銀の美人狐
「ふぅ……そんなに動いて大丈夫なの?」
「自分の体の具合は自分でわかるさ。心配ありがとう」
ひとまずシグニアさんには本人の考えがまとまるくらいまでならいていいと伝えた。これはあたし的にはうちにとどめてアリアさんの機会も伺う意味も持っている。
リリアちゃんに森に単独でだすわけにも行かない。けれど木の実などが少し不足してきたので採取に来ている。
そしたら運動がてらついていきたいと言われたので一緒に作業中というわけだ。
「しかし、この森はすごいな。大地にまで魔力が染み込んでいるから木の実を食べているだけでも傷の治りが早い」
「やっぱり魔族とかだとそういう風になるの?」
近くの木でお互いに作業していると話しかけられたので、いい機会なので聞いてみる。まだ、話しかけるタイミングとかがつかめないのよね。
少なくとも悪い印象はない。
「少なくともワタシたちの種族は、魔力を体内に溜め込める量が多いと言われているみたいだ」
「へぇ~、種族差があるのね」
「人間は少ないらしいな。だからこそこういう場所に住んでいたりすると、魔力過多によって体調を崩したりしてしまうとか」
「あんまり意識してないけど、そうみたいね。でも傷の治りと関係あるの?」
自分であさっていた木の熟した実をとって木から降りる。
あっちも終わったみたいでこちらへとやってきた。
「ワタシたちは魔力を使って体調などを調整している部分もある。これくらいでいいか?」
「うん。取りすぎるとあとで育たないし動物も食べるからね。でもそれって争いになると辛くない?」
「まあ魔力をそこそこ使った状態で傷が多いと、会ったときのワタシみたいに倒れたりしてしまう上に、傷の治りも遅くなってしまうな」
魔力は寝たり食べたりすれば回復はするんだろうけど個人差もあるだろうし、かなりギリギリだったってことね。
「しかし、なぜそんなことを? シエーラさんは博識なイメージがあったのだが」
「そんなことないわよ。あくまであたしは知ったかしてるのと、自分の考えをまとめる事が得意なのかもしれないだけ」
実際には長生きしてるだけとも言えるけどね。
「そうか……ところで、ワタシも一度2人になったら聞いてみたいことがあったのだが」
「何? 答えられることなら、ものによっては答えるけど」
「リリアとは一体どういう関係なんだ?」
いつの間に名前呼びになったんだろう。
「うーん……」
まあ、今はそっちはおいて、どこまで説明していいんだろう。というか、下手したら風呂とか紋様は見られてるかもしれないのか。
「魔族って奴隷とかって今はどうなってるの?」
「国や場所によりけりだが、昔よりは減っているはずだ。階級による上下関係は未だに影響が強いけれど。もしかして、そういう関係なのか?」
「まあ、一応はそういう関係になってるわ。ただ、ひどく扱うことはしてないわ。訳ありでね」
「そうか……まあ、一緒に過ごさせてもらってそこはわかっている。いっその事契約にしばられたりしてしまったほうが、立場も楽になる時もあるしな」
「そんなことあるの?」
「いい主人に巡りあえればだがな。使用人とかもそうだろう」
まあ、たしかにひどい主人相手だと使用人が奴隷同然の扱いされてるなんてこともあるのか。奴隷と違って表にバレた時どうなるかわかったもんじゃないと思うけど。まあこの国だと奴隷だとしても、そんなことしてバレたら罪に問われると思うけどね。
「そろそろ帰りましょう」
「わかった。荷物は持とう」
「おお……力持ちなのね」
「仮にも獣人だからな」
しかし、リリアちゃんがかっこいいっていうのもわかる気がするな。こうやって二人きりで色々してると細かい行動とかが男前だ。
あたしも前世でこんな風に出来てたら、モテたりしてたのかな。まあ、別にモテたくて勇者してたわけじゃないけど、流石に何もなさすぎたと最近つくづく思うよ。
でも、それは今が幸せだからこそなのかもしれないけどさ。




