1章 少女との出会い
学園に行くと決めたあの日から一週間が経った。
あの後は大変だった…。師匠の「レスターがあっちに行っても寂しく無いように今しっかりと可愛がってあげなくっちゃね!!」という謎の宣告を受けたあとひたすら頭を撫でられたり、キスをされたりした。…頭を撫でるのはまだしもキスは本当に止めて欲しかった。
まあ、そんなこともあったりしたが、無事師匠と別れ、今は一人で宿に泊まっている。
ちなみに今は試験勉強をしている最中だ。師匠が言うには簡単らしいが念のためというやつだ。
「ふう、少し疲れてきたな」
しかも、もう4時間ほど復習をしているのでそろそろ飽きてきた。
「…よし!鍛錬がてらに街を走って来るか!」
そうと決まれば話は早い。急いで動きやすいような服に着替えると愛剣を引っ掴んで街へ駆け出した。
タッタッタッタッ
体力作りの為ため街の地形を覚えるために訓練用の木刀を背負って軽く走っていると門の近くに巨大な建物があるのが見えた。
「なんだありゃ?」
若干首をかしげながら建物の前に立ってみると入り口の上の方に
『ギルド』
と書いてあった。
『ギルド』というものは簡単に言うと何でも屋である。
薬草を採取する者もいれば魔物を専門とする者もいるし商人と契約を結び商人を護衛する者だっている。盗賊を専門にしている者もいることはいるが収入が安定しないため、少数派である。
これだけ多くのものを『国』という枠組みを越えて展開しているのが『ギルド』である。
だが、その全てをやる者は案外少ない。例えば、薬草を採取するにも素人と玄人がやるのでは状態の善し悪しが雲泥の差が出てしまう。また、魔物と戦うことが出来る者は薬草を採取するよりも稼ぎが良いため、薬草採取をする者は極少数の者しかいない。
つまり割に合わないのだ。魔物専門の者が薬草採取をしたところで薬草採取専門の者の半分の稼ぎも出せず、薬草採取専門の者が魔物を倒そうとしたところで返り討ちに合うのがオチである。
という訳で何を専門にするのかを加入する時に質問される。
そういえば師匠が時間がある時に加入して置くと色々と便利だよ〜と言っていた気がする。小遣い稼ぎにうってつけなんだそうだ。一応師匠からの仕送りもあるがそれに頼りっぱなしというのも成人(精神的に)している身としては肩身が狭い。躊躇い無く使えるお金というものも少しは持って置きたい。今は時間も余っていることだしちょうどいいのではないか?などと考えレスターは入り口に向かって歩き出したその時
ドンッ
「っと、すまない」
レスターはぶつかってしまった少女に謝った。
「い、いえ。こちらこそすいません」
レスターは少女の顔を見ようとして驚いた。すっぽりと頭をフードで覆い隠しているのにも関わらず周りの人がたいして気にしている様子が無いのだ。こういう服装が流行っているのかと一瞬考えたが他にしている人もいなかった。不思議に思ってよく見てみると余りにも気配が薄いのだ。そこにいると分かっていないと全く分からない程に。簡単なことだ。周りの人は彼女が此処にいると気づけなかっただけなのである。
「えーとこれから登録しに行くのかな?」
「あ、はい。家が貧乏なので少しでもお金が欲しかったので登録しに来ました」
「もし良かったら一緒に登録しない?街に来たのが初めてだからちょっと心細いんだ」
「だ、大丈夫です。私も一人だったので心細かったんです」
そしてレスターと少女はお互いに自己紹介をしながら入り口をくぐって行った。