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デアイ

 第一話 デアイ


 

 桜舞う4月の今日、僕は南が丘高等学校に入学します。とは言っても、2年生からの編入という形なのですが……。

 南が丘高等学校は、主に指名手配犯を捕まえる「掃除屋」を育成するための学校です。京都にあるだけあって外観は全体に茶色っぽく、広大な土地の中に建つその校舎は、普通の高校と何ら変わりない形だと思います。しかし、敷地内には、様々な施設が建っています。東京ドームいくつ分なんだ、というグラウンドの中に、弓道場、射撃場、小学校にあるような遊具、野球用のマウントやベースなど。恐らく、実習で使うものなのでしょう。

 そうそう、掃除屋とは、数年前に大きな犯罪組織ができた後その対策の為、新しい職業として定められた武器と警察権を持つことを許された人たちのことです。もちろん、何の訓練もしていない人間に銃やらを持たせるのは危険ということで、この学校が作られたのです。

 

 そんなこんなで、校舎に入り、ピカピカの廊下を歩いていると、前方に、顎と口元にひげを蓄えたいかにも強そうな御老人が立っていました。ここに来る前、パンフレットを確認したため、僕はすぐにその方が、南が丘高等学校の校長先生だと判断しました。

 「おはようございます。今日から編入します、冬見 (ふゆみかなで)と申します」

 僕がそう声をかけると、人懐っこそうに目を細めて笑顔に変わりました。

 「おぉ、君か、現役掃除屋から学生になるという変わった生徒は。わしは校長の道楽じゃ」

 冗談めかして言い、肩を揺らして笑った。嫌味な感じは不思議としませんでした。

 「担任の先生を呼んでくるから、待っといてくれ」

 そう言って、道楽先生は後ろのドアを開けて職員室と思われる部屋に入っていきました。

 

 手持ち無沙汰になって、キョロキョロしていると、上下をジャージで揃えた人物が、道楽先生の代わりに出てこられました。髪は長いが、あまり手入れがされていないようで、ボサボサで年の割にあどけない印象を受けるはずの顔が、少し老けて見えてしまっています。

 「おう、今失礼な事考えてただろ、初対面の癖に」

 そう言って下から思いっきり睨みつけてきました。怖い……。

そう、身長はかなり低く、166センチの僕の肩くらいまでしかありませんが、迫力は抜群です。

 「すみません、貴方が僕の担任の先生ですか?」

 「ん?そうだぞ、名前がまだだったな、明知瑠美だ。よろしくな、冬見」

 「はい、よろしくお願いします、明知先生」

 明知先生は頷くとゆっくりと歩き始めました。教室まで連れて行ってくださるのでしょう。

 「掃除屋だったんだろ?私も去年までは掃除屋だったんだぞ」

 「そうなんですか?」 

 「っと、この話はまた今度な。着いたぞ」

 ここが僕のクラス、どんな人がいるんだろうか、不安と期待でいっぱいです。  


 「よし、入るぞ」

 ーーガララッ

 先生は勢い良くドアを開けて入っていきました。それに習い、僕もゆっくりと入っていきます。

 知らない人が入ってきて少しざわめきます。

 「おはよう!全員いるな。早速だが、転校生だ。冬見!」

 「はい、冬見奏と申します、これから2年間よろしくお願いします」 

 なるべく笑顔になるよう努めたが、どうでしょうか。すると、

 「奏っ!?」

 ガタッと椅子から立ち上がり、僕の名前を呼ぶ懐かしい声。

 「文弥君!久しぶりですね!」

 「お前ら知り合いか、ちょうどいい、谷の横に座れ」

 僕に気を遣ってそう言ってくれましたので、素直に従います。

 「え〜、冬見は去年まで現役で掃除屋をしていたエリートだ。掃除屋のことは聞いてもいいが、仲良くしてやってくれ」

 再び教室がざわめきました。

 「はいはい、今日のホームルームは終わりだ、質問は後。先に体育館で始業式だ。遅れるなよ」


 始業式は特に問題なく終わり、あっという間に放課後です。

 「掃除屋だったって本当なの?」

 「どんな犯人捕まえたんだ?」

 「武器は?」

 矢継ぎ早に質問をくらい、苦笑いで曖昧に答えます」

 「まあ、本当ですが、僕はそんなに大したことないですよ」

 「おいおい、やめてやれよ、奏が困ってるだろ」

 「文弥君!大丈夫ですよ。それにしてもここに通ってるのは知ってましたが、まさか同じクラスになるとは……」

 このメガネが似合う細身の男子は谷文弥(たにふみや)君といって、僕の幼馴染です。

 「そうだな〜、驚いたよ。そうだ、これからどっか行かないか?」

 「いいですね!じゃあ……」

 ガララッ!!

 「すまん!連絡するわ!明日実習のグループ決めるから5,6人でだいたい決めといてくれ!じゃっ」

 ガララッ!!

 明知先生がすごい勢いで入ってきて、去っていきました。

 「そうか、2年からは実習か〜。後3人どうする?」

 僕が入っていいのだろうか。気を遣わせてしまったかもしれません。 

 「僕入っていいんですか?」

 僕が控えめに言うと、

 「当たり前だろ、気にすんな」

 さすが文弥君優しいです!

 僕が喜びの余韻に浸っていると、

 「私達も入れてほしいなあ」

 とのんびりした声が後ろから聞こえてきました。振り返るとそこには、見るからにおっとり系の可愛らしい女の子と、僕達を値踏みするような鋭い視線をぶつけてくる、小柄な女の子が立っていました。



 

 


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