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終始終作

今回は終作先生とのコラボです!

終始終作に対抗し得る能力とは……?

 ここは人里の外れ。そこには、霊斗の旧知の仲であり、八雲 金の出生を知る数少ない人物、『霧雨 魔晴』が店を構えている。

 その店の名は『雷電御礼』。なんだか雷神を崇拝していそうな名前である。


 彼の能力は、普段は非常に弱い。その能力は「あらゆる魔法を操る程度の能力」。

 魔理沙やパチュリーからしたら、口から手が出るほど欲しがる能力ではあるが、魔法が剣で捌かれ、体術にかわされ、弱体化してしまったこの幻想郷では、能力の効果はかなり低い。


 だが。彼は、序列6位という明らかな力を示している。彼は別の人格を持っているからだ。別人格の彼の能力は優先度を弄る程度の能力。優位性を確保する能力ともいうべきか。そしてもう一つ、空間を掌握する程度の能力。

 彼は霊斗にこそ負けているが、彼が全員と戦えば、勝つのは彼である、と霊斗が言うほどの実力を持っている。

 それが彼、とある世界を救い、救世神とまで崇められた男の実力だ。


 そんな彼の元に、一人の男がやってきた。彼の名は『終始終作』。この幻想郷には初めて訪れる人物。

 そして、様々な世界を訪れている旅人のような人物でもある。


「よう、邪魔するぜ」

「あ、今日は貸切の予約が……」


 魔晴はそこまで言って、口を噤んだ。

 魔晴の視界に映るのは、おそらくこの世界でも割合的には数少ない、トップクラスの実力を持つ人物だろうと予想して。


「いらっしゃいませ、お待ちしておりました。ご注文がお決まりになったら、お申し付けください」


 魔晴は淡々と、しかし何をされるか分からない恐怖に目を釘付けにされながら、説明をする。


「ああ。じゃあ、これと……って、そんなにビビることないだろ?」

「……いえ。今の僕は弱いので」


 そう言いながら、魔晴は手をグッと握りしめ、魔法を使う構えをとった。


「──やろうってのか?」


 その殺意の塊は、魔晴の精神にとてつもないダメージを及ぼした。

 魔晴は魔法で精神を安定させながら宣言する。


「やりたくは、なかったんだが……霊斗に言われたしなァ」

「奇遇ですね、僕もです」


「『始強』」

「『精神変換〈真名レヴィル・スミス〉』」


 同時に2人は、自身の持ち得る最大限の力を解放した。それによって放たれた霊力により、店を形作る木材が軋み始める。


「ここでは狭すぎますし、闘技場にいきましょう。今日は予約は入っていなかったはずです」


 魔晴はそう言うや否や、召喚魔法陣が魔晴と終作の足元に展開され、霊斗によって作られた闘技場……もとい競技場に転移する。


「では、早速始めていきましょうか」


 そう言った途端、終作の周囲に大量の弾幕が発生した。終作は能力を用いてそれを消滅させるが、不意に目の前に一筋の閃光が疾る。


「はやっ……!」


 言い終わる前に、終作は吹き飛ばされた。

 続いて、連撃が終作に向かって放たれる。

 半神半魔の自分が、ただの魔法使いであるこいつに身体能力で負けるわけがない。そんな自信が、ダメージを与えられているという屈辱が、終作の力を抑えていた感情を引きちぎった。


 終作は能力でダメージを消滅させる……が、上手くいかない。困惑する終作に向かって、魔法を使いながら魔晴は話しかける。


「驚いているな? オレの能力は優先度を司る程度の能力。この幻想郷において、優先度なんて物は一番あやふやだ。一番の優先事項である『常識』が通用しないからな。そう言った物を全て作り変える。能力の効果の対象。お前の強制能力すらも覆し、オレの能力は最優先となる」


 言っている意味がわからない、と言葉を発する代わりに、終作は舌打ちを1つした。


「要するに、お前の能力はオレには通用しないってこった」


 魔晴はそう言うと、不意に攻撃を止め、両手に魔力を溜め始める。


「お前の全ての能力を貰おう」


 終作はそれをチャンスと見て、全てを強制的に奪う能力を発動し……失敗した。


「お前の能力の優先度は、オレの魔法による干渉無効より下だ」


 なんだ、そう言うことか、と終作は納得した。

 つまり、魔晴の能力は相殺など関係なく結果を覆してしまうという物だ。どこかで会った龍神もどきに効くかは知らないが、こいつの能力は非常に厄介だ。干渉無効の俺にも干渉が効くということだし、干渉無効を打ち消す俺の能力も発動できないと、終作が考えている間にも、魔晴の準備は進んでいた。


 突如、終作の背後に大量の壁が出現した。魔晴の召喚魔法によって呼び出されたそれは、魔晴の能力の影響を受け、終作の能力でも破壊する、消滅させることはできない。

 終作は後ろには逃げられないことを悟り、壁を伝って上へと駆け上がる。


 魔晴もそれを能力で追いかけるが、不意に終作が上から飛び降り、魔晴が下になるように上から攻撃した。魔晴は地面に叩きつけられるが、そのまますぐに体を起こし、魔法を展開する。


「お見事。ですが、次はこうはいきませんよ」

「そうかい。なら、俺も気をつけるとしよう」


 いつもの調子を取り戻した終作だが、やはり魔晴には互角以上の戦いを繰り広げることはできなかった。

 どこまでも一方的で、排他的な魔晴による蹂躙となりつつあった。

 魔晴の強さの秘訣は、優先度を動かす能力だけではない。白蓮のような、魔法による身体能力強化も、魔晴が以上なまでに強い理由となっていた。


 埒があかないと悟った魔晴は、次の一撃で勝負を決めることにし、名乗りをあげる。


「救世の魔導王、『霧雨 魔晴』!!」


 回復していく終作は、魔晴の名乗りを受け、終作も名乗りを上げた。


「七つの大罪が一つ『強欲』の具現にして始祖神、『終始 終作』!!」


「「行くぞ!!!」」


「【Between observer of dimension】」

「奥義『魔法天滅(マジックスカイ)波動砲キャノン』」


 終作の能力を全て使った、次元の狭間から魔晴に対して攻撃した物に対し、魔晴は全てを引きずり込む力を使い、それを撃ち出した。


「今のお前の能力の優先度は、普通以下だ!」


 終作は狭間から引きずり出され、終作による全ての攻撃を飲み込んだ波動砲は、終作を包み込み、そのまま塵となって消滅した。


「……ぁぁ、久々に疲れた。終作さんを戻しておかないと」


 魔晴はそう言いながら、能力で終作の魂と体を魔晴の目の前に現界させた。


◇◆◇◆◇


 終作が目を覚ますと、そこは闘技場に行く前に居た酒場……ではなかった。


「……ここは?」

「お、終作、お目覚めだな? ここは人里でも大人気の甘味処、アリスって所だ。ここに通えば出番が貰えるともっぱらの噂になってる」

「なんだそのメタい場所……」


 終作がため息を交えながらツッコむが、霊斗はそんなこと知らないとでも言うように話を続ける。


「……終作さん、すみませんでした」


 突如、終作の背後から一人の男が話しかける。


「あぁ、気にすんな。それにしても……敗北やそんな物を感じるなんて、始めて……ではないにしても、いったい何年ぶりだ?」


 終作の返答に、その男……霧雨 魔晴は口を開く。


「終作さんを倒した人がまだ居るのか……! 世界は広いですね」


 魔晴はそう言いながら、甘味処の厨房を借りて作った料理を、二人の机に置いた。


「これは?」

「タコのカルパッチョです。ワインもあるので、一度食べてみてください」


 霊斗と終作が薄くスライスされたタコに手を伸ばしながら、終作は魔晴に話しかける。


「それにしても、よくタコなんて手に入れたな。幻想郷に海なんてないから、タコなんていないのに」

「霊斗さんが定期的に納品してくれてるんですよ。僕はそれをレシピを参考に調理してるだけです」


 魔晴は照れ隠しに笑いながらそう言い、霊斗は奥の方から何かが包まれた荷物を持ってくる。


「詫びの品と言っちゃあなんだが、是非とも持ち帰ってくれ」


 霊斗がそう言って渡し、終作は人目も気にせず、包みを開く。


「……なんだこりゃ」

「外の世界で作られる、葛餅ってヤツだ。夏にピッタリのお菓子だから、帰ったら色んな奴に配って回ってやれ」


 俺はそう言って、終作に葛餅を持たせると、客払いをするように終作の足元に穴を創り出す。


「そろそろ閉店だ、早く帰ってくれ」

「あぁ……少し長居しすぎたかもな」


 終作はのんきにそう言って、足元の穴に飛び込んでいった。


「ってこれ次元の穴じゃねぇのかよ!!」


 ツッコむ終作の声の発生源は、俺に声が届く頃には別世界へと転移していた。


「……さて。久しぶりだな、安倍桜」


 俺はそう言って、客払いをした理由(わけ)に対し、話しかけた。

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