奇妙な縁
この日は持ち合わせも少なかったので購入はしないことにした。そのことを言うと「よかったらまた来てね。物によってはオーダーメイドも受け付けてるから」とマリッジさんはあたしを見送ってくれる。
ルスマンはというと店を出るとまた街で宣伝活動すると言って小走りで中央広場の方へと消えていってしまった。
空を見れば約束の時間にはちょうどいい頃だ。あたしも城の前へと移動することにした。
城について兵士に話しかけると中へと案内されて、客室の1つで待つことになる。
徐々に城の兵士に顔覚えられてる可能性を、今日の二つ名の一件のせいで頭によぎったけど、こっちの行動は必要なことだから仕方ないと割り切ろう。
しかし、さすがの1国の城だな。客室1つとっても豪華という感想が浮かんでしまう。
少しすると部屋の扉が開いてアリアさんが中にはいってきた。
「お待たせしました」
「大丈夫よ。お仕事お疲れ様ね」
「いえいえ、徐々に落ち着いてきてはいますので。あ、どうぞ座って話しましょう」
挨拶のために立ち上がっていたらそう言われたので改めて座る。
「あれから、その方とはどうですか?」
「今のところは、少なくとも敵対的にはなってないと思うけど。あたしがどう思われているかはわからないわね」
「そうですか。一応、5日後ならそちらに私が行くことも可能なんですけど」
「あたしは別にそれでもいいわよ。それにあの子も、魔族側に対しても簡単に帰るには難しい状況だしね」
「そこも私達で解決できればいいんですが、フォックステイルとなると簡単にはいきそうにないですね」
「やっぱりそうよね。でも5日後にこっちにきてくれるなら一度話してみてくれると助かるわ。あたしのところにずっといてもらうこともできなくはないけど、外に出れないのは苦しいだろうからね」
「わかりました。おまかせください」
その後に、細かい時間や予定を話し合ってから城を後にする。アリアさんはまだ今日のうちにやれるならしたい仕事があるらしい。
「大丈夫かしら……」
あたしは城を眺めながら思わずそう呟いてしまう。
辺りは暗くなってランタンなどに火がつけられて街中を照らしている。あたしは家路につこうと門に向かって歩き出す。
「おやおや。今日はご縁がありますね」
家路につこうと思った矢先に今日すでに聞いた覚えのある男の声が耳に入ってしまった。聞かなかったことにして進んでいきたいけど、あっちも追いかけてくる。この時間に外にあたしが出るのを不審に思われても嫌だな。
「そうね……魔法道具店の宣伝?」
「こんな夜ですと店側としても来客はあまり好ましくないかもしれませんからね。夜には夜のお店紹介をしております。ご興味は?」
「全く無いわよ……夜のお店って何よ。どうせ酒場とかじゃないの?」
「酒場に合法の娼館や奴隷市場が主ですかね」
「ますますお断りよ。そういうのは間に合って……いるかどうかはともかく、今は気分じゃないわ」
間に合っているだと、そういう行為には満ち足りてるとか認識されそうで思わず言い訳のようになってしまった。
「そうでしたか。奴隷市場に珍しい奴隷が入ったということで、わたくし共の間では盛り上がっていたのですが」
「興味ないって」
「魔族の奴隷だとかで」
「魔族……?」
敵国ではなくなっていても、魔族を奴隷にするっていうのは今はかなりリスクがある気がする。そんなこと許されているのかな。
「それ合法なの?」
「おっと、これは……まあ、なんといいますか穴を突いた形ですかね」
「はあ……本当に人の興味引くの上手いわよね。いいわよ。店はともかく話は聞こうじゃない」
「ありがとうございます。夜だと中々話を聞いてくれる方がいなくて心が折れそうなところでした」
こいつに折れる心があるとは思えないけど、今はそんなことはどうでもいい。
あたしはルスマンに連れられて、小さな酒場へと移動した。




