黒峯 帝
今回も超絶暇人さんとのコラボ!次回で超絶暇人さんとのコラボは完結です!故にかなり短いですが、ご了承くださいまし
守矢神社の広い庭。
妖怪の山の中腹にあるそこに、一人の女性が落ちてきた。
「いたた……あんなやつ、死ねば良い……」
そんな物騒なことを言いながら、その少女……女性は立ち上がる。
彼女の名は黒峯 帝。
特徴的な服にその身を包んだ、九将が一角。
遠距離戦を好む彼女の力は、名前にもある『氷帝』。即ち、氷を司る力の頂点に君臨するもの。
「あら、参拝客の方ですか?」
そう言って、本殿の中から出てきたのは、博麗の巫女服の2Pカラーの巫女服を纏った少女。霊奈とは違い、清楚なワンピースタイプの巫女服にその身を包む、彼女の名は『東風谷 早紀』。現人神『東風谷 早苗』を母に持ち、『普通の人間』を父に持つ者。
風祝である彼女の能力は『奇跡を自在に操る程度の能力』。
奇跡を使って先の状況を読み解き、どんな奇跡を使うのかを決める。そんな能力だ。どんな奇跡が起こるかは未知数である東風谷早苗の能力の、強化版と言ったところだろうか。
早紀はまだ12歳と幼いため、序列こそ持っていないものの『奇跡』という力は非常に強力、且つ抽象的であり、対応範囲が異常に広い。そんな能力を使いこなす彼女は、序列3位も夢ではないと言われ続けていた。
それ故だろうか。些かテングになっていた彼女に対して、2人いる内の強い方が呼び出されたのは。
「いーや? 私、神様なんて信じないし。それに、もし神様が居たなら……絶対殺してやる」
帝の殺意のこもったその言葉と、それに守矢神社で反応した二柱の神に、早紀は冷や汗を流す。
冷や汗が頬をつたい、滴となって地面に落ちた頃。
早紀は、言葉を発した。いつもの調子を取り戻し、軽口を織り交ぜながら、信仰心と正義感だけのテング故の言葉を言い放った。
「あなたが殺せる程度の神は、ここにはいませんよ」
「は? いまなんて?」
「神を愚弄するのも、いい加減にしなさいっ!!」
その上から目線は、人間嫌いの帝がブチ切れるのには十分すぎる言葉であった。
◇◆◇◆◇
守矢神社の狭い場所では不利と悟ったのか、妖怪の山を駆け下りながら、空中で追いかける私に対して氷柱を放つ。
その威力、スピードは十分にあり、空中にいる私が偶に能力を使って防がないといけないほどにも達している。
私自身も近距離戦闘はあまり得意ではないから、遠距離戦闘になるのはこちらとしても良いんだけど……。
「『氷牙』!!」
マシンガンのように、数々の氷柱が私に向かって放たれる。先ほどよりもスピードがあがったそれを、私は能力を使ってかわす。
「能力『奇跡的に隕石が降ってきた』!!」
帝さんから放たれた数々の氷柱に対して、私は隕石を降らせて抵抗する。
物理法則や時間空間など完全に度外視し、唐突に現れたそれは私へと向かうマシンガンを打ち砕いていく。
「何よ、そのあんたの能力……」
「私の能力は『奇跡を自在に操る程度の能力』です。お母様の能力とは、一味違いますよ」
◇◆◇◆◇
彼女はそう言って、次の奇跡を創り出す。
それは、幻想郷を揺るがす破壊力を持つ。
「奇跡『奇跡的に妖怪の山が噴火した』!」
そのスペルと共に、妖怪の山は雄叫びをあげ、噴煙を吐き出す。
そのマグマに、帝は飲み込まれた。だが、マグマはみるみるうちに凍結していき、やがて無傷……とは言わないが、傷もほとんど負っていない帝が姿を現した。
「……絶対殺すわ、アンタ」
「できるものなら、やってみなさい。……まあ、殺す殺す言ってるうちは無理でしょうが」
そう言い終わらぬ間に動き出していた帝の氷柱群を、早紀は余裕であしらい、弾幕を放って消滅させていく。
「チィッ……厄介ね。その奇跡の力……だっけ?」
「奇跡を自在に操る能力です!」
早紀のその言葉に、帝は「どうだっていい」と吐き捨てるように言いながら能力で指先に溜めた冷気を解放した。
「『虚馮』」
それは、温度変化を応用した冷気の切断技。
上空にいる早紀に対し、線のように伸びていくその技は、早紀が防御用に出現させた隕石によって防がれる。……が、隕石は冷気が消える温度変化によって、脆い部分から綺麗に真っ二つにされた。
「やっぱり、あなたは強い。ええ、とても強いです」
「は? どうしたのよ急に」
「……強いからこそ、私はあなたのトラウマを呼び覚ます」
早紀はこれまでとは打って変わり、視線を鋭くしてそう言った。
その瞬間。早紀の能力によって、帝は空間の穴を経由し、酷く冷たい世界へと堕ちていった。