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プロローグ

「ねえ、なんで、ずっとひとりでいるの?」


 その女の子は突然、すみっこの方でひとり、すわりこんでいたわたしに話しかけてきました。


 さらさらした、きれいな黒い髪の女の子でした。


「みんなといっしょに、あそばないの?」


 その女の子は、ひとりぼっちだったわたしに、一生懸命お話ししてくれました。


 でも、わたしは首を横に振って言いました。


「・・・・・・みんな、わたしといっしょにいるとけんかしちゃうの。だから、いいの」


 本当は良くありませんでした。


 だってみんなが一緒に遊んでいるのに、わたしだけひとりぼっちは、やっぱり寂しかったから。


「うーん、みんなきみといっしょにあそびたいだけなんだろうけど、そっかあ、けんかしちゃうのかあ」


 女の子は首をかたむけ、腕を組んで、一生懸命考えているようでした。


「けんかしちゃうのって、おとこのこたち?それともおんなのこ?」


「・・・・・・えっとね、さいしょはみんな、なかよくあそぶの。でもね、そのうち、おとこのこたちの、だれが、わたしとあそぶのかでけんかしちゃって、そしたらこんどは、おんなのこたちがわたしはずるい、って。わたしばっかりおとこのこ、ひとりじめしちゃうから、みんなとなかよくできないこは、いけないんだよ、って。だからみんな、わたしとあそんだらだめ、って」


「・・・・・・それって―――」


 女の子が、誰の事を言っていたのか、今となってはもう思い出せません。


 でも、その子が、


「―――ちゃんは、じょおうさまだからね」


 しかたないね、と、肩をすくめて言っていたのは覚えています。


 同じくらいの歳なのに、そのしぐさはとっても大人びていた様に見えて、それがやけに印象的でした。


「うーん、でも、わたしはきみとあそびたいな」


 だめかな?と首をかしげて女の子は聞いてきました。


 嬉しかったけど、またどうせきっと喧嘩になっちゃうのでしょう。


 わたしは、悲しくなってうつむいてしまいました。


「あのね、―――ちゃんのは、てした、とか、げぼく、とかいうんだよ。ともだちじゃないの。・・・だからね?がまんするのもえらいけど、こーいうときは、あそびたいなら、あそびたいって、いっていいんだからね。そしてわたしはそんなきみの『はなしあいて』・・・じゃなかった、『ともだち』になりたい」


 なぜか胸を張って気取った風に言ったその言葉は、わたしにとって、とても嬉しいものでした。


「おともだち・・・?」


「そうだよ?それにね、きっとみんなも、きみとなかよくしたいと、おもってるとおもうの」


「・・・そうかな」


「そうだよ!だからね、みんながけんかしちゃうなら、わたしがぜったいとめてあげる。きみのこと、わたしがまもってあげるから、こわくない。だいじょうぶ、だいじょうぶだよ」


 なぜか2回言いながら、一人で頷いていました。


「・・・・・・」


 女の子なのに、そんな風に言ってくれる子はその子が初めてで、わたしはとってもびっくりしてしまいました。


 強くてかっこよくてきれいで、着ているお洋服もかわいくて、その子のお友達になれるのはとっても素敵な事の様な気がしました。


「あっ、おねえさんせんせいがよんでる!いかなくちゃ!」


 スタジオのお姉さん先生が子供達を呼んだので、わたしたちは行かなくちゃいけません。


 せっかく一緒に遊べそうだったのに、と、再びわたしはうつむいてしまいました。


 でもその時、すっ、と目の前に手がさしのべられたのです。




 その時その子がどんな顔をしていたのか、本当はもう、よく覚えていません。


 でも、その口元が優しく笑っていた事だけは、とってもよく覚えています。



「いこう、いっしょにっ!」



 気が付けば、わたしは彼女の差し出した手を取り、ぎゅっとにぎって立ち上がっていました。





 こうしてわたしと彼女は、ずっと一緒の「ともだち」に、なったのです。













 高校の入学式、あの屋上へ行った事がわたしの『運命』なら、




 この出会いこそがきっと、




 『全てのはじまり』





今回もよろしくお願いします。

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