彼氏と一緒に乙女ゲーム!(前編)
キモイ~♪キモイ~♪
『失恋ショコラティエ』小学館水城せとな 著
より
attention!!
今回ちょっと内容が専門方向に痛いです!
心が日本海溝くらい深い人推奨。
具体的には「僕の考えた××」とか「夢小説」とか言われて大丈夫な人向け。
「私の好きな××はこんなんじゃない!」という方は、見なかった事にして下さい(笑)
ガーデンティーパーティー史上最大の問題作、ここに爆誕。
「えっ!?それマジすか!?マジですか!?うひょおおい!!まっじでー!?ひゃっほー!!“朧雪櫻鬼譚”きったあああああ!!うおおおおおおおお!!!」
その日私は、周囲の全てを意識の外に吹っ飛ばして奇声を上げた。
2年になっても続いた放課後の、いつもの面々によるいつものお茶会。
去夜君の隣に座って、大人しく友美と空条先輩のイチャラブ会話や、観月先輩と東雲君のお菓子談義、時折入る椿先輩のコメントと大寺林先生のツッコミを聞きながらお茶を楽しんでいた時、不意に携帯の振動音がした。
「あ、すみません、私だ」
この時間に鳴るとは珍しい。
確認するとメールだったので許可を取って内容を見ると、最近知り合った“中の人”からだった。
携帯アプリのゲームには興味無かったし、するつもりも無かったけど、大好きな一般ゲームからの派生のカードゲームが出ると聞いて、いそいそと携帯を買い換えたのはつい最近。
カードやアイテムの交換を何度かするうちに、成り行きでメアド交換した人がいた。
それが今回メールをくれた“中の人”。
何故“中の人”と呼ぶかと言うと、この人が本当にゲームソフト会社勤務で、しかも乙女ゲームブランド所属の人だからだ。
縁は異なものとはよく言ったもので、最初は冗談だと思ってたから色々分かる人にしか分からない様なネタや、妄想のフリしてまだこの世に出ていないゲームの話なんかしてるうちに、
「いやー、ありがとねー。この間話してたやつ、無事に会議通ったわーwww」
とか言われて「えっ!?」……って。
いや、マジでそんなんアリか、って頭抱えたよ。
ちなみにそのゲームもうすぐ発売なんだけど、それはそれとしてきっちり購入予定に入ってたりする。
こういうのも妄想具現化…いや、怒られそうだから止めとこ。
この世にゲームは数あれど、微妙に内容が違っていたりだとか、絵師さんが違う人だったりとかそういう事もあって、中には前世の世界にあってもこの世界では存在してないゲームと言うのも存在していた。
私の好きで、好きで、好きで、それはもうハマりにハマったとある乙女ゲームもその一つ。
ちなみに『ガーデンティーパーティー』じゃなくて別のやつだけどね。
つか超身近でリアル化した今、絶対話せないしwww
まあ、それがさっきちらっと言った『朧雪櫻鬼譚』なんだけど。
メールには、多分学生であるこちらを気遣ってくれたのだろう、『時間のある時に連絡ください、出来れば至急!今すぐ話したい事があるの!』とだけ書かれていたので、再び皆に許可を貰って席を外す。
少し離れた花壇のそばで電話をかけると、その内容は先日妄想交じりに語りつくした『朧櫻鬼譚』が無事会議を突破して製作される運びとなった、という話だった。
これで盛り上がらない訳が無い。
「それで!?絵師は!?声優は!?」
『まだ検討段階ではあるけど、抑えにかかってるわよ~』
「ふおおおおおおおお!!!マジっすか!?マジっすか!?あ な た が 神 か !!」
ひとしきり熱く語り、めいっぱい感謝の言葉を述べ倒して電話を切った私は、物凄くにやにやしながらテンション高く席に戻った。
「どうしたのー?」
「何かあったのかな?」
「櫻ちゃん、大丈夫?」
友美、大丈夫の意味が分からない。
しかし、しかしっ!!今この状態で「何があったの?」なんて聞かれたら、止まる訳無いじゃないか東雲君も観月先輩も!!
「聞いて下さいよ2人共!!私の大大大大大ッ好きな乙女ゲームが出るんです!!」
一瞬で引いた空気にも気付かず、私は冷めない熱に任せて語り始めた。
「あのゲームはちょっとクセがあるんで万人向けとは言い難いんですけど、でもキャラクターもシナリオもすっごく良いんですよ!!全編切なさクライマックスって感じで!!史実を元にしたファンタジートリップ物のせいか、突っ込み所も多々あるんですけど、でもでも、そんなの萌えの前には全ッ然!!」
勢い良く首を横に振る。
振った首に纏わり付く様に揺れた髪を避けようとしたのか、左右がさらに引いた。
しかしそんな事にはやっぱり気付かず、私はさらに熱っぽく語る。
「特にあの、あの人!メイン攻略キャラクターの中でも一番のメインの人がすっごく好きで!」
隣でガタッと音がしたが、私は気付かなかった。
「あ、シナリオ的には2番手病弱毒舌キャラの現代お持ち帰りエンドが一番ハッピーEDだし好きなんですけど、やっぱりあの序盤だるっとした雰囲気の人が終盤覚醒するのが!!!くあーーー!!」
堪らなくなって、くう~~~っと力を込める。
「その人が好きなの?」
「何言ってんですか当然ですよ当たり前ですよ、じゅてーむ、おんりいすぅぃーとまいはー!永遠の御方、私の太一!!!ひゃっほう婿キター!!!予約いつからですかー!!!ama仕事しろー!!!」
がたんと高らかに腕を上げ、IYHのポーズで立ち上がる。
テンションがハゲ上がった私は気付かなかった。
その最後の質問が、誰によってなされた物なのかを。
「櫻ちゃん、櫻ちゃん」
つんつん、と控えめに袖を引かれる。
引かれた方向を見ると友美だった。
叫んだ格好のまま、半開き状態の口を閉じる事無く友美が指し示す方向を見やる。
「あ」
やべ。
「櫻、婿って何」
目の前にいたのは誰あろう、
「その話、kwsk」
久々にブラック降臨した、私の彼氏さんだった。
それはもう超絶不機嫌になった彼氏さんに謝り倒して、拝み倒して、何っとか購入阻止だけは免れる事が出来た。
せめて買うだけでも!いっそ積んでも良いから買うだけ買わせて!と言ったら、必死すぎな私に引いたのか、プレイの許可も出た。
ただし条件が。
「そのゲームするときは“必ず”俺と一緒にプレイする事。まさか人様に言えない様なゲームプレイするつもりじゃないだろ?」
……まさかの羞恥プレイだったでござる。
いや、こういうのは1人でやるもんだろ!?
確かにテキスト追ってくだけの読みゲーだから、一緒にプレイっつってもシミュよりはダレないだろうけど!
彼氏と一緒に乙女ゲームとか、どんな苦行だよ。
半年ほど過ぎて、いよいよ例のゲームの発売日がやって来た。
私の手元にも今、そのゲームがある。
半年経ったし、例の一緒にゲームしようの約束なんて向こうは忘れているだろうと思っていたのだが。
(ゲームしたいから)しばらく早めに帰りたいと、それとなく希望を伝えた所、
「何言ってんの、忘れるわけないでしょ。篠原家寄ってから帰るから、POPとソフト持ってきて」
覚えてた……。
去夜君家はPOPをテレビに映せるので、色々接続して起動させる。
ふおおおおお、大画面で『朧雪櫻鬼譚』プレイできるとか……いや待て自分、背後には例のあの人がいるんだぜ、騙されたらあかん!!
「ふーん、何この厨二設定」
文句あるなら見るな!減る!!
パッケージの裏の説明を読みながら呟いた去夜君に、心の中で盛大に悪態ついて、私はスタートボタンを押した。
共通パート1
現代から過去の都にタイムスリップした主人公、名取千月流。
とある特殊部隊の巡回に巻き込まれ、不審者として拉致られる。
現代の服を着ていた主人公は厳しく取り調べられそうになるが、何とかして幹部十数人の包囲網の中からの逃走を図る。
しかしその時目の前に現れたのは、故あって部隊に確保されていた男装の少女。
故郷が壊滅し、ただ人として育った彼女の血は、実際にはこの時代でさえも稀な“純粋な”“夜叉”の物。
彼女こそ主人公の先祖であり、主人公と同じく『龍の神子』であるもう一人の“ちづる”、雪宮千都留であった――――――。
彼女は決意する。
この世界の守護神である『龍』と呼応する“ちづる”と呼ばれる少女を狙う異人、夜叉の一族から彼女と彼女の運命の人を守り、必ずや幸せな道を示す、と。
―――それが例え、自らの血、同胞を敵に回す事になったとしても。
その為に彼女が選んだのは、千都留のそばにいる事。
影武者として同じ男装をし、違和感を減らす為に自身の事を「ボク」と呼ぶ事だった。
彼女が未来から持ち込んだ大切な持ち物は3つ。
1つは薬。
ここに来る直前に祖母から預かった、この時代では不治の病とされる病気の特効薬と、千月流の秘密にも関わる薬の2種類。
もう1つは携帯音楽プレイヤー。
しかしこれは、きっとすぐに動かなくなってしまうだろう。
最後は小太刀。
先祖から受け継いだ由緒正しいその刀は、大切に保存されていても年月には勝てず、持ち手の部分が少し痛んでいた。
そしてこれはあの千都留の持っている小太刀と同じ物。
そのものであると言う事を、千月流だけが知っていた―――
「ひゃあああwwwあーwwwかっこいいわーwww」
「痛い痛い、叩くなって。つか、色々ツッコミ所満載なんだけど」
「いやいや、そりゃパッケ裏のあらすじ読んだ時から分かってた事でしょうが。こういうのはハマったもん勝ちなんだよ!」
「…………」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
色々混ざってます。
共通パート2
雪が降り積もった翌朝、千月流は喜声を上げた。
『きゃあああ あ あ あ あ あ、 とうっ』
声を上げて駆け出し、縁側から雪にダイブ!!
『あはははっ、あははははっ』
彼女は雪が好きなのだ。
それは、とある事情から親元を離れ、北の大地で祖母に育てられた為であり、彼女にとってもはや故郷と呼べるほど長い間住んでいたせいかもしれない。
そこへ通りがかったのは――――――
いくら男装しているとはいえ、いらぬ騒ぎを起こさない様、2人の“ちづる”は自由を制限されていた。
監視していた彼らと雑談していたら、その話の流れで気晴らしがてら小太刀の練習に付き合ってくれる事になって―――
『ハァ!?何で抜刀術!?牙突じゃないの!?あり得ないんだけど!!』
『な、何だ急に』
『つうかさ、髪の縛り方からして完全にキャラ違うじゃん!!何処の人斬りリスペクトだよ!』
『何の事だか分らんが少し落ちつ…』
『こいつ偽物だー!!!悪い奴だーーー!!!』
『おいっ!?』
千都留はおろおろ、もう一人はゲラゲラ笑っている―――
「うわあ、このネタ覚えがあるんだけど……」
「あー、これは俺も分かった」
「いや、ネタ元の話じゃなくて、……前に“中の人”とそういう話した事があるな、って」
「それって……。いや、……ていうかさ」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
雑談ネタが多数収録されていた模様。
時代考証的に“牙突じゃない”と突っ込む所がむしろツッコミ所。
共通パート3
部隊の巡回に付き合う2人の“ちづる”。
千都留は探し人の為にこの部隊を頼ったのだが、そこへ予想外の人物が―――
天気のいい昼下がり、布団を取り込んでいる内に気持ち良くなってついうとうとする千月流。
誰かが去ってゆく気配に、子供の頃の記憶がフラッシュバックする。
慌てて飛び起きた。
『ごめんなさい!ごめんなさい!良い子にするから置いて行かないで!!』
思わず服を掴んだその相手は――――――
花街で宴会をしていた部隊。
しかし、元々体のあまり丈夫では無かった千月流は、大勢の人の熱気で気分が悪くなってしまう。
千都留を信頼できる人(選択制)に託し、席を離れる千月流。
小用を済ませ戻る際、人気の無い部屋を見つけた千月流はこっそり忍び込む。
人気の無い部屋は静かで涼しく、彼女はそのまま倒れ込む様に横になってしまった。
そこへやって来て相手をしてくれたのが―――
城を守る任務に就いた部隊。
そこへついに夜叉達が“ちづる”を攫いにやって来る!
一触即発の雰囲気の中、現れたのは伝令を頼まれたもう1人の“ちづる”
混乱する夜叉達を見て状況を理解した千月流は、小太刀を抜き、夜叉と対峙する“あの人”との間に割って入った―――
『ボクだって、“誇り高き狼”の血を引いてるニンゲンの1人だ!』
満月を背負いそう啖呵を切った千月流は、髪の色、瞳の色を目まぐるしく変え、敵を圧倒して行く。
しかし何故か彼女は決着がつく前に、呆然とするもう1人の“ちづる”を抱え、その場から離脱した。
『こんなセカイ、大っキライ』
そう言い残し、まるで瞬間移動の様にその場からふっと掻き消えたのだった。
その夜、ついに発作が起きてしまう。
月に一度来るその発作は、確実に千月流の命を削り取ってゆく。
彼女は知っている。
この部隊には異国の鬼―――吸血鬼の血を飲み、人で無くなった者達による不死人の軍隊が存在するのだという事を。
彼女は隠している。
未来において、その吸血鬼の血を完全に中和する薬が開発され、その内の1本は今、彼女が常に持ち歩いているのだと言う事を。
しかし彼女にその薬は効かない。ただ抑えるだけだ。
何故なら彼女は、人と、夜叉と、吸血鬼の3つの血が混ざり合った、生まれながらの混血児なのだから――――――
発作に苦しむ彼女の前に現れたのは―――
20までは生きられないと言われた彼女が選んだ道は、滅びに向かう夜叉の一族、その前頭領の遺児であり、『龍』の声を聞く神子『陽の神子』であるもう1人の千都留、彼女を守り、彼女の選んだ人物との幸せな未来を保証する事。
それはきっと、未来を知る――――――そしてまた『陽の神子』の対、『陰の神子』である自分にしか成し得ない。
その為には――――――
都での『龍』の召喚に失敗した2人の“ちづる”は、部隊と共に、追われて行く様に北上する事となる―――
「つくづく、厨二……。こんな設定にしちゃって、ちゃんと風呂敷畳む気あんの?」
「文句あるなら見ない!」
「はいはい。んで?さっきから何やってんの?」
「セーブデータの整理中。こうしとけば個別ルートに進む時、一々共通のとこスキップしなくて済むからね」
「……そんなゆとり仕様で面白いか?」
「っるっさい」
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QセーブとQロード、巻き戻し機能付きは基本。無いとむしろ怒られるレベル。
テンション上がり過ぎてまさかの3分割(笑)
こんな感じで後2話続くんで、興味無い方はスルーしてネ☆