ケットウ
第二話 ケットウ1
事情を聞くと、おっとりな女の子は紫村夏織しむらかおりさんで、小柄な子は平都悠ひらさとはるかさんという名前で、女の子ばかりだと心許ないからという、単純な理由でした。
「それにねぇ、ふゆみんは元掃除屋だって言うから、安心だと思って」
ねー、と平都さんに同意を求める仕草は、女の子らしくて可愛らしいです。
「君はほんとに掃除屋だったのか?とてもそうは見えないが……」
「よく言われますよ、ですが、事実です」
本当によく言われますよ、トホホ……。
不服がありそうでしたが、こちらは特に断る理由もなかったので、結局グループに入ってもらうことになりました。
取り敢えず、二人とは別れて、文弥君とどこに行くか、歩きながら話していると、前方にとても大柄な男がこちらを睨んで仁王立ちしていました。僕達は取り敢えず無視して通り過ぎようとしました。
「お、おい、テメー!なめてんのか!」
やっぱり僕に用があるようでしたが、少し取り乱しているところを見ると、あまり慣れてないのでしょう。
「なんの用だ?」
文弥君が低い声で威嚇する。
「メガネに用はない。そっちの元掃除屋に用がある」
「なんでしょう?」
「お前、強いのか?」
どんな質問やねん!( ゜д゜)ハッ!口調が崩れてしまいました。
「さあ、どうでしょうね?」
「俺は強い奴と闘いたい」
どこの狂戦士ですか、面倒くさくなってきました。
「あの、帰っていいですか?」
「くっ!とにかく、決闘をしろ!」
「奏、ほっとけよ」
うーん……。あっ!
「いいですよ、でも……」
翌日、朝ーー決闘というのは、野次馬を呼んでしまうようで、朝7時頃から、たくさんの人だかりが出来ています。
「お前はとんでもない事考えるな〜」
「そうですか?名案だと思いますが」
ーーー「いいですよ、でも、条件があります」
「何だ?」
「まず、明日授業が始まるまでには終わること。もう一つ、負けたら勝った方の言うことを何でも一つ聞くこと」
「ほう、面白い、いいだろう」ーーー
「そんなに自信あるのか?」
「さあ、どうでしょうねぇ」
「ふゆみん!大丈夫なの?」
紫村さんが心配そうに僕の顔を覗き込んできます。ふと、隣を見ると、余計なことを……、という顔で、平都さんが睨んでいます。
「まあ、これで僕の実力も判るのでいいじゃないですか」
「そういう問題ではないだろう!もし負けたらどうするつもりなんだ!」
平都さんが声を荒げます。勝手に決めてしまいましたからねぇ。申し訳ない。
「おい!そろそろ始めるぞ!」
「では、行ってきます」
「あっ」
人だかりの中心に相対して立つ。
「どちらかが負けを認めるか、気絶するまで!」
「分かりました」
「山岳剛史参る!」
そういえば、名前知りませんでした。
「っと!」
猛スピードでツッコミ、拳を振るってくるのをギリギリで躱す。