表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/20

彼氏と一緒にゲーセンデート!


リクエスト消化回。


“あの人(達)”が再登場!!




「そういえばさー、櫻ちゃんと白樹ってデートとかちゃんとしてるの?」

 てっめこの愉快犯。いきなり何言うんだよ。

 

 それはいつもの定例会での事。

 不意に斜め横の人物が爆弾投下して来やがった。

「空条先輩ののろけとか飽きたしー?今度は別の話が聞きたいっていうかー」

「あんまり内容変わってない気がするけどね、愉快」

 観月先輩が苦笑する。

 空条先輩は顔をしかめ、友美はと言えば顔を赤くしつつもちょっとほっとした様子。

 さっきまで話題の人だったからな。

「でも櫻ちゃん、白樹君の家にはよく行ってるよね?」

 ……。

 ほっとしたのは良いが、気ぃ抜き過ぎて余計な事まで言わんでよろしい。


「連れ込むのは構わんが、央川の親に顔向け出来ない様な事は“まだ”しない方が良いと思うぞ」

「……節度は、守った方が良い」

「………あいにくしたくてもさせて貰えないんで大丈夫デス」

 空条先輩と椿先輩の謎の説教?に、何故かぎこちなく答える去夜君。

「お家デートばっかりなのー?不健ぜーん」

「うるさいよ」

 東雲君がここぞとばかり楽しそうに、去夜君をいじりにかかった。

 家ばっかでもないんだけどなー?ちゃんと出かけてるよ?

「この前行ったのどこだっけ…あ、科博だ」

「「(かた)ッ」」

「まあ、らしいといえばらしいか」

 それはどういう意味ですか、大寺林先生。

「先々週…?」

 だったよね、と、となりにいた去夜君に首をかしげつつ確認して見ると、

「博物館と美術館ハシゴして、片頭痛起こした人」

 ちょ、妙な笑い方しながら人の事指差さない!

「阿呆か」

 ひどっ!



「空条先輩も酷くない!?そこまで呆れなくても良いじゃんかー!」

 鬱憤(うっぷん)を晴らす様にガチャガチャとキーを叩く。

 あっ!ミスったー!?


 言われたからって訳じゃないけど、訳じゃないけど!!(2度)今日は帰りにゲーセンに立ち寄ってみた。

 いつもはぴーすけがいるから真っ直ぐ帰るんだけど…。ごめんぴーすけ、見逃してくれ。

「別にデートして無いって訳じゃ無いのにねー。何であんな、何処にも行って無いみたいに言うのか!」

 むー!他人の事に口出す暇があったら自分で彼女作ればいいと思うの!

 って、彼女いる人も中にはいたっけねええええええ!!!

 くあー、怒りながらやってるせいか得点がー!

 ちくせうー!今日は散財じゃー!!


「俺もあんまり出歩きたいって思わないからなー」

 後ろで見ていた去夜君が言う。

 そうなんだよねー。映画とか遊園地とか定番デートコースは、ひと通り行ってしまえばそう頻繁に行くような場所でも無く。

 や、ま、映画は何だかんだ言いながら行ってるか。暇は潰せるしな。

 そもそも去夜君のデート代が生活費から出ている事もあって、あんまりお金使う所はちょっと……って事情もある。

 向こうが気にしなくてもこっちが気にするんだよ。

 ……悪かったな金銭感覚が庶民で。文句は前世に言ってくれ。


 ここら辺、ゲームの頃のデートとはやっぱり変わって来てるっていうか……。

 場所の好き嫌い、行きやすい行きにくいの設定なんて無かったしなあ。

 もうちょっと作り込んでも良かったのよ?スタッフさん達。

 ……ゲームには無かった、こういう細かい情報も網羅されてる攻略本が欲しいです。割と、切実に。

 

 最近だと例の科博以外には、外に出るとしたら近くのモールでウィンドウショッピング(ひやかし以外の何物でも無い)くらいだったからなあ。

 何か考えなきゃダメか?


 どこか上の空でゲームを進めていた時だった。

「おまえなあ、ちったぁ後ろ振り返ってやれや」

「あっ、コージさん!どうもですっ!」

 珍しいなあ、向こうから声かけて来てくれるなんて。

 んー、ここ来るのも久しぶりだからかな?

「彼氏ほっぽっといて“DIVA(ディーヴァ)”とか、良い身分じゃねぇか」

 そう言われましても。

 あ、去夜君がそばに来て「ども」とか挨拶した。

 ……イマイチ壁がある気がするんだが…。まあいいけどね。

「ここ来てやるのって、ポップンかDIVAか……。DDRは哲学はまだ早いって止められたしなあ」

「格ゲーとかあるだろう」

 舜殺されるわボケェ。

 そもそもアクションは苦手なんだっつの。

 音ゲーはやる気(と根気)の問題。

 てゆーかJKに格ゲー勧めんで下さいよ、バイトさん。


「コーコーセーカップルはクレーンで彼氏にいいとこ見せて貰え」

 えー。

「荷物になるので拒否します」

 とか言いながら1度だけやった事あったけどね、クレーンゲーム。

 その時取って貰ったゆるキャラは、今私の部屋のテレビの上に鎮座されています。

「そもそも今、篠原ん家に居候中だしな」

 お互い顔を見合わせる。

 うんまあ、そういう事情なんであんまり荷物増やせないんだよね。

 そもそもぬいぐるみとかは、あまり部屋には置かない主義だ。

「んー、じゃあQMAマジアカでも?」

 去夜君に相談、といった感じで声かけてみると、何でかコージさんの方から「結局お独り様だろうが」ツッコミが入った。

「俺は別に良いぜ」

「一緒に考えながらやれば、2人でも結構いけるよね」

 去夜君の了承にそう返せば、するっと手に手が滑りこんで来た。

 ふお!?

 う、手繋ぎとか久しぶりかも!?しかもかなり自然なタイミングだった!?え、結構しっかり指と指、絡まってるんだけども!

 不意打ちの手繋ぎにドギマギして顔が赤くなってる(多分、いや絶対そう!)私の手を引き、去夜君が「行こう」と誘う。

 移動を始めた私達の背後から、コージさんが「なるほど」と呟いたのが聞こえた。

 その時、

「あー、もう、やっとみつけましたよ!」


 ???

 何だ急に?

 店中のゲーム機が爆音を鳴らし続ける中、その声は不思議と店内に良く響いた。

「げ」

 振り返った先から低いうめき声が聞こえた気がしたんだが?

「安西先生のゼミ、またさぼりましたね!?」

 言いながらつかつかとコージさん目がけて歩み寄って来たのは、栗色のさらっとした髪を肩で切り揃えた女の人。背はちょっと小さめ?

 おっかない顔してるのに何処か迫力に欠けるのは、本気で怒っている様に見えないからかな?

 ちらっと見ると、去夜君もこの突然の乱入劇にぽかんとしているみたいだった。

「っせーな、良いだろ別に。めんどうだったんだから」

「何の為の大学ですか!いい加減にしてください!」

 わあ、今聞いてはいけない事聞いた様な。

「サボったんですか?」

「悪い大人だー」

 お子様が見てるって事忘れないでね的にツッコむ私と去夜君。

 面倒だからサボったってwww

「るせえ」

 顔を顰めて振り返るコージさんと、今気付いたみたいな女の人。

「あ、す、すみません、つい」

 あー、きっと探すのに一生懸命だったんだなあ。

 何となく想像出来た。


「よーう、ここにいたかー」

「……」

「まったく、貴方ときたら」

 うわあ、何か増えた。

 女性を中心に数人の男性がやってきて話に加わる。

 しかも全員カッコいい部類に入るし。

 ふと周囲を見やると、ちらほら周りもこっちを気にしだしたみたいだ。

 何だか騒ぎが大きくなりつつあるなあ。

 ……てゆーか、何この逆ハーっぽいの。

 特に金髪と黒髪のイケメンが女性の味方してる。

 年下…というか、私達と同じくらいの年の子は黙って見てるだけ。

 コージさん味方いないwww

 ……あ、思い出した。多分この人達、コージさんのバンドの人達だ。

「わーった、わーったって。そんなに言うんなら来週は必ず出るから」

「まったくもう、最初から素直にそう言えば良いんです!」

 ぷんすこ怒ってるお姉さんは、ちょっと気が強そうに見えて、どことなく友美に似たふんわりした印象。

 ぶっちゃけ結構かわいい。

 コージさんも心底嫌がってるとかうんざりしてるとかじゃなくて、なんというか、普段の延長みたいな雰囲気だし。

 これがもしかしてコージさんの、…というかコージさん“達”の日常なのかな……?

 ゲームでは一切描かれていなかった彼の日常を垣間見る事が出来て嬉しい筈なのに、こういう状況はさすがに予想外すぎたせいか、微妙に喜べない自分に戸惑う。


「もしかして彼女さん?」

「……そういう話は聞いてないけど……」

 おいおいおい、もしかしてまさか“そういう意味で”攻略不可なのかー?

 何とも言えない表情にならざるを得ないというかなんというか。

「でも、コージさんがリアル彼氏だと案外大変そうだ」

 目の前の状況みたいにね。

 思わず生ぬるい視線になってしまったのも仕方ないだろう。

 コージさんもなあ、基本だるだるだからなあ。そこがいいっちゃ良いんだけど。

 ……この人も彼女さんの前だと覚醒とかするのかなー…?

 ああ、見てみたい。それはそれですっごくすっごく見てみたい。

「おいてめぇら聞こえてんだよ」

 ぎしっと音を立てそうなほどの視線で睨まれたけど、その状況だと怖さ半減ですよー?コージさん。

「おや美人さーん」

「絡むな。よく見ろ、彼氏持ちだぞ」

「えー?ざーんねーん」

 うっわあ、茶髪の人ちゃらいなあ。

「ええと」

 どう返事していいのか分らなくて、とりあえずといった感じで、ぎこちない笑顔を浮かべた。


「俺ら、こいつとバンドやっててさー」

 そう言って、いまだ仏頂面のコージさんを指す。

 コージさんは溜息。

 もう、と女の人がコージさんに軽く怒った。

 あーハイハイ、日常ってやつですね?

「知ってます。そうじゃないかと」

 そっちは意識してスルーして、茶髪のにーちゃんの方を優先させる。

 やっぱそっかー。

 って事は、最年少の子の白いのはやっぱバンドメイクだったんだね。

 でもどっかまだ色素薄い印象あるなあ。

「今度またやるんだー。で、これから打ち合わせなのよん」

 明るい人だ。そういえば、ライブの時もムードメーカーみたいな感じだったもんね。

「そうなんですか。2月のライブ行きましたよ」

 そう返事すると、ぱあっと表情が明るくなった。

「そーなのー!?じゃあ今度もまた来てくれるかなー?」

「あー、ええと」

 その言葉に、私はコージさんをチラ見。

 茶髪さん的には『いいともー!』って言って欲しかったんだろうけど、チケット貰わない事には何とも。

 そんな意味を込めてみると、本人は何故か溜息を吐いた。

「今度はちゃんと声かけろよ」

「え?」

「土産だけおいて行きやがって」

「あー」

 ハハ。“あの時”は素直に帰っちゃったからな。


 あれは1年の3学期。2月の初旬で、まだ去夜君と付き合う前…直前になるのか。

 色々あって、2人で一緒にコージさんとこのバンドのライブに行ったんだよなあ。

 ホンっと、色々ありましたとも。

 繋がれたままの手が、少しだけ力入った気がした。

 力を込めたのは、私か、去夜君か。

「2枚で良いか」

 隣に立つ去夜君に、コージさんが確認を入れる。

 私も確認の意味を込めて彼の顔を見ると、変な笑顔で頷かれた。……目が笑ってないよ、去夜君。

 あ……何となく分かった。これ去夜君版“仏の顔カウントダウン”だ。

 

 …………残機、いくつだろ……。




 そのままコージさんは、バックヤードにチケットを取りに行ってくれた。

 残された私達が、お互いあまり知らない者同士微妙な空気になって、僅かに沈黙した後の事だった。

「……もしかして貴女、コージの事好きですか?」

 ブハ

 女の人の突然の質問に、周囲から何か吹いた音が聞こえた。いや、残りのイケメン’sじゃなくて、店内からって意味なんだけど。

 気のせいじゃなくて、絶対そう。うぐぅ、やっぱ見られてたか……。

 そりゃまあ、気になるよねえ。こんな変な集まり。

 てかコージ!?呼び捨て!?しかも直球!?どことなく困惑顔というか、不安そう!?

「ファン、……っていうよりは仲良しのお兄さん、みたいな感じ、ですかね?」

 むしろ私の方が困惑だよ。

「そうなの?」

「自分彼氏さんいますし」

 おすし。

 やや冷めた、というか引いた感覚で言う。

 半年前ならともかく、今はなあ。うん、ないわー。

 というか……あー……これ、確定や。

「彼女さん?」

 ですか、と言外に聞いてみる。

「ええと……」

 反応が友美と一緒とか。

 …………何だろう、複雑すぎて言葉にできない。

 らーらーらー、とか脳内でBGMをだだ流しにしつつ、目の前のお姉さんとしばし見つめ合う私なのであった。

 魂魄飛んだわ。


 はにかんだままお姉さんは、

「これからもぜひ、よろしくお願いしますね」

 そう言った。

「あー、ハイ」

 コージさんと、って事で良いんだよね?

「はいはーい、俺も俺も―」

「お前は空気読め、後ろをきちんと見ろ」

「……」×1


「ほれ」

「あ、どうも」

 戻って来たコージさんに、チケットを2枚手渡される。

「今回は照れないんだな」

 吐 血 す る か と 思 っ た。

 何言うかと思ったら!!

「…………色々、事情ってもんがあるんですよ、こっちも」

 少し俯き、押し殺した声で言う。この状況で正面から顔なんか見れるか!

 言うな!触るな!頼むから!!

「そうかい、そりゃたいへんだな」

 ああ、そのどうでも良いって態度も良い……。(末期)


「ショック?」

「うん?」

「いや、“あの人”にカノジョがいて」

 ゲーセンから出てしばらく行ったところで去夜君が話しかけて来た。

 今日口数少なかったのは、あんまり話した事無い人達ばかりだったからだろうなー。

 私も吃驚したし。

 今さっき起こった出来事を回想しつつ、返事を返す。

「うーん。まあまあねえ」

 何とも言えない、といった風になったのは、まだ自分の中でも整理しきれていないからかもしれない。

 落とせないバグに彼女がいたとか、“前世(まえ)”なら多分炎上もんだわ。

「でも、ゲンキンなもんでさ」

「?」

 隣の人が不思議そうに、あとちょっと心配そうに顔を覗き込んで来たので、私もそれに視線を合わせる。

「今は隣に人がいるせいか、そんなでもないよ」

 そうやって笑って、ずっと繋いでた手に、少しだけぎゅっと力を込めた。









『安西先生』はバスケの方じゃなくて、スパロボの方。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ