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『餓死寸前の最弱アバターからのサバイバル料理 ~現実世界での完全栄養食に絶望したので、VRゲームで失われた「本物の味」を再現して夢の食堂を開きます!~』  作者: ゆっきー
第2章:「最強の護衛と、夢の食堂の予定地」

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第20話:「初心者の意地と、森のレアスパイス」

 エドとセリアが巻き起こした突風が収まり、ログハウスの周辺に再び森の静寂が戻ってきた。


 「ふぅ、嵐みたいな二人だったね。……さて、私たちは夕飯の仕込みでも――」


 レナが厨房に戻ろうとしたその時、ミレがグッと両拳を握りしめ、真剣な表情で立ち塞がった。


 「レナさん! 私、行ってきます!」


 「えっ? どこに?」


 「お店の周辺です! エドさんやセリアさんみたいに、大きなお肉を狩ってくることは絶対に無理ですけど……私にだって、採集職としての意地があります!」


 ミレは背負った大きなリュックをポンと叩いた。


 「美味しいお肉を引き立てるための、最高の薬草や香草。お塩と一緒に使えるような珍しい木の実……絶対に、私が誰よりもたくさん見つけてきますから!」


 彼女の瞳には、トッププレイヤーたちへのささやかな対抗意識と、「この温かい食堂の役に立ちたい」という強い決意が宿っていた。


 「……ミレ」


 レナは少し驚いたように目を丸くした後、ふわりと優しく微笑んだ。


 「ありがとう。でも、一人じゃ危ないから一緒に行こう。パピーも護衛してくれるしね」


 「わんっ!」


 足元でパピーが頼もしく吠える。


 こうして、最弱の料理人と初心者の採集者、そして幻獣の子供による、安全第一のほのぼの食材探求ツアーがスタートした。


 ログハウスから少し離れた、陽の当たる森の斜面。

 ミレの『採集眼』のスキルが、ここで遺憾なく発揮された。彼女には、ただの雑草の群れの中から「価値のある植物」だけが光って見えているのだ。


 「あ、レナさん! これを見てください!」


 ミレが泥だらけになりながら掘り起こしたのは、ゴツゴツとした木の根元に群生している、赤黒い小さな実だった。


 「これは……?」


 レナがその実を一粒手に取り、指先で少しだけ潰して香りを嗅ぐ。


 「――ッ! ミレ、これすごいよ! 現実世界の『黒胡椒ブラックペッパー』と『山椒』を足して割ったような、すごく強くて爽やかな香り!」


 「えへへ、本当ですか? モンスター避けの匂い袋に使う『痺れ木の実』なんですけど、料理にも使えるかなって」


 「使えるどころじゃないよ! お塩とこれを合わせれば、どんなお肉の臭みも消せるし、味に強烈なパンチが出る。最高級のスパイスだよ!」


 レナは興奮気味にミレの手を握りしめた。


 塩に次ぐ、料理に不可欠な「香辛料」。それを、レベル一桁の初心者が己の知識と足で見つけ出したのだ。


 「やったぁ……私、役に立てましたか?」


 「もちろん! エドやセリアがどれだけ強いモンスターを狩ってきても、ミレが見つけてくれたこのスパイスがないと、最高の料理にはならないよ」


 【アイテム名:『痺れ木の実(野生の黒胡椒)』】

【品質:B(良質)】

【用途:香辛料。肉料理の風味を劇的に向上させる】


 システムもまた、ミレの努力を肯定するように、料理の要となる調味料の発見を告げていた。

 最強の二人が不在の森で、少女たちは泥だらけになって笑い合いながら、両手いっぱいの「海の幸」と「山の幸」を待ち受けるための準備を整えていくのだった。

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