよ。どうせいつかは話すつもりだったし。少なくともリリアちゃんにはね。きっかけつかめなかったから助かったわ」
「そういってもらえると気が楽になる」
「むしろ、そっちこそ立場的には仇敵と思ってもおかしくない気がするけど」
何気なくあたしがそう聞くと彼女は足を止める。
「ワタシが生きている時間からすればすでに伝説だからな。それに、ワタシの種族は魔族の中でもそこまで社交的ではない。敵という意識はまったくなかった」
つまり、シグニアさんの種族の中では勇者は敵でもないし、魔王がとても偉大な人という印象は薄いってことかな。
「ひとまず、明日はワタシも少し緊張しているので同席してもらえると助かるんだが」
「それは任せなさい。アリアさんに紹介したのだってあたしなんだからね」
あたしが胸を張ってそう伝えるとなぜかこっちに近づいてくる。
顔が間近に来たときに思ったのは凛々しい美人でまつげとかも綺麗だということだった。
「人間も魔族も関係なくあなたはワタシがあった中で一番優しい人だな」
その言葉を聞いて、あたしはなんとなく照れてしまった。勇者として褒められることはあっても、こうやって自分を褒められることを望んでいたはずなのに、どうにもむず痒さには慣れなさそうだ。




