彼氏と一緒に乙女ゲーム!(中編)
ここから個人ルート。
個別ルート1 元気系年下少年隊員
とあるイベントで隊を離れる少年。
その少年に千月流は警告する。
某年某月某日、とある場所には近づくな、と。
それは未来を知るが故の忠告。
しかし警告むなしく少年は現れてしまった。
敵に取り囲まれる中、千月流は少年を庇うも、少年は重傷を負ってしまう。
命の危機に少年は選択する。
すなわち―――吸血鬼の血を飲む事を―――
「史実ねじ曲がってるんだけど」
「だ っ て フ ァ ン タ ジ ー だ も の」
「そんな理由で済まそうとすんな」
「それにこのキャラの場合、そうでもしないと後続かないからねー」
「他のキャラも生き残るの?これとか?」
「っていうか、あー、だいたいそんな感じ」
「だいたいwww」
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仕様です。
吸血鬼の血を飲んだ事で、日に日に人で無くなる感覚を覚えて行く少年。
月の奇麗な晩、「人で無くなるのが怖いんだ」と千月流に零す。
「その気持ちを忘れなければ、君は人でいられるよ」と千月流。
戦争の混乱の中、多くの者が死に、多くの人が部隊を去って行った。
それでもなお、千都留はこの隊に留まると言う。
それは、彼女にとって本当に大切な人を見つけたから―――
千月流は渡す。
彼女が幸せになる為に、吸血鬼の血を中和する薬を。
千都留の恋人もまた、不死人になっていたから。
千都留の為に全てを投げ打って死のうとまで思いつめる千月流に、少年はそっと寄り添った―――
少年の恩人が吸血鬼の血によって狂ったと言う。
少年は隊を離れ、一人討伐に向かおうとする。
その少年の隣には、千月流の姿があった――――――
「フーン、ifとしては割とまとまってるんじゃない?その後は短そうだけど」
「良いんだよ、これはこれで。ちょっとだけでも幸せになれるんならさ。……って話。さて次は、っと、兄さんいくか」
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まずは本筋関係無いキャラから、が櫻のジャスティス。
個別ルート2 義兄系年上隊員
千都留がその人の事を「お兄さんみたい」と言ったので、「それならボクにとってもお兄さんだね。これからも宜しく、―――兄さん」と兄認定した千月流。
「兄さん」自身は不本意そう。
夜叉の血、吸血鬼の血、キメラとしての生体。
部隊の学者幹部に実験体として研究に付き合う千月流。
それを知った「兄さん」は激怒し、彼女をその場から連れ去る。
発作のせいか他の痛みに鈍い千月流に、「兄さん」はイライラ。
千都留の為にも出来る事を惜しむつもりはない、と自己犠牲精神を発揮する千月流に、「兄さん」がキレて衝動的に口付けを―――
「余裕無くなって来たな、この人」
「いやあ、余裕が崩れた大人おいしいれす」(^q^)
「…………」
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むしろここからが本番。
近頃の隊の雰囲気の悪化や、今後についての意見の相違、何より千月流の件。
「兄さん」は千月流を連れて隊を離れる決意をする。
千月流も中和薬を千都留に渡し、彼女の恋人には「泣かせるな」とだけ警告をし、隊を去る。
そんな千月流に、夜叉の一族から接触が。
不死人の軍勢を作って人間を支配下に置こうとする、過激な一派が活動を開始したらしい。
元々夜叉の一族だった千月流は、その討伐に参加する事にした。
それを知った「兄さん」は、思いの全てを打ち明け、引き留めようとするが―――
『にい、さん…?』
『こんな時まで、“兄さん”、なんて、言うな』
「これホントに全年齢か?」
「まあ、兄さん独りでCERO上げたって言われるくらいだからねえ」
「流血暴力表現のCEROじゃないのかよ!?」
「それも当然ある」
「………なあこれ、確実にアウトだよな」
「……セーフです」
「いやこれ、絶対ヤッてるだろ!?」
「だってほら、具体的な描写がある訳じゃないし!」
「いや主人公、……って…!」
「もしかしたら床の上で押しくら饅頭してるだけかもしれないじゃん!!」
「ねえよ!この状況でそれは無い!」
「あるよ!」
「ぜってーねえって!無理ありすぎだろ!?そっちの方が!」
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ヤッた、ヤッてないで小一時間ほど大ゲンカ。
バカらしくなってお互い謝る、っていう。
何ヤッてるのかは想像にお任せ☆
個別ルート3 ストイックむっつり剣士
桜の木の下で剣士は言う。お前は怒らないのか、と。
男装の少女は言う。貴方は必ず帰って来る、と。
一度離れた剣士が再び戻って来た。
しかしそれも束の間、時代は激しく動き出す。
転戦に次ぐ転戦。
それでも少女がこっそり仕掛けた罠のおかげで、予定よりも早く目的地に着きそうだった。
朝の光の中、人とは違う夜叉としての身体能力を生かし、高い木の上から索敵する千月流。
そこへ剣士がやって来た。
彼もまた吸血鬼の血を飲み、手に入れた人にあらざる力を駆使し、すいすいと彼女の隣へ昇って来る。
美しい光景の中、しばしの休息を―――
「これ、何時の間に忍者モノになった訳?」
「いやあ、忍者っつーか」
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共通からして、牙突かと思っていたら抜刀術とか色々右斜めなルート。
『がっ……、ハッ……!!』
『発作!?…血を、ボクの血を飲んで!!』
『なっ…!?』
『いいから早く!!』
耳たぶを切りつけ差し出す千月流。
ややあって、おずおずとその耳元に唇が寄せられて―――
「(う~、背後に人がいる状態で吸血シーンは刺激が強いなあ。スキップしちゃおうかな)」
「櫻、スキップ禁止」
ぺろりと耳を舐められた。
「!?なーっ!?」
「こら、いくら防音でも大声あげるのは禁止。あんまり騒ぐと怒られるかもしれないだろ」
「なー、なー!?」(少しは自重)
「楽しそうだから真似っこしてみた。結構このゲームえr」(にやにや)
「にゃああああ!!(微エロって言うな!糖分って言え!!)もういい、もういいから!!十分堪能したから!!」
「まだ(画面では)続いてるぞ?」
「お、終わらせるーーー!!」
「だーから、スキップ禁止だって」
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櫻は忘れていた。
発作が起きるのは千月流も同じ。
という事はつまり、ルート終盤に『相互耳チュパ』(強制)が控えていた事を!!
白樹君的には美味しい。
「さて、これでルート解放したし、次“残念”行ってみっか」
「残念なルートって何だよ」
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個別ルート4 残念な夜叉の一族頭領
燃え盛る城に一人、突然現れた少女。
夢遊病患者の様に、炎の海と化した城の中を徘徊する。
見咎めて救い出したのは、あの特殊部隊と敵対する夜叉の一族の頭領。
しかしその少女は、すべての記憶と感情を失っていた―――
「え?今までと始まり違うんだけど」
「うん。最初に千都留と出会っちゃうと、どうしても敵対する運命決まっちゃうからねー」
「だから残念?」
「いや、残念なのは性格」
「………っつーか、このゲーム敵も落とせんのか」
「いやあ、オタク女子の欲って、つくづく奥、っていうか業が深いからねえ」
「アンタが言うなアンタが」
救われたのもつかの間、どうやら彼は少女を知っているらしい。
その青年は少女を“ちづる”と呼んだ。
しかし城から逃げ出した直後、彼女は突然発作に襲われてしまう。
そのせいで青年が求めていたのは少女では無いと分かる。
行くあての無い少女は“ちづる”という呼称のまま、青年の探索の旅に同行する事となった。
戦火は北へと広がり、三度城は炎に包まれた。
対峙する2人の人影。
それが誰なのかもよく分らないままに、少女は斬りつけられた相手を庇い、背中に重い傷を負ってしまう。
奇跡的に一命を取り留めた彼女の背中には、消えない傷跡が一生残る事になってしまった―――
青年―――夜叉の頭領と斬り合いをしていたのは特殊部隊の副隊長で、敵対しているという立場の違い故に、あるいは1人の少女を巡って、もう何度も攻防を繰り広げていたと言う。
主人公によく似た男装の少女こそ、本物の千鶴。
青年が長きに亘って追い求めて来た少女だった。
湯治場で傷を癒しながら優しく介抱してくれる千都留に対し、屈託を覚える主人公。
一方男湯の方では、夜叉の頭領と副隊長の、微妙な入浴タイムが開始されていた―――
「おかしいよな?本人のルートだろこれ。なのにここが一番の笑い所って何でだよ」
「いやほら、それが頭領様ですから」
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このルートのせいで、2次(一部公式も)での扱いが決まったと言っても過言ではない。
北の果て、玄冬の桜の下。
2人の人にあらざる者達は、己の全てを尽くして斬り結び、乙女達はその光景をじっと見守っていた。
副隊長が膝を付き、ついに決着がつくかと思われたその時、乙女達の強い祈りに応えるかのように、不意に、桜の木がざわりと蠢いた。
ついにその姿を現した『龍』。
千月流はその時全てを思い出す。
しかし、誰に何を言う間もなく光に包まれ―――
気が付けばいつもの桜の木の下。
そして日常は回帰する。
全てを忘れた少女は、いつものように学校へ―――
「え?これで終わり?」
「ノーマルEDだからねー。さって、さっさと好感度上げて攻略終わらせよう」
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このゲーム唯一のノーマルEDは、過去に行く前と何も変わらない状態に戻る現代復帰ED。
と言う事は、最初に千都留に出会った場合、誰かとくっつくかないと灰になって消滅EDしかない。
そんな人生ハードコアモードな千月流ちゃん。
頭領ED自体は、『龍』に色々体のデメリット消して貰っての居残り嫁ってだけなので割愛。
あれ、こんなとこでも不遇。
あと1話続きます。