0章 母親兼師との出会い
ぼんやりと視界が霞みがかっている。
(此処はどこだ?)
訳も分からないまま目を開けて周囲を確認してみる。
正面には木、左右には布、上下には顔が向けられ無かった。
状況を確認するため起き上がろうとしたが何故か無理だった。
(いったいなんだ?)
そう訝しんでいると、少し遠くの方から女性の声が聴こえてきた。
「あら?こんな所にミラージュの魔法?いったい何かしら?」
そしてどんどん声が近づいて来た。
そして…
「あら?こんな所に赤ん坊?いったいどうしたのかしら?」
彼は慌てて上に顔を向けると…
女性の顔があった。
(巨人族!?)
少年は慌てて立ち上がろうとかした…が。
(くっ…全く身体が動かない!!)
しかし女性はそんな少年の葛藤に気づいた様子も無く
「あら?この紋章って……」
女性の目つきが急に鋭くなった。
「パルミット家の紋章ね…ということは……」
女性がこちらをじっと見つめて来た。
「なるほどね。魔力はケタ違いに多いけど魔法適正がどれも初級
魔法までしか満足に使えない程に低い。」
(!?)
少年は声にならない悲鳴を上げた。
自分の魔法適正を知られたのだ。それは魔法を使いながら戦うものとしておよそ半分の戦術を知られたのに等しい。戦いの中ではハッタリというものも相手にプレッシャーを与えることが出来る武器なのだ。
少年が人知れず覚悟を決めている中、女性は急に立ち上がり宣言した。
「よし!この子は私が育てる。」
(は?)
少年は混乱した。
当たり前だ。さっきまで死を覚悟していたというのに急にそんなことを言われたなら誰だって混乱する。
しかし、そんなことをつゆとも知らない女性はいそいそと少年を抱き抱えるとさっそうと走り始めた。
(えっ、ちょっ、うわっ)
女性の余りに赤ん坊のことを考えない走りに目を回しあっさりと気絶した。
(ぐっ…)
余りの頭の痛みにめまいを起こしながら目を覚ました。
「ん?起きたかな?」
(起きたかな?じゃねーよ)
少年は痛む頭を我慢しながらそう毒ずいた。
「うんうん。やっぱり赤ん坊はたくさん寝なくっちゃね」
(ちげーよ!!気絶したんだよ!!)
と心の中で叫んだ。
「いやー赤ん坊だから分かってないと思うけど一応名乗っておこうかな」
女性はそう言うときちんとした姿勢となりさっきまでのおちゃらけた雰囲気を凛としたものに変えて名乗った。
「クリュナ・ランペスト、この世界の魔法を研究している者であり初級魔法の威力向上を研究しているわ」
「そして貴方の母親となる者よ」
パチっとウインクをしながらそう言った。
しかしながら少年はその名乗りを聞いていなかった。
なぜなら…
(あ、赤ん坊だとおおぉぉぉ!?)
と違う所に驚いていたからだ。