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182・課外授業最終日

 特別授業を終えた僕達は、手分けして魔石の回収にあたり。

 魔石の回収を終えると、残されたオークの死体は焼却処分していく事に。


 その後、それなりの時間を要しながらもオークの処分を終えた僕達。

 しかし、そうしている間にも着実に時間は流れていたようで。

 ふと、木々の隙間から空を覗いて見れば、随分と日が傾いている事に気付く。


 程なくして完全に日が落ちるのだろう。

 

 そして、完全に日が落ちてしまった場合。

 森の中は深い闇に包まれてしまい、皆を引き連れての移動は困難を極めてしまう。

 そのように考えた僕は、皆に指示を出すと、急いで野営場所へと戻る事にした。

 

 それから数十分後。

 急いで移動した甲斐もあってか、僕達は完全に日が落ちる前に野営場所へと辿り着く。

 

 まぁ、無事に辿りつけたのは良いのだが……

 オークの処理を終えた後、休憩を取れていなかった事に加え、薄暗い森の中での移動。

 そういった疲れがどっと吹き出してまったようで、皆は随分としんどそうに肩で息をして見せた。


 正直、時間も時間という事で、野営場所に着いたら急いで夕食の準備に取り掛かる予定ではあった。

 しかし、そんな後輩達の姿を見せられては無理強いする訳にもいかないし、ゆっくりと休ませてあげたいと思うのが先輩心というものだ。その為。

 


「今日の夕食は僕が作るから、皆は休んでていいよ」



 僕はそう伝えると、一人で夕食の準備に取り掛かろうとしたのだが……

 何故だか必死に止められてしまい。

 結局は少しの休憩を挟んだ後、皆で夕食の準備に取り掛かる事になってしまった。


 そうして、夕食の準備に取り掛かる事になった僕達。

 具材を適度な大きさに切り分けたり、鍋を設置して火をおこしたりと。

 始めの内は、皆も黙々と夕食の準備を進めていた。


 しかし、どうやら皆の関心は、夕食よりも特別授業で使用された魔法や技の方にあるようで。

 夕食の準備をしている最中にも関わらず、容赦なく質問を投げかけられてしまい。

 更には夕食を取っている最中までも、多くの質問を投げかけられてしまう。


 僕は、そんな皆の様子に気押されてしまい、少しだけ困惑してしまうものの。

 皆の質問に出来るだけ丁寧に、そして分かりやすく答えていき。

 夕食を終えた後も、焚火を囲みながら皆の質問に答えていく事になった。


 まぁ、そんなやり取りも途中から形を変え、雑談に近い感じになってしまってはいたのだが……

 

 ――それでも。

 焚火の明かりで顔を照らしながら。

 喋り疲れた喉を白湯で潤しながら。

 時には笑い声を交えて雑談に興じた。


 それは、夜が更け、シータが「眠いかも〜」と口にするまで続けられ。

 結局は日を跨ごうかという時間帯まで続く事になった。






 ――そして、その翌日。

 課外授業も残すところ後僅かとなった課外授業四日目。


 僕達の班は、既に十匹の魔物を狩るという目標も達成しているので慌てて狩りに行く必要も無く。

 加えて、食料の心配をする事も無いという事で、適当な時間に起床すると、のんびりと朝食を頂く事に。


 とは言え、折角の課外授業。

 こうしてのんびり過ごすのも悪くは無いが、限られた時間は有意義に使うべきだろう。

 僕はそのように考えると、今日の予定を頭の中で組み立て始めたのだが――

 


「よ、宜しければ手合わせをお願いしたいのですが!」


「わ、私も! 少し不安ですけど……アル先輩と手合わせしてみたいです!」


「あっ! フィデル先輩ずりぃ! 俺は昨日の昼から頼んでたのに!」


「そうですよ? 先輩なんですから後輩に順番を譲って下さいよ?」


「そうだ〜そうだ〜。わたしたち譲るんだ〜」



 どうやら、考える事はみんな同じだったようで。

 フィデルが率先して手合わせを願い出ると、その言葉に続くようにしてノアや一年生トリオも手合わせを願い出た。



「ぐっ……し、仕方ないから順番は譲るが……前の手合わせみたいな態度だったら怒るからな?」


「流石に、昨日の特別授業を見た後じゃあんな態度取れないっすよ……」


「……愚問ですね」


「あんなの見た後じゃ流石にね〜」


「……お兄ちゃんは心配し過ぎだよぉ〜」


「お前ら!? と言うか、ノアまでそんなこと言うのか!?」



 更には、笑い声交じりに、そのようなやり取りを交わすのだが。

 初日の関係があまり良好とは言えなかっただけに、僕は感慨深いものを感じてしまう。

 

 だからだろう。

 課外授業終了まで僅かな時間しか残されていないが。

 皆には出来るだけ多くの経験を吸収し、満足する形で課外授業を終えて貰いたいと願い――



「皆が満足するまで付き合うからさ。幾らでも掛かってきてよ」  


 

 僕に出来る事は少ないかも知れないが、手合わせする事で皆の経験になるのであれば。

 そう考えると、課外授業が終えるまでとことん付き合う事に決める。

  

 ……決めるのだが。

 その後の手合わせの過程で。



「この人、頭おかしいし、人間じゃねぇ……」


「ありがたいですけど、限度ってものを知って下さい!!」



 などという、なんとも散々な評価をされる事になってしまった。


 ……流石に八時間ぶっ続けで、手合わせするのは問題があったようだ。

 

 

 

 


 そして、そんな課外授業四日目を終え。

 課外授業最終日である五日目の正午を過ぎた現在―― 

 

 

「四泊五日に渡って行われた『ブエマの森』での課外授業ですが、今の時刻を持って終了となります!

各班の代表は、今回の成果である魔物十匹分の魔石を提出して下さい!」



 四泊五日に渡る課外授業。その終わりを学園の職員が告げ。

 各班の代表は、職員の指示に従い、魔石を提出する為の列を作る。

 

 そうして作られた魔石を提出する為の列。

 職員は魔石の入った布袋を班の代表から受け取ると、袋を開いて確認していくのだが……



「ひーふーみー……魔石が九つですか……多少の減点は覚悟しておいて下さいね?」



 どうやら、目標を達成できなかった班もあるようで。

 職員に減点を伝えられた代表と、同じ班であろう数名の生徒達は、ガックリと項垂れて見せた。



「では、次の班」


「アルディノ班代表のフィデルです!」


「アルディノ班だね。では、魔石を提出して貰えるかな?」


「はい!」


  

 そうして周囲の様子を窺っている間にも、僕達の班の順番が周って来たようで。

 代表であるフィデルが魔石の入った布袋を渡すと、職員が布袋を開き、魔石を確認して行く。



「ひーふーみー……魔石が十二個という事で、目標達成ですね。おめでとうございます。

それにこれは……オークの魔石ですか? 随分と頑張ったんですね」  



 職員はそんな言葉でフィデルを労うと、数枚の銀貨を取り出しフィデルの手に握らせる。

 どうやら、今回の課外授業で手に入れた魔石は適正価格で買い取ってくれるようだ。


 ちなみにだが、過分な評価をされてしまうかも知れないという事で、フィデルの渡した布袋の中には、僕の狩ったオークの魔石は含まれていない。

 

 では何故? 提出した魔石の中にオークの魔石が入っていたかというと。

 答えは単純で、集合場所へと向かう途中で二匹のオークを発見し、それを皆が狩って見せたからだろう。 


 まぁ、僕が軽い感じで「じゃあ、狩ってみようか?」と言った際には「何言ってんだコイツ?」みたいな目で見られてしまったし、オークを狩り終えた際には散々文句を言われる羽目になってしまったのだが……


 それでも、皆の実力であればオークの二匹程度であれば問題無く狩れるという確信があったし。

 課外授業の仕上げという意味でも、自信や経験を積ませるという意味でも、必要な一戦だったと僕は考えており。

 そのような考えや経緯があった結果。

 オークの魔石を含めた十二個の魔石が布袋には収まっていた訳である。



「アル先輩! 無事に魔石を提出する事が出来ました!」



 魔石の提出を終え、小走りで駆け寄るフィデル。

 


「お疲れ様。頑張ったね」



 僕は駆け寄ったフィデルを労うと、頭に手を置き、クシャクシャと撫でる事でも労って見せる。

 


「ちょっ!? こ、子供じゃないんだから辞めて下さいよ!?」


「え? 嫌だった?」


「べ、別に嫌という訳ではありませんが……」


 

 そんな僕の行動に怒ったのか? それとも照れたのだろうか?

 フィデルはそう言うと、なんとも複雑な表情を浮かべて見せるのだが。

 

 ふと、視線を向けられている様な気がし、その方向に視線を向けて見ると――

 何故だろう? ノアや一年生トリオがなにやらジーっと見つめている事に気付く。



「ど、どうしたの?」



 その視線の意味が分からなかった僕は、思わず疑問の言葉を口にしてしまうのだが。

 そんな僕の様子を見て皆は痺れを切らしてしまったのだろう。



「お、俺達も頑張ったよな!」


「そ、そうだよな! 僕達も頑張った!」


「う、うん! わたし達もオークを倒したよ~!」


「私も、お兄ちゃん程じゃないけど頑張りました!」



 皆はそんな言葉を口にすると、その視線はフィデルの頭の上。

 要するに、フィデルの頭を撫でる僕の手へと視線が向けられているのが分かった。



「ああ〜成程。そういうことか」



 視線や言葉の意味を理解した僕は、四人の元へと歩み寄り。

 僕よりも背の低い四人と目線を合わせる為に、少しだけ腰を落とすと――



「うん。皆も頑張ったよね。偉い偉い」



 ポンと頭に手を置き、順番に四人の頭を撫でていく。



「や、やめろよ! アル先輩!」


「そ、そうですよ! み、皆が見てるじゃないですか!」


「こ、こういうのはセクハラって言うんだよ〜!」


「……やっぱり、アル先輩に頭撫でられるの落ち着きますぅ」



 僕に頭を撫でられた一年生トリオは、嫌々と言った感じの言葉を口にするのだが。

 その表情はあまり嫌がっているようには見えず――というよりかは僅かに笑みが零れており。

 ノアに限っては抵抗する様子すらなく、気持ち良さそうに目を細めていた。


 そして、そんなやり取りを、僕の友人達は眺めていたようで。



「初日はどうなるかと思ってたけど、案外上手い事やってたみたいだな」


「そうだな。アルディノの事だから少し心配だったが……どうやら杞憂だったようだ」


「にゃんか、ウチの班より仲が良さそうにゃんだけど?

って言うか、ウチの班は目標達成出来たけど、みんにゃの班は目標達成できたのかにゃ?」


「はっ! 当たり前だろ!」


「問題無しだ」



 ダンテとベルト。それにラトラを加えた三人のやり取りが僕の耳へと届き――



「流石アルさん! まぁ、アルさんの実力があれば低学年を懐かせるなんて余裕だわな」


「そう言えばグレゴリオ。貴方はなんでアルの事をさん付けで呼んでますの?」


「うるせぇなコーデリア=マルシアス? 俺の勝手だろうが?」 


「っていうか何よあの子!? あっ!? ちょっ!? そんな気持ち良さそうに目を細めて!

……ああそう。要するにあの子は敵ってことね。私理解したわ」



 更にはグレゴ先輩とコーデリア先輩のやり取りも耳へと届く。

 まぁ……若干一名。

 赤のツインテールを揺らし、穏やかじゃない言葉を口にする人も居たような気もするが……

 きっと、僕の聞き間違えだろう。そう願いたい。


 そして、そのようなやり取りに耳を傾けている間にも職員は魔石の回収を進めていたようで。



「先程の提出を持ちまして、全ての班の確認が終了しました。

僅かに及ばず、目標を達成出来なかった班もありましたが……

それでも、この四泊五日に渡る課外授業は、低学年にとっても席位持ちの皆さんにとっても、有意義で貴重な時間になったのではないかと思います。


それでは、只今を持ちまして『ブエマの森』での課外授業は終了となりますが、無事に学園都市に帰るまでが課外授業です。

学園都市に到着するまで気を抜かず、しっかりと課外授業をやり終えて下さい」



 職員は本格的に課外授業の終わりを告げ、生徒達は大きな声で「はい」と返事を返す。


 そして、この瞬間。

 僕達の班は解散となる訳で、四泊五日を共に過ごしていただけに、少しだけ寂しく感じてしまう。

 しかし、そんな僕の気持ちを他所に――



「アル先輩! 学園都市まで競争しようぜ!」


「エイブン……お前、学園都市までどれだけ距離があると思ってるんだ? これだから脳筋は……」


「脳筋じゃねーし! てかビッケス!? さては俺に負けるのが怖いんだろ!?」


「は!? 何を馬鹿なこと言ってるんだか」

 

「喧嘩かな~? やれやれ〜」 



 エイブンは競争を提案し、一年生トリオは初日を思い出す様なやり取りを交わすのだが。

 その様子からは初日に感じられた険悪さや、ギスギスとした雰囲気は微塵も感じられない。



「じゃあさ! あそこに見える大きな木の所まで競争しようぜ!」


「は!? 僕はやるなんて一言も――」


「いいからいいから! そんじゃアル先輩も準備は良いっすか? んじゃ! よーいどん!」



 更には強引に競争を始めるエイブン。

 そんなエイブンの姿を見た僕は。



『寂しい――なんて感傷に浸る暇も無いか……

それに、これからの学園生活――なんだか騒々しくなりそうだなぁ』



 そのように感じると。



「よ~し、競争しようか! でも、負けないからね!」



 僕は身体強化を施し、大人気も無く本気で走りだすのだった。 


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