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プロローグ
深い森、闇の中。
少し高い少女の声と、不気味な低い男の声が響いていた。
時折少女の声が叫び、黒い鳥がバサバサと茂みから飛び出す。
一二回それを繰り返すと、もう鳥は出てこなくなった。
低い声からは苛立ちの色が見られる。
ついに我慢に限界が来たのか、少女の叫び声の後、轟音が森に鳴り響いた。
その後、少女の声は消え、一方的に低い声が話した。
しばらくそのまま一人で話す。
突然、不気味な笑い声が聞こえた。
何かの交渉でもしていたのか、それは分からない。
少女の声が聞こえることは、もうなかった。