安倍桜×白谷磔
今回かなり短いですが、2人の先生『颯人』先生と『ファム』先生とのコラボです!
伏線を埋め込みましたが……。
俺は甘味処にいつの間にか居た少女……安倍桜に話しかける。
「あら、気づいてたのね」
「ああ。気配を消す術は中々良かったが、まだ能力で見破られるな」
桜に対して俺はそう答えると、能力で次元を操り、一人の少年を呼び出す。
通常であればその少年には防がれてしまうが、魔晴の優先度改変能力を使うことで、強制的に上書きできる。
「いってぇっ!!」
「おいおい……これくらいで騒ぐなよ……」
俺は呆れながら、少年に話しかける。
「あれ、霊斗か。ってことは……って、ここどこだ?」
いつもの博麗神社か闘技場だと思っていた少年は、洋菓子店風の周囲の景色を見て、疑問符を並べる。
「ここは……まぁ、ちょっとした集まりっていうか……そんな感じのところだ」
「説明曖昧すぎないか!?」
磔のツッコミを無視し、俺は二人を強制的に闘技場に呼び出す。
「うお……またここに来たってことは……?」
「ああ、戦ってもらうぜ。いい機会だから、二人とも鍛えてやる」
俺はそう言って、二人から距離を取り、コインを高く投げる。
コインが地に落ちた途端、二人は動き出した。
「いつも通りの、理不尽さだな!!」
「それに付き合ってくれるお前らには本当に感謝してるぜ!!」
磔は最近ゼウス様に体術を習い始めたとか言ってたが……。そう思っていると、雷を纏った両手で俺に対して殴りかかってくる。
今回は今までとは違い、かなり隙がなくなっているな。
そんな感想を抱いていると、背後から辻斬りのように刀が俺の首めがけて一閃。
「うぉっ、危ねぇ」
まぁ、別に当たっても問題ないんだが、あまり力は消費したくないからな。
そんなことを考えていると、俺の周囲に磔への道を作るように弾幕が設置された。
「なるほど、これを超えて行けと……」
俺が一歩踏み出すと、大量の弾幕が俺に対して一気に降り注いだ。俺はそれを無視して一気に磔へと跳躍した。
一蹴りで地面が掘り起こされるほどの威力と共に、凄まじい空気抵抗。
迫り来る弾幕は俺の背後に展開された自動障壁で防がれ、俺は磔の目の前に。
「なっ……!」
驚く磔は、間もなく闘技場の壁に激突させられる。
それと同時に、俺の首を狙った桜は自動障壁に防がれた。
「な……何なのよこれ……!!」
「これか? これは自動障壁。俺が自分を改造することで付与した能力の一つだ」
俺がそう言うと、桜は「厄介な……」と呟いた。
まぁ、確かに俺からしてもこいつは相当厄介な代物だと思う。
そう思っていると、復活した磔が俺に対して斬りかかる。俺はそれをヌルリと流し、左翼のように展開した弾幕を磔に飛ばす。
桜に対しては、右翼のように弾幕を展開し、それを向けている。
「こんな程度!!」
それを桜は剣術を使って受けながすが、突如としてそれは一気に崩れ去った。
「なっ!?」
桜の足元には底なしの泥沼が出現し、桜の足を捕らえていた。剣術というのは、手で刀を振り、足腰でそれを支えることで成り立っている。
足が自由に動かせない今、桜が剣術を上手く扱えないのは明白だった。
桜から放たれる大量の弾幕を俺は自動障壁で防ぎながら、左翼の弾幕を避けていた磔の方を向く。
「くっ!!」
「まだまだ動きが荒いぞ!! 全身を動かせ!」
磔は俺にそう言われ、体の一部だけを動かすのではなく、体全体をスムーズに動かすようにして弾幕をキレイに避け始める。
「その調子だ!」
磔は俺に褒められ、少し気が緩む。その瞬間、俺は一瞬で磔を吹き飛ばす。
「ガハッ!!」
「気を緩めるな! まだ戦闘中だぞ!!」
俺の叱咤を受けながら、磔はよろよろと立ち上がる。桜もようやく泥沼から抜け出せたようで、こちらに近づいてきていた。
「……よし。次で終わりにするぞ」
「エクストラワード『降臨天照大神』……ってあれ?」
「天照様か、俺嫌われてるからな〜」
「エェ……」
そんなのありかよ、と呟く磔を無視し、桜もスペルを宣言する。それに続いて、磔もさっきとは別のスペルを宣言した。
「白霊『無想転生〜斬〜』」
「『アクセルドライブlevel3』、禁技『双陣乱舞』」
桜の持つ刀には博麗の力に似たような力が纏われ、磔の両手には双剣が出現し、蒼と銀のオーラを纏っている。
「覚醒『博麗の血脈』」
俺はそれに対し、博麗の力を全て引き出すスペルを宣言する。
俺の皮膚の上を紅いオーラが波立ち、やがてそれらは鎧のように俺の体に纏われる。
先手を仕掛けたのは、磔だった。音速を遥かに超える双剣の太刀筋を、俺は右手で防ぎ続ける。
続いて迫り来る桜の刀を、俺は左手で逸らすことで自分に当てないようにする。
「っ……!」
悔しさに歯をギリギリと鳴らせる磔と桜に、俺は余裕の表情を見せつけながらスペルを宣言する。
「そろそろ終わりにしようか。霊符『希望の仁』」
俺のその言葉と共に放ったスペルに2人は飲み込まれ──やがてスペルを解く頃には、ズタズタの2人が現れた。
◇◆◇◆◇
「まったく……酷い目にあった」
「ええ、まったくよ。私なんて極めることもうないのに……」
桜はそう言ってため息を漏らす。まぁ、したことと言えば海斗と同じ。弾幕回避の訓練だ。
希望の仁は、今まで俺が背負ったあらゆる人々の希望の力を弾幕に変え、解き放つもの。その希望が強ければ強いほど、弾幕は強力に、強大になる。世界を何度も救ってきた俺や魔晴が背負った希望であれば、霊時空以上の弾幕を作り出すことが可能だ。
「まぁ、また来い。その時は、また違ったことになるだろうが……」
「ああ、じゃあ今日はここで失礼する」
磔はそう言うと、何も疑わずに帰って行った。
「……ねぇ」
「ん?」
「これから起こること、分かってるんでしょう?」
「ああ、もちろんだ。まだ『キッカケ』は目覚めてないがな」
「でも……もう、近いわよ」
「分かってる。その時は、お前の力も頼りにしてる」
桜は俺にそう言われると「もう!」と、少し怒りながら帰って行った。……まだ、目覚めてない。だが……おそらく、霊奈や妖緋も成長し、破月もこちらの世界に適応した今、もうすぐにあいつが復活しても、おかしくないだろうな。