1章 『暗歩』
遅くなってすいません
「じゃあ、説明するぞ。まず初めに、さっきの技の名前は『暗歩』という。これは相手の意表を突くために使うものだ。この技を使うために必要なものは二つだ。一つ、素早く動くことが可能な者。二つ、気配を消すことにたけている者。まあ、どちらか一つでも出来ないことはないがやはり精度というか成功の確率が下がるからおすすめはしないな」
「なるほど。確かに俺には出来ないな」
「確かに大盾を使っているウェイドには厳しいですね…」
「ええっと…私気配の消し方とかよく分からないんだけどどうしたらいいのかな?」
「ちょっとクティルの場合は特殊だからまずは僕の話を聞いていてくれ。そのあとしっかり教えるから」
クティルがうなずくのを確認してから俺は説明に戻った。
「それで、簡単に説明すると…相手の第六感を狂わせることを目的として行う技…かな?」
「おいおい…全然わからないぞ…」
「もう少し詳しくお願いします」
「分かった。まずは、敵、さっきの場合だとウェイドに向かって魔力を纏いながら突進したな?あれは、相手に自分の存在を強く認めさせるためにやっている。そして途中で魔力と気配を同時に消すんだ。そうするとさっきまであった存在が急に消えたように敵は感じる。ちなみに僕の場合はこの時に急加速を行っているそうすると相手の視覚からも一瞬消える。その時に大体の実力者は気配などを頼りに探すが、その時には相手の気配を探る感覚は狂ってしまっている。あれだ、眩しいものを見てから急に暗い所に行っても物が見えない感じかな?」
「なるほどな。確かに敵を見失ったら反射的に相手の気配を探りに行くからな…そこで気配が消えたら探す手段が無いな」
「そうですね…これは確かに実力者のほうが引っ掛かりやすい技ですね」
「そして、敵に近づいたら一旦わざと気配を漏らすんだ」
「そりゃあどうしてだ?そのまま攻撃しちまえばいいじゃねえか」
「まあそれでもいいのですが、この状態のとき、敵の体勢はしっかりとしていることが多いです。そのため、一旦気配を漏らして自分の位置を知らせることによって相手は反射的にそちらを向きます。しかし、反射的な動作なので、体勢が崩れます。そしてまた気配を消して攻撃を仕掛けると防がれることが少なくなります」
・・・・
「確かにそのほうが確実性が増していいですね…出来れば、ですけどね」
「まあ、確かにある程度訓練しないと出来ませんし、訓練したからといってて確実に出来るわけではありません」
確かにこの類のものはセンスが必要になってくる。どんな人でも、とは行かないので俺は苦笑するしかない。
「けどまあ存在を知っているだけでもいいと思うよ。俺以外にも使える奴はいると思うし」
俺がそう言うとサムラスとウェイドはそろって微妙な顔をした。
「どうかしたんですか?」
俺がそう尋ねるとサムラスは渋い顔をしながら
「この街にウェイド以上に近接が優れている人なんて一人いるかいないかですよ。ギルドのBランクで近接ができるのなんてウェイド以外に五人程しか居ませんし、それ以上のランクには魔法使いが独占しているので実質ウェイドは近接において、ギルドで五指には入るのです」
そのことを聞いて思った以上に武芸者少なかったことにレスターは驚いた。いや、よく考えるとこの世界には流派というものがなく、どうしても自力で訓練をしなくてはならないことを思い出し納得した。
「レスターくん。まだダメなの?」
クティルが首をかしげながらそう問いかけてきたのをみてレスターは自分の考え事を一旦棚に上げ、クティルに教えることにした。