どこか遠くで・・・
「やっとここまできたか」
元々のものはいいであろう、だがここまでの激闘によりぼろぼろになった鎧を身に着けた戦士が剣を抜きながら最後の大扉を開く。
うっそうと茂る森の奥深く、瘴気が濃く立ち込めるダンジョンがあった。
地下へ深く潜ってゆけば最奥に古き時代の蛮族どもの玉座があった。
その玉座に用心深く近づいていていきながらここまでの苦労を思い出していた。
底なし沼にはまってみたり、『あやかし』にたぶらかされそうになってみたり、迷いの森で危うく森の一部になりそうになってみたり、安宿で就寝中、身ぐるみ剥がされそうになってみたり・・・。
ーーー?
なんか最後のは違うような気がするが、まあいい。
これでやっと念願が叶うのだ・・!!
そっと玉座にそって彫られている緻密なレリーフをたどってゆくと古文書通りに魔力を流し込む。
ずんっと、重い音がして隠し扉が通路の奥へと開く。隙間からはうっすらと明かりが漏れてきている。
はやる気持ちをおさえて慎重に用心しながら隠し通路を進む。
曲がり角を2回曲がったところで大きくひらけた場所に出た。天井は高くてよく見えないがどうやら天然の洞窟らしい。虫なのか、ふわふわと光っているものが宙に漂っているため幻想的な風景が広がっている。
中央部には水が湧き出ている女神像があり、その女神の天に掲げている左手の部分にくぼみがあった。
台座には古代語で『証をわが手に。強く願った望みが叶うるだろう』と、書いてあるはずだ。
「あれか。」
いよいよだ、と、ごくりと唾を飲み込んだ。胸元から首に下げていた小さい革袋を取り出す。その中から親指ほどの玉を取り出して女神の左手にはめた。
カチリ
どこか遠くで何かが開いた音がした・・・。
---同時刻のとある民家。
「あ、お母さん。開かなかったジャム瓶のふたが開いた!!」
「あら、ずっと食べたいっていってたジャムね。よかったじゃない。」