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2ー6 しごくとうぜんのげんじつ



「意義系統、共有属性………」


 メルギス様が仰った私の属性を、噛み締めるようにして繰り返します。

 不思議な事ではありますが、これがどんなものか、何となくながらに解るのです。

 感覚的なものなので口で説明するのは難しいのですが………一つのものを複数で使うもの、と言った感じでしょうか?


「属性は大まかに三つの系統に分けられていてね。

 その中でも意義系統は特に珍しい属性だよ」


 その言葉に胸が跳ね上がるのが解ります。

 特に珍しい、その言葉は、何処にでもいる凡庸な人間である私にとって、非常に心惹かれるものでした。

 希有、稀少、特別、別格………それは平凡な人間であれば、誰もが憧れる言葉であるはずです。

 しかし期待に胸が膨れるのも、メルギス様の次の言葉を聞くまでのことでした。


「…………まあ、珍しいだけなんだがね」


「はい? 珍しいだけ、ですか?」


「希有である、稀少である、だからといってそれが有用とは限らない、という話さ」


 は? え? それは一体、どういう意味なのでしょう?

 困惑を露わにする私に、メルギス様はゆっくりとした口調で説明をして下さいます。


「残りの系統である身躯系統は、肉体と五感に作用する魔法だから日常生活での使い道も多いし、

最後の一つであるところの感情系統も自制って点で非常に役立つ属性ではあるんだ」


 膨らんでいた期待が、徐々にですが萎んでいくのが自分でも解りました。

 話の流れからして続く言葉も想像できてしまい、気持ちも微妙に落ち込み気味です。

 きっと次にメルギス様が仰るのは、こんな旨の言葉でしょう。

 意義系統は、生活する上での使い道が殆どない、と。


「対して意義系統は実社会における用途が殆どない。

 なんせ、社会自体が意義系統の運用を想定していないくらいだからね」


 私が考えていた以上の否定が来ました。

 なんですか、有用性云々以前に社会自体が運用を想定していないって!

 使い勝手が悪いとか、使い道がないどころの話じゃありませんよ!?


「意義系統持ちが少ない上に、多様性があって応用性が乏しいからね。

 供給がないから需要が無く、代替が効かないから当てに出来ないのさ」


 ………わぁ、納得。

 絶対数が少ない上に種類が多様だから、求めるものが望んだ時に存在しているとは限らない。

 更には一つの用途以外にはほぼ使えず、取り替えも利かないから、何かが在ったら仕事が回らなくなってしまう危険性がある。

 これは求める人がいないのも当然です。

 特別であったり、希有であったりするものの多くは、社会では役立たないもののようでした。何とも世知辛い。


「そもそも習熟が難し過ぎて、実用段階まで持ち込める人間が滅多にいないってのも原因だがね」


 え、ちょっとそこのところを詳しい説明をお願いしたいです。

 難し過ぎて実用段階まで持ち込めないとか、一体どういうことなのですか。

 私の表情を読み取られたのか、説明を求めるよりも早くメルギス様が言葉を紡がれます。


「意義系統持ちが少なくて、多様性に富んでいるが故の問題だね。

 言ってしまえばさ、教えられる人間も、参考に出来る先達もいないのさ。

 身躯系統なんかは体を動かしたり、物を見ることに関連する系統だから習熟は容易だからね。

 感情系統も、自身の感情に関わるものだから、自身に作用させる限りは、よっぽど特殊な物じゃない限りは習熟難度は低い。

 けど、意義系統は独力独学で意義なんていう、形のないものを操れるようにならないといけないからね」


 身躯系統は体を動かしていれば勝手に習熟していくし、周りにも参考にできる相手が多い。

 感情形動は自身の感情に関するものだから、比較的容易に習得できる。

 意義系統は……形のないものを一人で捏ねくり回し続けなければならない。

 なるほどなるほど。

 ………………どうしようもないんじゃないでしょうか、これ。

 というか………。


「あの、もしかしなくても私が魔法を使えるようになった意味ってないのでは…………?」


 意義系統を習得しようという意欲が沸き上がる筈もなく、落ち込んだ気持ちのままにメルギス様に問いかけます。

 まあ、でも、所詮は農家の娘です。そんな希有で役立つ属性なんて持っている筈なかったのです。

 そもそも奴隷ですし。例え稀少で強力な属性を持っていたからと言って、何かが出来るわけでもなし……。


「そうさねぇ……。

 お前さんの属性を明らかにしてから、私は言葉を選ばずに説明してきた訳だが、おかしいと思わないかい?」


 その言葉に首を傾げ、はたと気がつきます。

 有用性とか供給とか需要とか絶対数とか多様性とか……なんで私はこんな言葉を知っているのでしょう?

 私の語彙は、こうまで多くはありませんし、今、用いた語彙という言葉すら私は知りません。

 だというのに、私はその言葉を知っています。

 知っているのに知らず、知らないのに知っている。頭がこんがらがってしまいそう。


「知らない言葉を知っているのですが……メ、メルギス様、これは一体?」


「魔法の力だよ。

 効果として出ているのは、言語分野に限った知識共有ってところかね」


 言われて、なるほど、という納得を感じます。

 普段であれば、言葉の一つ一つの意味を訊いて暫し考えなければ答えはでなかったでしょう。

 しかし、今の私はメルギス様の持つ言葉……というよりは単語でしょうか。

 それに関する知識を一時的ながら有している為、一々訊くこともなく、考えも滑らかになり、速やかに答えが出せるのです。

 いやぁ普段の無知蒙昧加減が際立ちますね。言葉を知っているというだけで、考える速度に違いが出るのには驚きです。


「意義系統は応用性に乏しいが、非常に強力だ。

 それこそ方向性を持たずとも、魔術並みの効果が出る程度には」


「でも、使い所はないのですよね……?」


 私の言葉に、メルギス様は無言で頷かれます。

 躊躇いのないその仕草から、本当に使い道がないであろう事が読み取れます。

 ですが。


「この魔法のおかげで言葉が理解できてますし、使い道がないということは無いのではないでしょうか?」


 私は言葉を知らず、それ故に会話にすら苦労して……いえ、面倒をかけてきました。

 しかし今の私は、言葉について訊くことで話を阻むことなく会話が出来ます。

 それは当たり前の事かもしれませんが、その当たり前のことが魔法によってできるようになったのです。

 ですから、私の魔法は例外……とまでは行かずとも、少なくとも使い所の多いものなのではないか、そう思うのです。

 そう考える私に、メルギス様は緩やか……と言いますか、生温かい笑みを浮かべて言いました。


「雷霆、雲耀、蒼穹、雲霞、視地平………これらの単語の意味はわかるかい?」


 はい、と頷きます。

 今の私は、メルギス様の保有する単語知識を持っていますので、メルギス様が知っている単語は全てわかります。

 雷霆とは激しい雷、雲耀とは1回の脈拍の8000分の1のこと、蒼穹とは空気が澄み青々とした空、雲霞とは雲と霞、視地平とは目に見える地平の限界です。

 それがどうしたというのでしょう?


「じゃあ、魔法を閉じてごらん」


 魔法を閉じる、と言うのは、要するに魔法の使用を止めると言う事です。

 ……単語や言い回しが解ったところで、それのやり方までは解りません。

 こういうところは不便ですね………。


「開け放たれた扉を閉める所を想像するといい。自らを閉ざすのだと強く意識するんだよ」


 戸惑っていた私を見かねたのか、メルギス様がそう助言を下さいます。

 言われた通りに、体を閉ざすのだと強く意識しながら、開け放たれていた扉を閉める所を想像します。

 すると、本当に何かが閉じる感覚がして、それと共に満たされていた何かが消え失せる感じがしました。


「さて、魔法は閉じたね。

 なら、先ほどの五つの単語のうちの一つでいい、説明してごらん」


 五つの中で一番簡単そうなものを選んで口にします。


「はい、アレとはアレでアレなあれぇ!?」


 いやアレはアレなのにあれ? あれ、あれ、あれ?

 どうなっているのでしょう。つい先ほどまでわかっていたことがわかりません。

 いえ、正確には、それが何なのか、どんなものなのかぼんやりとは思い返せるのですが、しかしそれを言葉にできないのです。

 何と言えばいいのか………ぼんやりとした霧のようなものを、必死になって形にしようとしている感じ、といいますか。

 まあ、そんな感じです。


「ついでに、さっきまでの私との会話を思い返してみるといい」


 言われて思い返し………ぶわっ、と嫌な汗が全身から噴き出しました。

 話の内容は覚えているのに、会話の中身が理解できないのです。

 何を言っているのかわからないかもしれませんが、正直、私も自分で何を言っているのかわかりません。

 自分の知らない言葉を口に出した事は覚えているのに、その知らない言葉の声の出し方がわからず、自分の使っていた言葉の意味がわからないのに、それを使って行った会話や考えの内容は覚えているという訳のわからなさです。

 なんですかこれなんですかこれなんですかこれ!?

 わけがわかりません。なにこれ怖い。不気味すぎて、もはや何をどうすればいいのかすらわかりません。

 シャーラ(蛇)に睨まれたフローロウ(蛙)のように、身動き一つとれず、嫌な汗がダラダラと流れていくのがわかります。


「お前さんが使っていた単語知識の殆どが私のものだからね。

 魔法による共有が失われれば、そりゃ使っていた言葉が理解できなくなるさ。

 なんせ、元々は知らず使えぬものなんだから」


 要するに、借り物の知識で言葉を用いていた私は、それを返した事で借り物を使えなくなったという事なのでしょう。

 しかし疑問は残ります。

 自分が使っていた言葉が理解できなくなる、言葉の発音方法がわからなくなる、というのはわかります。

 ですが、会話の内容を覚えている……というより、理解しているのは何故なのでしょう?

 メルギス様の知識を元に会話していたのですから、知識がなくなればそれもわからなくなると思うのですが。

 そう質問すると、メルギス様は考えを纏めるためか、悩んでいるのか、数度、右へ左へと交互に首を回してから口を開きます。


「記憶が単語の抜けた書き割り状態になっても、話の内容を理解していることが解せぬと。


 それは、そうさねぇ……使用履歴の関係というのもあるだろうが、それに関しては単語知識を失っても印象と記憶は残るからだろう。

 雨という単語は、空から水滴が降り注ぐ天候、という意味だ。

 雨という単語を聞けば、その光景を思い浮かべる。

 例え雨という単語知識を失っても、自らが思い浮かべた空から水滴が降り注ぐ天候という記憶や印象は失われない。

 そういった印象と自らが元々持っている単語知識が結びついて、会話内容を保持しているのだろうね。


 まあ感覚的に内容を理解していると思えばいいさ」


「な、何となくですがわかった気がします」


 要するに、言葉で会話の内容を覚えているのではなく、言葉によって浮かんだ光景から会話の内容を理解している、という事なのでしょう。

 たぶん、恐らくきっと。

 いや、いんしょう、とか、使用りれき、とか、ちょっとわからない言葉があったので不安ではありますが、あっているはずです。


「そうかい。

 しかし機会があるかは別として、明確な他言語を用いる相手との会話には有用だろうね。

 なんせ、旦那の言葉も理解できてたくらいだしさ」


 ? ご主人の言葉も理解していた、とはどういう事でしょう。

 考えてみますが意味もわからず首を捻ります。


「ん、ああ、――は旦那の国元の言葉でね。私たちの言語には、コレを表す単語はないんだよ。

 だから、この言葉は旦那から教わった人間しか知り得ないのさ」


 ウヨー、でしょうか?。今ひとつきちんと聞き取れない単語は、確かにご主人の故郷のもののようでした。

 思い返せば、先ほど私が聞かれた五つの単語の中にあった気がする響きの言葉です。

 意味? えーと、何か凄い短い、とかそんな感じだったかと。


「魔法であれ、魔術であれ、その場しのぎには使えるが、その場しのぎ以上には使えない。

 日常生活での使用は控えた方がいいだろうさ。


 記憶に歯抜けができすぎると、人格に影響がでるだろうからね」


 あっさりと言われた怖い言葉に、私は僅かに身を震わせました。

 人格に影響が出るかも、ではなく、出るだろう……この違いは大きいと思うのです。


「いえ、その……たぶんですが使わないと思います。

 何の意味もありませんから」


 言ってから自分の失敗に身を竦めます。

 折角、魔法を使えるようにして下さったのにこんな言い方はないだろう、というのが一つ。

 そして奴隷風情に手間をかけさせておいて、意味がないから使わないと言ってしまうのは、相手を怒らせるか、そうでなくとも酷く不快に思われるでしょう。

 ですが、メルギス様は満面の……それこそ包帯越しにもわかるような笑みをお浮かべになりました。


「はは、賢い子だ。それでいいのさ。

 お前さんは、何故、何の意味もないのか解ってはいないだろうが、その答えにも何れ辿り着くだろうね」


 なぜ、何の意味もないのか解ってはいない。

 その言葉が何を示すのかはわかりませんが、不思議と胸に残ります。

 

「ああ、それと魔法が使えないからって落ち込むことはないよ。

 言語や知識は共有という性質を持っている。

 共有の属性を持つお前さんは、属性効果で今後の勉強に関して物覚えがよくなるだろうね」


 さらりと言われた言葉に、目を見開きます。

 属性効果とは、要するに属性による恩恵ことでしょう。

 しかし勉強に関して物覚えが良くなる…………素晴らしい! 助かるなんてものではありません!

 ただこれだけで階段から落っこちた事すらも幸運と思えてしまうほどです!


「メルギス様! 有り難う御座います!!」


「礼を言われることは何もしていないんだがねー。


 さて、魔法使いを目指すなら、三大位階、それに類型貸借法やら過大解釈法に付いての説明を。

 そうでないなら諸々の説明をして終わりにするが……どうするね?」


 その言葉に、私は当然の選択を。

 即ち、諸々の説明を聞いておしまいです。

 もうこれ以上、頭に入りません。三大位階に類型貸借法、過大解釈法……もう聞くだけで頭が痛くなりそうです。














「教えるべきはこんなところかね」


 その言葉に、知らず知らずのうちに入っていた力が肩から抜け落ちます。

 教わったことといえば、それこそ魔法の開き方と諸注意くらいのものでした。

 ちなみに魔法の開き方は魔法を閉じるのの逆で、家の扉を開く感じで世界に対し自らを開け放つ……といった風でしょうか。


「ありがとうございました」


 深々と頭を下げてお礼を言います。

 私のような物知らずの奴隷相手に根気強く教えて下さり、もう感謝の言葉もありません。


「お疲れさん。

 それでお前さんはこれからどうするんだい?」


 えーと……もう今日は仕事がありませんし、すべきことといえば買い物くらいでしょうか?

 身の回りの品を用立てないと、お屋敷での生活が色々と不便ですし。


「取りあえずは布と針に糸、それに短剣と鋏を揃えようと思っています。

 後は……お金が足りるようでしたら履き物でも買おうかと


 ここで問題なのは、私がお金の価値も、物の値段もわからないということです。

 なんせ村では物々交換が基本で、布は女衆で集まって織り、靴などの革製品は猟師さんなどから野菜などと交換で戴いていました。

 行商人さんとの取引がなかった訳ではないのですが、そちらも物々交換ばかりで、お金を使った取引は家長である父の仕事で私が関わる事はありませんでした。。

 父が買ってきたものの値段を口にする事はありましたが、それが高いのか安いのかもわかりませんし。

 なので私がしたことのある取引は、即ち物々交換だけで、お金を使った買い物に関わった事すらないのです。

 …………ああ、いえ、お金を用いた取引に関わった事が一度だけありました。私は商品の側でしたが。


「そうなのかい。なら案内を付けよう」


 はい、案内を付ける……ええ!? そこまでして頂くわけにはいきません

 そのことを慌てて伝えると、メルギス様は呆れるようにして言いました。


「店の場所は疎か、帰り道すら知らない人間をほっぽり出す訳にもいかんよ」


「か、帰り道くらいなら…………」


「解るのかい?」


 ……………………………わかりません。

 私が覚えているのは小屋敷からお役所までの道だけです。

 そこから外れてしまったら土地勘でしたっけ? それがない私にはもう道がわかりません。

 とりあえず、念には念を入れて聞くだけ聞いてみます。


「ここってお役所の一室では………」


「私の診療所……あー、定住した医者の作業場みたいなもんさね。言っておくが役所からは少しばかり離れて居るぞ」


 あ、これは道に迷いますね。考えるまでもありません。


「お、お手数をおかけします………」


 項垂れるようにして頭を下げながら発した声は、消え入るようなものでした。

 頬に感じる熱さは、いい歳をして自分の面倒を見きれない恥ずかしさからくるものでしょう。


「気にすることはないさね。こっちにも目論見のようなものはあるからね」


 目論見とは何でしょう?

 少しの疑問と共に面を上げると、合わせるようにして、この部屋と廊下を繋いで居るであろう扉が、静かに開かれます。

 

「只今戻りました」


 入ってきたのは、見覚えのある女性でした。

 真っ白な外套に袖を通した男性のような格好の、緑かかった黒髪の女性。

 忘れようがありません。先ほど私をお役所前で助けて下さったお人です。

 私に気がついた彼女は、少し驚いたような表情で言いました。


「これは先ほどの、お加減が?」


「い、いえ、ちょっと転んでしまいまして。

 先ほどはお世話をおかけしました」


 階段から落っこちたとはいえず、誤魔化すようにしてそう言います。

 いえ、その、恥ずかしかったのです。馬から下りれず、挙げ句階段から落ちるとか……。

 彼女は、特に疑うでもなく頷きます。


「なんだ、どこかで顔を合わせたか?」


「ええ、役所前で途方に暮れていましたので……まあ手助けを」


 メルギス様の問いかけに、彼女は僅かに肩を竦めて答えます。

 どうやら私がジンライさんから降りられなくなった事は伏せてくれるようでした。

 ありがとうございます、そしてありがとうございます。


「そうかい。なら都合がいいか。

 帰ってきた所をさっそくで悪いがね、この子に町を案内してやってくれるかい。

 物売り通りと役所周りだけでもいいからさ」


「承知しました。屋敷までの道は宜しいので?」


 ちらり、とメルギス様が私の方を見た気がしたので答えます。


「お役所からでしたら大丈夫です。

 そこからでしたら道もわかります」


「そうですか。では、玄関で待っていて下さい。

 白衣を置いてきますので」


 そういって彼女は部屋を後にする彼女を見送って、名乗るのを忘れていたことに気がつきました。

 まあこの後、街を案内して下さるのですから、その時に改めて名乗ればよいでしょう。

 そんなことを考えながら、寝台から足を下ろして突っ掛けを履いて立ち上がります。

 ずっと寝台の上に居たからでしょう、少しばかりふらつきましたが、それだけで、特に体に不調はないようでした。

 そしてメルギス様に向き直り、頭を深々と下げながら改めてお礼の言葉を口にします。


「色々とお世話をおかけしました」


「そんな何度もお礼を言う必要はないさね。

 ま、体の調子がおかしく感じたら、また来なさい。


 お大事に」


 はい、と頭を下げて部屋を後にします。

 廊下に出て左右を見回すと、どちらも曲がり角になっていて見通しが利きません。

 ………これ、右と左のどちらが玄関に続いているのでしょう。





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