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魔女の気まま暮らし~元勇者は不老で最強になってました~  作者: ゆっき
第1章 元勇者と元貴族
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気まま暮らしと初めての街

 転生して新しい人生が始まってから早いことで数百年が経過した。

 案外と自給自足をしていくだけでも時間が経過していくし、森の中を探索してみるとやれることも多くて、外に出る必要がない。


 あえて弱点を言うならば話し相手がいないことだ。だけど、いつかここを訪れる人が来るかもしれないし、自分から街にでなければならない日の事を考えて口調の練習もした。

 一人称を女らしく『あたし』に変えて口調も自分の中での女性らしい物を模範したの。

 最初こそ恥ずかしかったけど数百年も続ければ元から女に生まれていたように自然な言葉になった。まあ、いまの体的には元から女なわけだけれど。


 後は髪型も変えた。ロングのストレートでも良かったけれど、せっかくなので男時代にすることは絶対になかったであろう編み込みをしてカチューシャのようにしたり、後ろをハーフアップにするのがお気に入り。

 まあ、見せる相手は今のところいないけどね。


「よいしょっ!」

 現在、あたしは倉庫にあった剣を片手に森にでてくるスライムや動物を狩っている所だ。

 ただ、剣も数十本あったうちの最後の1本で限界が近い。


「さすがに街にでないとだめよね……」

 あたしは解体を終えた動物の肉と、他に集めた素材を持って家へと帰る。

 転生時に寝ていたこの立派なログハウスは、今は完全にあたしの家だ。実は最初は本当にあたしの物なのかなと疑ってすらいた。


「肉は駄目になる前に食べちゃわないといけないとして、街に行く場合よね」


 あたしは倉庫の扉を開く。

 最初は空っぽに近かったここも、今や使用しなかった素材で一杯になってしまっている。


「こればっかりは、勇者時代のほうが強制的に整理できてよかったかも」


 勇者の頃は旅のために最低限に荷物を抑えなくてはいけなかった。いらないものはすぐに使ってしまうか売っていた。今は幸か不幸かお金を使わなくても生きていけている。


「まあ、仕方ない。いい加減売りに行かないとね」


 あたしはひとまず一度には運びきれないと判断して、一番売れそうな物を運べるだけ荷袋に詰めることにした。

 魔物が吐き出した宝石に直感的にだが珍しいと思った木の実、それと動物の皮や爪などを詰めて一度持ち上げてみる。


「うん……歩くならこれくらいが限界かも?」


 その後も何度か持ち上げてみて、近くにあった小さい宝石を中に入れて倉庫を後にする。

 次に向かったのは自室だ。

 人と会うのは百年ぶりくらいになる。

 会話はしてないけれど人自体は森のなかで何度かみていた。そのうちの数人は出会ったときには手の施しようがない状態で、お墓を作ることになったけど。


 それは置いておいても、やっぱり街という場所に行くからには、それなりの格好をしないといけない。

 村娘の田舎娘扱いでも構わないけど、荷物を考えるともう少し旅人風かお金を持ってる感じのが印象が良い気がする。それに人前に女の姿で出るのは初めてだからね。


 あたしは女神様が用意していた物の中から、肩出しで膝丈の白のドレスを選ぶ。更に腰にリボンを付けて引き締め、肩から胸ほどまでの半袖の赤系上着を着る。


「自分のセンスが正しいかはわからないのよね」


 もっと前世で人を観察していれば別だったのだけれど、今嘆いても仕方ない。

 街に行くのだからそれも勉強してこよう。

 あたしは準備を終わらせて空の様子を見る。そして大丈夫と確信して街へ向かって歩き出した。


 ***


 森をでてから街へは簡単にたどり着くことができた。

 私はひとまず気になる事があったので入り口の大きな門を見張っている兵士に話しかける。


「お疲れ様です。あの、ちょっと聞きたいことがあるんですがいいですか?」

「ありがとうございます。私で答えられることならばお答えしましょう!」


 兵士の男性は丁寧にそう言ってくれた。勇者の旅の間で兵士の対応がものすごく悪くてひどい目にあった経験があるから、この対応だけでも安心できる。


「ここは何ていう街なんでしょうか?」

「旅の方ですか? ここはリューシエラという街です。ラシリア皇国の東大陸の首都で、この周辺の街としては一番大きいです」

「ラシリア皇国の……ありがとうございます」

「いえ! 是非、ゆっくりしていってください!」


 私は挨拶を済ませてから街の中へと入る。

 ラシリア皇国は聞いたことのある国の名前だ。たしか海沿いで一番大きな国の名前だった気がするけれど、魔王がいたのが西大陸だったこともあって東大陸はほとんど訪れなかった。

 どおりで見覚えのない街だったわけだ。まだまだ世界は広いな。

 街の中は活気に溢れているし、整備が行き渡っていた。

 水路の水はきれいで地面も石でしっかりと舗装されている。これなら歩きやすいし雨でドロついて馬車や荷車が車輪を取られることもない。


「門からまっすぐ行くとすぐに商店通りにつくのね。それで、所々にお茶できるお店もある」


 歩いているうちに中央と思われる広場にたどり着く。四方に大きな道は別れていた。


「えっと、入り口からまっすぐみて右があの感じだと露店とか市場かな? それで雰囲気的に左が宿屋とか冒険者ギルドのある通り。そしてまっすぐ行くと――」


 私は改めて前を見る。

 大陸の皇国首都ということで、道の先には大きな城がある。


「周りの建物的にも貴族が住んでたりする地域かな? 物が売れるのどこかしら?」


 冒険者関連ってことで左にあるのか、それとも右の市場に混じっているか予想がつかないわね。


「そこの青髪のお方。お困りですか?」


 あたしが左右をキョロキョロとしながら考えていると声をかけられた。

 そちらを見ると、大きな翼と尻尾。そして体中を覆う鱗にドラゴン的な顔が特徴的なドラゴンマンが立っていた。


「ドラゴンマン、初めて見た。あっ、ご、ごめんなさい」


 思わず口から出てしまった。

 西大陸では翼や尻尾がありつつも顔は人間にほど近いドラゴニュートがいて、ドラゴンマンは魔族の一種であるリザードマンの存在もあってか差別的な国が多かった。


「いやいや、構わんとも。西大陸の方から来た方かな?」

「え、えぇ、そうなの。本当にごめんなさい」

「よくあることです。この皇国は大陸を跨いで存在していますからね。それで、改めてお困りですか?」


 ドラゴンマンの彼は紳士的にそう言ってくれる。

 あたし自身差別は嫌いだったけれど、大陸によってはその常識も全く変わるのね。

 穏やかに暮らすにしても、もうちょっと街にでてきて常識学びましょう。じゃないと、まずい気がするわ。


「少し売りたい物があって。買い取りを行ってくれるお店ってどこにあります?」

「そうでしたか。それでしたら、今日狩りたての肉や魚などでしたら、あちらの通りの市場で、他の場合は反対の通りの冒険者ギルドの向かいにあるギルドショップで買い取りを行っていますよ」

「ご丁寧にありがとうございます」

「いえいえ、このエンブレムのついた人間は、国の兵士か関係者ですので困ったら気軽にお尋ねください。では」


 彼は腕の上の方で巻いている布につけているエンブレムを見せてくれたあとに、そう言って別の人の元へと小走りで移動していった。

 あたしは言われたとおりに冒険者ギルドがある通りの方へ向かうことにする。

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