博麗海斗×幻真
今回で最終話!
最後はシルク先生、狼天狗先生のお二方より、博麗海斗と幻真です!
また、ここまで読んでくださった読者の皆様、ご協力してくださった先生方、ありがとうございました!
とある博麗神社の隣にある闘技場。
そこに、2人の青年は召喚された。
1人は刀を持つ、青いTシャツと半ズボンのジーパンの青年。
もう1人は、もうすでにこの世界では見飽きたほどの、博麗の名を持つ青年。
「最後の大トリ、私かぁ……。やだなぁ……」
「うぉ……! 君、胸大きいね?」
「ア? 黙れ幻真」
「ご、ごめんなさい……」
刀を持つ青年、幻真に対して、圧力をかけるのはこの幻想郷でもトップクラスの戦闘力を持つ女性、博麗 霊奈。
「お前……霊斗の娘か?」
「あら、よく分かったじゃない。少しはやれそうね」
この幻想郷の誇る最強の戦士、霊奈は自分の親を当てた青年、海斗にそう言うと身体中の力を抜き、霊力を張り巡らせる。
「先手はお譲りするわ」
「じゃあ、遠慮なく行かせてもらうぜ!!」
そう言って、真っ先に飛び出してきたのは幻真。
手に持っている刀を霊奈に向けて、真っ直ぐに振り下ろす。一切の迷いのない太刀筋は、中々に優れていると言える。
「甘いわね」
だが。霊奈はそれをお祓い棒を呼び出して防ぎ、流れるように幻真を一刀両断せんと幻真の向こう側に向かって、お祓い棒から伸びる光の太刀が幻真の体を撫でるように歩みを進める。
「うぐぉ……!」
それを刀で防いだ幻真は、霊奈の足による奇襲を受けて吹き飛ばされる。
「うわあっ!!」
「……流れるような動き。まさしく天性の才能か」
「海斗も戦えよ!!」
幻真の物言いに、海斗は重い腰を上げた。
くる!! と霊奈が身構えた瞬間、真紅の槍が霊奈のお祓い棒と交差した。
「魔槍『ロンギヌス-紅-』」
「なんて重い一撃っ!!」
「これでもお前の父さんには何度もお世話になってね」
「知ってるわよ!!」
霊奈は海斗の真紅の槍をお祓い棒を宙に投げて槍ごと飛ばすと、空いた右手の掌を海斗の腹に当て、霊力を放出する。
「ガフッ!!」
「まだまだよ!!」
そのまま、右足の後ろ回し蹴りが海斗の側頭部に命中する。
海斗は受け身も取れぬまま、霊奈によって地面に叩きつけられた。
「俺もいるぞ!!」
再び迫る幻真を、霊奈は今度は陰陽玉を呼び出して防ぐ。超硬度を誇るそれは、叩きつけられた速度も合わせ、凶器となる。
さらに、陰陽玉から放たれる高ホーミング性の弾幕が、幻真の視界を覆った。
「しまっ……!」
幻真のその言葉を既にもう遅く、陰陽玉に込められている莫大な霊力によって幻真とその周囲1メートルほどに、大量の弾幕が降り注いだ。
「……さて。改めて、始めましょうか」
霊奈がそう言った途端、霊奈を遥かに超える霊力が闘技場に充満した。明らかな邪気を含む霊力に、霊奈や海斗はそちらの方を向いた。
「……初めまして。博麗 霊奈……いや、我が兄妹よ」
「は? 何を馬鹿なことを!」
「ふん……あのクズは妹に兄貴のことも紹介しないのか。……まぁ、良いか。どうせそんなこったろうとは思ってたし」
霊奈の兄を名乗る男はそう言うと、ゆっくりと地面に降り立つ。それと同時に、真紅の鎧を身に纏い、真紅の槍を手に構える海斗は、男に向かって走り込んだ。
「らぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
海斗が手に持つ槍の穂先を男に向かって上から投げつける。
それと同時に手甲から短剣が伸び、連続攻撃を男に向かって叩き込む。
「やれやれ……その程度か」
だが、海斗の短剣による攻撃は全て弾かれ、槍は真っ二つに叩き折られていた。
「私だって!」
霊奈は男に向かって走りこむ。
「兄貴に刃向かうとは、いけない子だな。いけない子には、お仕置きしないとな」
そう言った途端、地面や男の身体中から大量の触手が伸び、それは圧倒的速度で海斗と霊奈を圧倒した。
「くっ……!」
「極符『全てを突破する回転』」
海斗がそう言って放った弾幕は、男に向かって飛んでいく。男はそれを全て回避し、次元の穴を作り出す。
「くっ……!」
自分の最高のスペルである極符すらも突破され、海斗は悔しそうにギリギリと歯ぎしりさせた。
「神斬『火之夜藝斬』」
それと同時に、幻真は男の背後から巨大な炎を纏った斬撃を、男に解き放った。
男はそれを瞬間移動で回避すると、幻真の体を空中から叩き落とした。
「ガハッ……!」
空気と共に血の塊を吐き出した幻真に、男は静かに睨みつけた。
「……クズ父にはよろしく言っといてくれ」
「待ちなさい!!」
「……そうだ、名前を言ってなかったな」
そこで、引き止めた霊奈ですらズルりとコケる。ここは帰る流れだろう……そう思ってのことだ。
「俺の名は博麗 封輝。博麗霊斗の息子であり、八雲金の父親。そして……霊斗を殺すものだ」
男、封輝はそう言うと、作っていた空間の穴にその身を放り出す。
「……逃げられたか……」
海斗は、こっそりとそう呟いた。
◇◆◇◆◇
「博麗封輝? まさか、そんなわけがないだろう」
そもそもあいつは、異世界渡航の術なんて持ってなかったはずだ。
だが……万が一、あいつがこの世界に来てるとしたら、それはもう大事件だ。
聞いたところ、この世界に定住しているわけではなさそうだから、そこは安心だが。
「とりあえず海斗、引き続き調査を頼む。こちらでも色々調べておく」
「了解。んじゃ、俺はそろそろ行くな」
「ああ、来てくれてありがとな」
俺はそう言って、海斗の足元に次元の穴を作る。海斗はなれた手つきで足元の穴に飛び込んでいった。
「霊斗様……何の話をしてたんですか?」
「あぁ、ちょっと仕事の話だ。海斗には俺からちょっとした仕事を頼んでてな、お前らには頼めない重要な仕事だ」
霊奈は俺がそう言うと、ふーん、と興味なさげに答えた。
「そういや霊奈、龍牙とは上手くいってるのか?」
「まずまず……ってところね。龍神修行、出来ないことも多くて大変よ」
「そうか。充実してるなら、それでいい」
俺はそう言って、コーヒーカップに入っている紅茶をズズッと啜る。
「さて……そろそろ出るか」
「あれ? どこか行くの?」
「ああ。俺としても今回の件はちょっと詳しく調べないといけないからな」
俺はそう言うと、次元の穴を開き、とある少女の元にそれを繋げる。
「ディス様。ちょっと調べたいことがあるので、あなたの英知をお借りしたいのですが」
「……それは世界の存続に関わることか?」
「はい、それはもちろん。まぁ、ディス様が直接降臨なさってくれれば、何もせずとも済むんですがね」
俺は冗談のつもりでそう言って笑うが、『ディス・クリエイ・メンス』第一世界神様は「たわけ」と言って俺の提案を一蹴した。
「……して、何を知りたい?」
「博麗封輝についてです」
「……またお前の息子か」
「はは……申し訳ない」
「……まあ、汝は世界の存続には必要な存在、その家系が力を持つのもまた然り。とはいえ……封輝は前の世界で解決したはずでは?」
「ええ、あいつごと前の世界を封印して、終わったはずですが……」
今思い返せば、本当にあの世界には後悔しかない。
自分で自分の大切な物を壊し……思い出せば出すほど、胸が締め付けられる。
霊夢達も置いてきてしまった。
「ふむ……おそらく、あやつの今の力はあやつであってあやつではない。ルシフェル辺りに私から問いただしておこう」
「申し訳ないです……お願いします」
「うむ。奴はおそらく、封印を誰かに解かれ、その際に与えられた力によって、この世界に現界してるに過ぎないだろうさ。前回の世界に戻って、あやつを倒すか……それか、あやつの力を消失させれば、問題ないだろうさ」
ディス様はそう言うと、大きなあくびを一つした。
「ふぁ〜あ。眠いのう。ワシは少し休んでおる。お主は幻想郷に戻れ」
「はい。ありがとうございました」
俺はそう言って、次元の裂け目を作り出し、そこから元の世界に帰った。
「あら、早かったんですね」
「ああ、大体話し合いは終わったからな。お前もそろそろ戻った方がいいんじゃないか?」
「そうね……そうさせてもらうわ」
霊奈はそう言って、自分の足元に召喚魔法陣を展開した。俺も博麗神社へと転移し、いつもの日常へと戻っていった。
東方遊楽調外伝、fin……




