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VSご両親!(後編)

加糖牧場(イミフ)

 応接室に案内され、ソファーに差し向かいで座る。

「結局何の話だったんでしょう?」

 気を使わないで下さい、などの細々としたやり取りの後、直球で聞いてみた。

 結局あの場所では結論は言い渡されなかったからな。

「新しい彼女を見てみたかっただけじゃないかしら」

「え?あの、それだけ、ですか?別れさせるとかは?」

「無いわよ。あの人にそんな非生産的な行動、期待するだけ無駄だわ」

 優雅な所作で紅茶を飲むお義母さん。言ってる内容はアレだが。

 うあー、まさにゲ○ドウちっく。


「事情を知っている、って言ってたわよね。なら話が早いわ。私達が再婚な事は知っているのよね」

「あ、はい」

「その頃彼が付き合っていた彼女の事も?」

「はい」

 あ、そっか、実際に別れたのは卒業式の日だっけ。

 周りから見たら、それまでは付き合ってた事になるんだ。


 話の流れでちょっと突っ込んで聞いた事があったけど、彼女の本音を知った後はまともに相手する気も起きず、最後の方はもうほとんど放置状態だったらしい。

 モトカノさんの方は、雰囲気悪くなった去夜君に悪態つく事はあっても、とうとう最後まで自分から別れようとは言わなかったとか。

 …………どーなんだろうねー、コレ。んー?(暗黒面)


「あの頃の去夜君、家の事で相当荒れていてね。さっきみたいに父親と口論もしょっちゅうだったの。その時、付き合っている女の子の事も少し口にして……」

 えっと、て事は何か、前の彼女の事があるから私の事もリサーチしよう、と?

「つまり…、ああ見えて心配してた、って事ですか?」

「そんなとこよ」

 お義母さんが苦笑する。

 がっくり。でもちょっとほっとした。


「お父様はきっと、少し不器用な方なんですね」

 苦笑してそう言うと、存外硬い声が返って来た。

「器用な男は家の為に結婚しないわ」

 え?

「外からだと泥沼に見えるかもしれないけど、実際には円満離婚だったのよ。最初から別れる前提で、あの人と去夜君の母親は結婚した。予定では10年の筈が、結局4年近くも延長になってしまったけどね」

 えー!?

「私とあの人は幼馴染で、その流れで付き合っていたのだけど、家同士の都合という結婚は回避できなかった。……あの人に頭を下げられたのは、後にも先にもあの時だけだわ」

「……お互い別に好きな人がいて、それでも家の為に……、ですか」

 重ッ!!

 でもそっか、お互いに愛人がいたんじゃなくて、最初からそう(・・)だったのか。

 うわあ、去夜君の過去を初めて(・・・)(この場合『友美が(・・・)』、になるのか)詳しく教えて貰った時も吃驚したけど、今回のはさらにその上を行ったよ!

 白樹家の家庭の事情は、現在の去夜君を形作る要因の半分にあたる。

 そんな重要な要素に、ゲームの終わった今になってこれだけ新情報が出て来るって事は、2次元時代に(実際のゲームで)は相当端折られていたって事なのかな。

 いや、あれはあくまで去夜君サイドから見た場合の状況だし、それが真実の全てでは無かった、ってだけの事なんだろう。

 まさかこんな風に、後出しで真実のさらに真実を知る事になろうとは。

 ゲームが現実(リアル)って、本当はコワイ事なんだ…。


 ここん()だけでも、こんだけぼろぼろ出てくるなら、他の家でもきっとゲーム内では明かされない真実がぼろんぼろん出て来るに違いない。

 …………今度手始めに友美から空条の内情こっそり教えて貰おうかな。(ぼそっ)


「貴女みたいな若い人には理解しがたいかもしれないけどね」

「いえ、……私も社長の娘ですから、そんな事もあるだろうと理解は、出来ます」

 親の判断で見合う事も、そのまま結婚する事も、無いとは言わない。

 上に立つ人間は、私生活でも社の利益を無視出来ないから。

 それは、小さい頃から両親の様子を見ていれば嫌でも良く分かる。

 白樹家と状況は違えども、父が、母が、時には祖父でさえ、私を殺して社に尽くし、家庭を顧みられなかった事を悔いているのを、私は良く知っていた。

 何度も聞いた「ごめんね」の言葉。

転生経験者(わたし)ならともかく、幼い頃の弟妹には辛かっただろうと思う。


「あら、ふふ」

 小さかった頃を思い出しながら真面目に答えたら、何故か笑われた。

 と言うか、こんな重い事情、本当に聞いちゃって良かったのかな?

「良いんですか?部外者の人間にこんな話して」

「……貴女には事情を知っておいて貰った方が良いと思ったのよ」

 その微笑みは、私の事認めて貰えた、って事なのかな。

 早計な判断は危険だとは思うけど、少なくとも勝手に他言しない人間だと信用して貰ったって事で良いんだよね?


「事情が事情なだけに、いくら昔からよく顔を合わせていたとは言え、去夜君にとっては余程ショックだったんでしょうね。あの人はあの人だから、あんな調子で碌に説明もしないし…」

 あ、愚痴モード入った。さすがのお義母さんも、お父さんのあの性格には手を焼いているらしいと知って、少し可笑しくなってしまった。

 “ゲ○ドウ”ならしょうがないよね、だって“ゲン○ウ”だもの。(納得)

「去夜君も、ああ見えて夢見るタイプと言うか、理想を追い求める様な所があるでしょう?だから「潔癖すぎるのは辛いわよ」って言ったんだけど」

 リ○コさん!!


「それにしても、随分しっかりしてるのね。去夜君にはもったいないくらいだわ」

 妙な事を言い始めたお義母さんに、慌てて手を振って否定する。

「甲斐被りですよ!私より出来た人はたくさんいますって!」

「そんな事無いわ。貴女の年代でそれだけ出来る人は、中々いないわよ」

「そう、ですかね?」

 いやー、ティーパーティの先輩方見てると全然まだまだだなあと思うし、私のはほら、正直前世云々からのハリボテも良いとこじゃないですか。


「ええ。調べさせて貰ったけど、成績優秀、品行方正、何事においても熱心で努力家、人脈にも恵まれている…いえ、それも努力の結果かしら?」

「誰の話ですか誰の。人脈は偶然、友人のおまけ程度です」

 友美がいなかったら多分こんな風にはなってない。

 成績は就職絡むからともかく、友人関係は外面保てるだけでいいや、ってなってただろうし。

 あんなキラッキラした人達、自分だけなら近寄ろうともしないだろう。

 例え知識があったとしても、それこそ遠くから見てキャーキャー言っていたに違いない。

 もしも友美と出会わなければ、なんて、考えたくも無いけれど。


「それでも認められるには十分よ。ちなみに将来の夢、なんて物はあるの?」

「具体的には。良い大学行って良い企業に就職が第一目標です」

「……それは親の希望?それとも」

 良く言われるんだよねー、親に押し付けられてないかって。本気なんだけどなあ。

「全部自分ですよ」

 苦笑した。


 そこから先の話の内容は、あんまり思い出したく無い。

 そう、いつの間にか普通に面接と化していたのだ。

 志望大学の話から始まって、資格に就職先の予定、結婚観。

 ああ、胃がしくしくするしくしくする。

 なんとか平静を保っている顔の皮膚一枚下は、冷や汗だらっだらですよ!

 鉄面皮とか、顔面硬直してるって良く言われる私だけど、ここまで本当に固まってるのは久しぶりだっつの!!

 やめて!私のライフはもうマイナスよ!

 ごめんなさいごめんなさい、生きていてごめんなさい、薄っぺらい人間だって事が露呈するからもう止めてえええええ!!


 ちなみに就職は、近くのデパートで大変お世話になった某店員さんの後輩目指そうかと考え中、って言ったら、家柄的に釣り合い取れないから、白樹の会社(こっち)に来ないかって言われた。

 えーと…、社交辞令、だよね?




「櫻、帰るよ!」

 ばーん、と派手に扉を開けた去夜君がずかずかと部屋に入って来た。

 うっわー、まだ怒ってるよ、これ。

 宥めながら帰るのかー。面倒だなあ。

 まあ、事情については完全オフレコとして、ご両親のフォローくらいはさせて貰いましょうかね。

 実際嫌な事された訳じゃないし、やっぱり親子で空気悪いのを端から見ているのも、ちょっとこう、切ないじゃないですか。

 とりあえず言うだけ言って、どうするかは本人達任せで良いんじゃないかと思う。

 私は友美と違って、がっつり介入して誤解が解けて大団円、なんてとこまで手を貸すつもり無いし。

 だって他人(よそ)ん家(以下略)


 そんな去夜君の様子を気にとめた様子も無く、お義母さんが立ち上がってこっちを見たので、私も席を立つ。

「終わったみたいね。良かったらまた顔を見せてちょうだい」

「あ、ハイ是非。……機会があれば」

 とは言え、勝手にこっちまで来る事も無いだろう。

 本当に『機会があれば』だ。


 エントランスでご両親に見送られ、会社の車で去夜君の家へ帰る事になった。

 あのう、お二人共、完全に中座しちゃってますけど、お仕事大丈夫ですか?


 車に乗る直前、お義母さんがこっそり耳打ちして来た。

「白樹の男達は皆不器用だけど、一旦目を付けた物への執着心だけ(・・)は人一倍あるの。だから……、気をつけなさいね」

 ひい!?何それこわい!

 そんな忠告、心底いらなかったッスから!!




「おーい」

「……」

「もしもーし」

「……」

 去夜君の家に戻って来てからずっとこんな感じだ。

 人の後ろから抱きつく、と言うか、ひっついて離れやしない。

 あんまり遅くなると小父さんがまた五月蠅いぞ?

 そう軽く脅しを入れて見ても、去夜君は無言で腕に力を入れるだけ。

 放すつもりは無いらしい。

 お義母さんの話を思い出して、執着ってこういう事かな、とぼんやり考える。

 去夜君自身、実際にどうだったのかはともかく、お父さんと話して思う所があったんだろう。

 件の親子対決が精神的にきつかったのなら、こういう所で癒しを求めるのも仕方ない。

 私は、この人の癒しになれてるかな?


「……しょうがないなあ」

「……」

「大丈夫。そばにいるから。離れたくないと思っているのは、私も同じだよ?だから、大丈夫」

 ぎゅっと抱きしめて来る去夜君を、ぎゅって抱きしめ返して微笑んで見つめる。

 誰かに抱きつくのが、こんなに嬉しくてこんなに幸せな感情を呼び起こすなんて、今までの私はちっとも知らなかった。

 にこにこしながらひっついていたら、「どこにも行かない?」「行かないって」の応酬の後に顔が近づいて来て……。


 口付けの予感に、私は静かに目を閉じる。

(今からキスする、って雰囲気が分かる程度の能力とか、今までの自分にはありえないスキルだわ)

 心の奥の右斜め下方向の一部で、そんなツッコミを入れながら。



 去夜君が帰りの車内でずっと、ぎゅって肩を抱いて密着して来たり、家に戻ってからもべったり張り付いて離れなかったりした理由が、父親に、

央川櫻(アレ)白樹去夜(おまえ)がいてもいなくても生きていける人間だ」

 と、妙な焚きつけられ方をされたせいだと知るまでもう少し。




 そして…、


「あの子、いい子ね」

「……ああ」

「あの子、欲しいわね」

「……ああ」


 エントランスで私達を見送った後、そんな会話が合った事を、


 将来お義母さんの部下になり、仕事を覚えると言う名目で央川家公認の企業的花嫁修業が始まる事を、





 この時の自分はまだ知らない。







おまけ


面接内容その1

ままん「ご両親は外に出て働く事を了承しているの?」

櫻  「え、……聞いた事無かったです。(盲点)……一度、確認取った方が良いんですかね?」

ままん「しておいた方が良いんじゃない?もしかしたら一緒に働きたいと思っているかもしれないもの」

櫻  「……今日帰ったら、電話しよう…」(やっちまった感)




面接内容その2

ままん「そこまで考えているなら、将来結婚する事についても当然考えているのよね?」

櫻  「いえ、さすがにそこまでは。とりあえず就職して子育て出来る環境が整ってから、とは思っているんですけど」

(中略)

ままん「……本当にしっかりしているわね。ちなみに相手は?やっぱり去夜君?」

櫻  「さあ、どうでしょう。あんまり実感湧かないんですよね。なにしろ当分先の事ですから、正直考えた事無いです。それに、今からきっちり計画立ててても、3年、5年経つ頃にはもしかしたら別の方とお付き合いしている可能性だってあるわけですし。まあ、努力はしますが。後、身内から見合いの話が出る事も考えられますね。こちらはよっぽどの事が無い限り、父が私の意見を尊重してくれると信じていますが」

ままん「…………しっかりしすぎてる、って言うのも考えものね。これは去夜君、相当頑張らないと………。………根回し、必要かしら…?」


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

こんな会話を30分。


央川櫻 将来の夢、バリキャリ。(母の背中を見て育ったから、と言うのがその理由)


白樹母 白樹(中略)本社秘書室室長。リツ○さん。


白樹去夜 隠れドジっ子キレデレ


白樹父 ゲンド○+マジカス-カス成分


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