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214・季節は巡り

 学園都市に暮らす住民達を、深い悲しみの底へと叩き落とした【魔石事変】。

 この事件は解決をみても尚、住民達の心に深い傷跡として残り、学園都市に暗い影を落とし続けていた。


 街を見渡してみれば、事件以降営業を再開していない店舗が多く見受けられ。

 住民達の表情をみれば、笑顔を浮かべてはいるものの、何処か憂いを帯びているようにも感じられる。


 加えて、住民達も何が正解だったのか分からなかったのだろう。

 被害者や遺族に対する過度な気遣いや配慮をするあまり、腫れ物に触るような雰囲気が広まることになった。


 その結果、住民の意図しない形で雰囲気が悪化してしまい。

 事件以降、学園都市から活気は失われ、まるでお通夜のような状況が続くことになってしまったのだが……


 きっと時間の流れというものが、住民達の心の傷を癒し、関係すらも改善してくれたのだろう。


 風の冷たさが厳しさを増し、新たな年を迎え、草花が色づき始める頃。

 住民達は以前と変わらない生活を取り戻し始め、学園都市も以前のような活気を取り戻し始めていた。


 そして、それは僕自身も同様であり。


 昼休みに食堂へと集まり、他愛もない会話で友人達と笑い合う。

 メーテとウルフと共にテーブルを囲み、美味しい夕食に舌鼓を打つ。

 ベットへと潜り込み、眠りに就くまでの時間を読書に費やす。


 そのような日々を送る中で、事件やエイブン達のことを思い出す機会も少なくなっていった。

 正直、それは寂しくもあったし、自分が酷く薄情な人間のように思えてしまったのだが……


 恐らく、人間という生き物は、いつまでもつらい記憶を抱えていられる程強くは無いのだろう。

 だから、つらい記憶をそのままにしてはおけず、記憶を薄めてしまう。


 それは、いうなれば心を守る為の防衛本能。

 時に忘れるという行為は、前へと進む為の弱さでもあり、乗り越える為の逞しさなのかもしれない。


 まあ、それはそれで都合の良い解釈なのかもしれないが……


 ――ともあれ、エイブン、ビッケス、シータ。三人との大切な記憶は胸に刻まれているのだ。

 いつまでもつらい記憶を引き摺り続け、その記憶で上書きしてしまっては元も子もない。

 例え、思い出す機会が少なくなったとしても、ふと思い出される記憶が笑顔であることが――三人の笑顔であることが大切なのだろう。


 少なからず、僕はそのように思うと共に、前へ進んでいこうと考えるようになったのは確かだった。


 少し話が逸れてしまったが……

 兎にも角にも、時間というものが様々な問題を解決してくれたのは紛れもない事実なのだろう。

 日を重ねるごとに、住民達の間には自然な笑顔が増え、学園都市も以前の賑わいを取り戻していくことになった。


 それに伴い、一時休校となっていた学園も再開され、僕達も以前の日常へと戻っていく訳なのだが。

 平日は学業に励み、休日は復興作業の手伝いに追われていた所為だろうか?


 気が付けばあっという間に時間が流れており、風が花の香りを運ぶ、穏やかな季節を迎えることになっていた。


 そして、穏やかなこの季節は出会いの季節でもあり、または別れの季節でもある。

 それは勿論、僕達にとっても例外では無く――







「グレゴ先輩。コーデリア先輩。本日は卒業おめでとうございます」


「あざっす! いや〜、六年も通ってただけに、卒業となると流石に感慨深いものがあるっすね〜」


「ええ、この六年間で様々な経験を積ませて頂きましたわ。

今日でお別れとなると……なんだか込み上げてくるものがありますわね」  



 桜に似た木々が咲き誇る正門前。

 僕が祝辞を送ると二人は嬉しそうに、それでいて少し寂しげな笑顔を浮かべた。


 桃色の花弁がチラチラと舞い、そっとコーデリア先輩の肩へと降りる。



「本当に掛け替えのない時間でしたわ……

出来る事ならもう少し学生でいたい。そう思える程に」



 コーデリア先輩はそう言うと、そっと肩の花弁を摘み、フッと息を吹いて花弁を宙に舞わせた。



「なんなら留年してみたらどうっすか?

そうしたら俺達と一緒に学園生活送れるっすよ?」


「それは魅力的な提案だとは思いますが……流石に留年なんてしたらお母様に怒られてしまいますわ。

それに、折角冒険者を続ける許可が下りたというのに、白紙に戻されては困りますしね」


「そりゃ困るっすね……幸か不幸かどうにか降りた許可っすからね」


「ええ、許可が下りるまでの経緯を考えれば、簡単に手放してはいけませんもの」



 ダンテが口にした冗談に対し、真剣な表情で受け答えるコーデリア先輩。

 聞く話によると、コーデリア先輩の母親が提示した条件――


『卒業までに結果を残さなければ冒険者を辞めて貰う』


 といった条件を見事に果たし、冒険者を続ける許可を得たらしいのだが……

 【魔石事変】での活躍が大きな判断材料とされたようで、事件が事件だっただけに素直に喜んで良いのか分からない。というのが本音のようだ。


 しかし、そのような経緯の元に下りた許可だからだろう。



「住民達の犠牲の上に下りた許可ですものね。

犠牲者の為――などと大層なことは言えませんが、誇って貰えるような冒険者になってみせますわ」



 冒険者を続ける意思は堅く、決意もまた堅いようだった。


 そして、そんな決意を聞いていたのであろうグレゴ先輩。



「まあ、そう考えるのは確かに立派だとは思うけどよ。

王都にある【蒼薔薇の騎士団】からもお声は掛かってたんだろ?

団長はコーデリアの母親だって話だし、お前の実力を考慮すれば将来は確約されてるようなもんだ。

それなのに誘いを蹴っちまうのは、なんだか勿体無い気がするよなぁ〜」



 出世街道を蹴ったことに対して少しばかり思うところがあるようで、呆れ顔で尋ねる。



「蒼薔薇の団長――母の意思を汲んであげられなかった事に対しては心苦しさがありますが……

やはり、冒険者になるのは幼い頃からの目標でしたもの。簡単に捨てることなんてできませんわ」 


「そりゃあ分かるんだけどよ。

王都勤務の騎士団とはいえ、下積みから始める俺からしたらやっぱり勿体無いって思っちまうわな〜。 

……でも、まあ、それがお前の選んだ道なら、俺がとやかく言うのも野暮なんだろうな」



 コーデリア先輩の答えを聞き、やはり呆れ顔を浮かべるグレゴ先輩。

 王都の騎士団に入隊することは以前から聞いており。

 加えて、長い下積み生活が続くことや、力の無い貴族では出世からは程遠いことも聞いていたので、グレゴ先輩が少し愚痴っぽくなってしまう気持ちも、なんとなくだが理解することが出来た。



「確かに勿体無いのかもしれませんわね。

ですが、わたくしはこれで良かったと思っておりますし、間違いではないと思っていますわ。

それに、もし間違いであると笑われ、後ろ指を刺されたとしても――『コーデリアの選択は間違いじゃなかった』そう周囲に認めさせるだけの努力と功績を残して行くつもりですもの。

それよりも……第四席ともあろう方が随分と弱気じゃなくて?」


「煽ってくれるじゃねぇか?

でもまあ、悔しいことにコーデリアの言い分には一理あるわな……

正直、出世は難しいかもしれねぇけど、俺も王都で頑張ってみっかなぁ~」


「そうですわよ。お互い腐らずに頑張ろうじゃありませんか?」


「……そうだな。まあ、適当に頑張ってみるわ」



 実際、この二人が話している場面を見掛ける機会は少なかったし、特別仲が良いようにも思えなかった。

 しかし、六年という歳月を共に過ごし、席位を争った者同士であることを考えれば、僕が与り知ることのない特別な思いがあるのだろう。

 まるで戦友の将来を案じるかのように、お互いが微笑みあった。


 微笑みあったのだが――



「その話はさて置き。

今後はどうするつもりだ? 学園都市を拠点に冒険者を続けるのか?」


「いえ、その事についてなのですが……暫くの間、旅に出ようと考えていますの」


「へ?」



 続けて交わされた会話を聞き、僕は間の抜けた声を漏らしてしまう。



「へっ? 卒業後は学園都市で冒険者活動をするって言ってなかったっすか?」


「ええ、確かにそのような話を聞いた気がするのですが……」



 次いで疑問の声を上げたのはダンテとベルト。



「んにゃ? ウチもそう聞いてた筈にゃ……旅に出るにょか?」


「旅行とかでは無く、一人旅みたいなことですよね?

コーデリア先輩……なにかあったんですか?」



 ラトラとソフィアも、心配そうな表情を浮かべて疑問の声を上げる。


 そして、そんな疑問の声を受けたコーデリア先輩。

 神妙な面持ちで僕達に視線を向けると、下唇を少し噛んだ後に口を開いた。



「本当はそのつもりだったのですが……それでは甘えてしまうと思いましたの」


「甘える……ですか?」


「ええ、此処には【黒白】の皆さんも居ますし、オーフレイム叔父様もいますわ。

このまま学園都市に留まって冒険者を続けていては、わたくしは更に弱くなってしまうと感じましたの」


「更に弱くなるって……充分強いじゃないっすか?」


「ダンテさんが言うように、実力に関していえば相応の自負を持ち合せていますわ。

弱いのは内面――わたくしは心が弱いんですの」



 そう言ったコーデリア先輩だったが、僕には思い当たる節が浮かばなかった。

 実力に関しては折り紙付きだし、精神が弱いといってもあの事件を乗り越えたのだ。弱い筈がない。

 目を背け、一度は心を閉ざしてしまった僕なんかよりも、ずっとずっと強いのだろう。


 しかし、そのような考えを他所にコーデリア先輩は弱さを吐露する。



「皆さんは気付いていなかったのかもしれませんが……

地下通路で【落書き】達と初めて対峙した時、わたくしは動くことが出来ませんでしたわ。

天才だ。【双極】だと持て囃されても所詮は小娘。【落書き】達の悪意に怯んでしまい、動くことが出来ませんでしたの。

だから、どうして良いのか分からないままに立ちつくし、オーフレイム叔父様に全ての判断を委ねてしまいましたわ。

それに【キメラ】と対峙し、止めを刺した時だってそうですわ……

口では勇ましいことを言ってみても、実際は皆さんの判断に便乗しただけに過ぎませんわ。

先輩だっていうのに、皆さんを引っ張っていくどころか、判断を委ねてしまう弱い人間――それがわたくしという人間ですの」



 コーデリア先輩はそう言うと、悔しそうに顔を伏せたのだが――



「ですから……わたくしは一人で旅に出ようと決意しましたの!

自分の弱さを克服する為! 人の判断に委ねるのではなく、自分で決断できる強さを手に入れる為に!」



 前を向いたその顔からは悔しさなどは微塵も感じられず。

 眼差しには決意が。言葉には強い覚悟が含まれていた。


 恐らくだが……様々な葛藤があったのろう。

 だから、今まで言い出せずにいたのだろうし――握った拳が微かに震えているのだろう。


 そして、そのような姿を見た僕は、コーデリア先輩へと声を掛ける。



「……決意は堅いんですよね?」


「皆さんには――【黒白】には迷惑を掛けると思いますが……

この決意は揺るぎませんわ。もっと早くに伝えられれば良かったとも思うのですが……」


「そうですか……それなら僕は止めません。

【黒白】のリーダーとして、旅立つコーデリア先輩の前途を祈って笑顔で見送るだけです」


「アル……それでいいの?」


「いいんだよソフィア。

話を聞いた今、このままコーデリア先輩を学園都市に縛りつけるのは良くないように思えるんだ。

それに僕達は学生だから、冒険者活動をするのも休日に限られてるでしょ?

それだと満足な活動をさせてあげられないし、コーデリア先輩の枷になっちゃうと思うんだ」


「そう言われればそうかもしれないけど……アルは寂しくないの?」


「寂しいよ? でも――」



 僕はコーデリア先輩へと視線を向ける。



「これでお別れって訳じゃないんですよね?」


「と、当然ですわ! 旅に出るといってもわたくしは【黒白】の一員ですもの!

わたくしを受け入れてくれた【黒白】から浮気をするような真似はしませんわ!

そ、それとも! そんな尻の軽い女だとお思いでして!?」


「お、思っていませんよ! お、落ち着いて下さい!

って、ってことだからさ。寂しいけどそこまで寂しくは無いんだよね?

むしろワクワクする。っていうのも変な気がするけど、一人旅でどれだけ実力をつけてくるのか?

そういった気持ちの方が強いんだよ」


「そっか……うん。そう言われてみれば楽しみかもしれないわね!」


「で、でしょ? 今でも十分強いのに旅を終えたら――そう考えると凄く楽しみなんだよね」


「そ、そこまで期待されると逆に不安がありますが……

き、期待に添えるだけの努力を重ねていく所存ですわ!」



 コーデリア先輩のどこか気の抜けた答えに僕達は笑い合う。


 正直、寂しくは無いといえば嘘になるし、女性の一人旅は心配だ。

 しかし、僕が止めたところでコーデリア先輩の決意は揺るぎそうにない。

 だったら、涙で引き止めるような真似はせず、笑って送り出してあげるのが正解なのだろう。 


 それにだ。

 コーデリア先輩の実力があればどのような困難があったとしてもきっと乗り越えていける筈だ。

 そう信じて送り出すことが、仲間としての信頼の証なのかもしれない。


 そのように考えていると。



「コーデリア先輩の決意は分かったっす。

俺達が止めたところで考えが変わらないってのも理解したっす。

でも、どうするつもりっすか? 合流の問題とかがあると思うんすけど?」


「それでしたら考えておりますわ。

アルは卒業後に迷宮都市を目指すつもりですのよね?」


「ええ、その予定ですね」


「でしたら、三年後の今日この日に迷宮都市を訪れますわ」


「三年後? 何で三年後なんですか?」


「一年や二年じゃ確実に実力が上がったと言えないかもしれませんし……

さ、三年を見越せば、確実に実力は上がっているという打算の元ですわ!」


「だ、打算の元なんですね。

だけどそうなると……随分と先になってしまいますね」


「ええ、確かに随分と先になってしまいますわ。

ですが、私の打算は兎も角として、皆さんも状況を整理する為には一年か二年は必要なんじゃありませんか?」


「あ」



 そのように言われたことで僕は気付く。

 僕は身軽だから卒業後すぐに迷宮都市に向かうことも可能だが、皆は違う。

 ダンテやベルトは貴族だし、聞く話によれば将来の進路について両親と折り合いが付いていないという。

 本来であれば、後継者として候補に挙がることの無い末子だったのだが……

 幸か不幸か【席位争奪戦】の成績などが考慮され、後継者としての価値を見い出されつつあるようだ。


 それに、ソフィアやラトラにしたってそうだ。

 ラトラは氏族の長の娘で、親に実力を認めてもらうことが自由に生きる条件だと言っていたし。

 ソフィアに至っては……


『べ、別にパパの跡を継ぐつもりは無いからいちいち報告しなくてもいいのよ!

それに報告したら報告したで、卒業したら帰ってこいの一点張りなんだから!』


 などと言い、父親であるパルマさんと今後の進路について衝突しているのだから問題だ。


 要はそういった問題を解決する為にも一年。

 又は二年という時間が必要だとコーデリア先輩は言いたいのだろう。



「確かにそうですね……皆のことを考えれば必要な時間なんでしょうね」


「分かって頂けたようですわね?

ですので三年後――皆さんが何のしがらみもなく集まれるであろう時期。

それを見越して、三年後という時間を提示させて頂いた訳ですの」


「成程……そういうことだったんですね」



 僕はコーデリア先輩の言葉を聞いて頷く。

 それと同時に、これからの進路というものに頭を悩ませる。


 僕が迷宮都市へと向かうことは変わらない。

 しかし、友人達には貴族や氏族の長。商人の跡取りと、様々な道が用意されているのだ。

 皆が両親に説得された場合、冒険者、或いは探索者という道を選択しない可能性も大いにあり得る。


 それは以前から分かっていた事ではあったのだが……

 改めてその事に気付かされると同時に。

 もしかしたら――そう思うと、少しだけ寂しさを感じてしまう。


 とはいえ、僕が寂しさを感じた所でどうにかなる問題では無いのだろう。

 それにだ。暗い顔をしていては折角の門出に水を差してしまう。

 僕はそのように考えると、明るい表情を作り、違う話題をコーデリア先輩へと振った。



「と、ところで! 出発の予定は何時なんですか?

まだ時間があるようなら、送別会とか、やり残しが無いように遊びに行ったりしましょうよ?」



 僕は送別会の予定や、遊びに行く予定を頭で組みたてながらコーデリア先輩に尋ねる。

 しかし、そんな僕に対して、コーデリア先輩は僅かに暗い表情を向けると。



「申し訳ないのですが……明日の早朝には出発するつもりですの。

折角の申し出だというのに……本当に申し訳ありませんわ」



 明日の早朝に、学園都市を発つことを告げた。



「明日の早朝ですか……随分と急なんですね」


「ええ、オーフレイム叔父様が明日から遠征へと出向くらしく、その馬車に乗せて貰うことになりましたの」


「そうですか……オーフレイムさんも随分悲しんだんじゃ?」


「ええ、随分と泣きつかれましたわ……

『コーデリアたん! 叔父さんを置いてかないで!? コーデリアたんが行くなら叔父さんもギルドマスター辞めて同行する!』

なんて言うもんですから、随分と説得に骨が折れましたわ。

その所為で遠征の準備が押してしまったようで、今もカルナさんの見張りの元、準備に追われているようですが……」


「ははっ……凄く想像できます。

だから姪の卒業式だっていうのに、オーフレイムさんの姿が見えなかったんですね」


「そういうことですわ。

本当、剣を振っている時は素敵な叔父様ですのに……はぁ」



 オーフレイムさんに対する愚痴と共に溜息も漏らすコーデリア先輩。

 少し話は逸れてしまったのだが……

 やはりこのままお別れするのは寂しいと考えた僕は、もう一度尋ねてみる。



「話が逸れてしまいましたが、この後の予定は何かありますか?」


「予定は……荷づくりがあるくらいでしょうか?」


「で、でしたら。昼食はご一緒出来ませんか?

勿論、遅くならない内に解散するようにしますし、駄目なら諦めますが……どうでしょうか?」



 大々的な送別会は無理でも、ちょっとした送別会であるなら。

 そのように考えた僕は、コーデリア先輩を昼食に誘ってみる。



「荷造りは夕方からでも間に合いますので、昼食であれば問題ないのですが……」



 何処か歯切れの悪いコーデリア先輩。

 僕にチラリと視線を向けると、僅かに眉根に皺を寄せ――



「それよりも……先程、やり残したことをやる。そうおっしゃいましたわよね?

でしたら――」



 そして、このような言葉を告げた。



「最後にもう一度――真剣勝負をして頂けませんか?」


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