プロローグ〜博麗霊斗の布石〜
今回多数の作者様とのコラボになっています!
連載型なので1人ずつですが、楽しんでいただければ幸いです!
このコラボ全ての投稿後、本格的に遊楽調本編の改訂も進めていくので、ぜひご期待ください!それでは、どうぞ!
とある世界。
博麗の巫女の夫、博麗 霊斗は、ぼんやりと星々の光が煌めく星空を見て呟いた。
「暇だな」
そんなやる気が微塵も感じられない呟きとは裏腹に、霊斗の目は爛々と輝いていた。
「……かなりの強者の気配を感じたが?」
「……それはいけないわね。別に今日は戦いに来たわけじゃないもの」
そうは言いつつも、そいつは威嚇をするかのように、妖力を解放した。
凄まじい妖力の波動。妖力に触れるのには慣れている幻想郷の草花も、クタリと萎れ、俺にとって不快感を募らせる瘴気が辺りを支配する。
「俺だってお前となんざ戦いたくねぇ」
「あら、そう」
そいつ……とある世界の妖怪の賢者の娘、八雲 金は、その美しく艶やかな唇をぺろりと舐め、俺をマジマジと見つめる。
「……あなた、また無理やりやったの?」
「何言ってるんだよ。あくまで霊夢の了承は得てるぜ」
「いーや……絶対に直前で嫌がった霊夢に、強要したわね。それくらいバレバレよ」
「また『勘』か?」
「ええ、そうね。勘よ」
金の勘はよく当たる。それも、霊夢並みに。だから嫌なんだ。
「ま、良いわ」
ついでに言うと、俺の息子たちの中で一番闇堕ちした息子と紫の娘ってのも腹がたつ。
「……さて、そろそろか」
「何が?」
「まぁ、見てろって」
俺はそう言って、次元の穴を開き、そいつの依り代になっている隕石をこちらの幻想郷に送り込む。
直後、幻想郷の山の中でも随一の高さを誇る、妖怪の山の頂上付近で大爆発が起きた。
博麗神社では今はお祭りをやっているし、太鼓の音に紛れて気付く奴は少ないだろうと予測しながら、俺は龍牙やこの幻想郷中に居る人に声をかけるための空間の穴を作り出す。
「先ずは……あいつが行くだろうな」
俺はそれだけ言うと、金を置いて、龍たちの住まう天空のさらに遥か彼方へと、次元の狭間を通して向かった。
◇◆◇◆◇
「先ずはハイドだ。龍牙、準備は出来てるか?」
「ああ、もちろん。ぶっ倒してもいいんだよな?」
俺同様に、非常に好戦的な龍神……龍崎 神斗は、妖怪の山へと龍神の圧倒的な飛行速度を用いて飛んでいく。
それと同時に、龍牙(神斗)の部下は俺に話しかけてくる。
「グルル……酋長様に何を唆した?」
「なに、あいつの暇つぶしに付き合ってやってるだけだ」
「グル……それは困るな。酋長様が戦うとろくなことがない。おそらくだが……あの山、吹っ飛ぶぞ」
「もちろん、それを見越した上であいつに行かせたんだ。妖怪の山頂上は別次元に隔離してあるしな」
俺の龍牙の部下の忠告に対する答えを聞き、龍牙の部下はそれなら、と納得した様子を見せた。
「さて……次はあいつだな。龍殺しの魔法使い」
俺がその名前を出した途端、龍たちは雄叫びをあげた。
◇◆◇◆◇
〜人里の隅、とある居酒屋〜
「よう。最近顔出せなくてすまねぇな」
「お、霊斗さん。いつも助かってるよ」
霧雨 魔晴はそう言うと、俺に酒の入った盃を用意する。
「あー……いい、今はいらねぇ。それより魔晴、今度いろんな人がこの幻想郷に来訪するんだが、そいつらと戦わないか?」
「え? なんでオレが?」
「お前、忘れたのか? お前の序列6位だぞ?」
「ああ、そういやそうだった。俺、あんまり覚えてないんだけど……まあいいか」
魔晴はそう言うと、店を一時的にでも閉める準備を始めた。まあ、順当な判断だな。
「あ、そうだ。お前の戦う相手について、プロフィールだけ教えとくが──」
◇◆◇◆◇
俺が博麗神社に戻ると、そこに金は居らず、それと同時に妖怪の山の頂上と霧の湖の湖上で、大きな爆発が起こる。
俺は興味本位で視界を操り、戦闘の様子を見届ける。まずは妖怪の山の頂上からだ。