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『餓死寸前の最弱アバターからのサバイバル料理 ~現実世界での完全栄養食に絶望したので、VRゲームで失われた「本物の味」を再現して夢の食堂を開きます!~』  作者: ゆっきー
第2章:「最強の護衛と、夢の食堂の予定地」

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第13話:「迷子の採集者と、切り株のテーブル」

石窯の余熱が周囲をじんわりと温める中、レナは膝の上で丸くなる幻獣フェンリル・パピーの銀色の毛並みを優しく撫でていた。

エドは少し離れた大樹の根元に座り込み、大剣を抱えたまま目を閉じている。満腹と暖かさによる、穏やかな消化の時間だ。


「……おい」


不意に、エドが片目だけを開けて森の奥を睨んだ。


「また何かが来るぞ。今度はモンスターじゃない。足取りの覚束ないプレイヤーだ」


エドの言葉から数秒後。

ガサガサと茂みを掻き分け、自分よりも大きなリュックを背負った小柄な少女が転び出るように現れた。


頭上のマーカーは『ミレ:Lv4』。初期装備の布服はボロボロに破れ、HPバーは残り僅か。さらに【極度の空腹】の赤いアイコンが点滅している。明らかに森の深層に迷い込んでしまった、生産職か採集職の初心者プレイヤーだ。


「あ、あう……っ」


顔を上げたミレは、大樹の根元に座るエドの姿(漆黒の外套と禍々しい大剣、そして計測不能のレベル)を見て、ひっという短い悲鳴を上げた。


PKプレイヤーキルされる。そう思って後ずさりしようとした瞬間――彼女の鼻腔を、石窯から漂う極上のローストポークの残り香が容赦なく貫いた。


きゅるるるるるるるぅぅぅ……っ!


恐怖を凌駕する盛大な腹の虫の音が、森の更地に響き渡る。

ミレは顔を真っ赤にしてその場にへたり込んでしまった。


「お腹、空いてるの?」


レナが幻獣を抱き上げたまま、小首を傾げて尋ねる。


「あ、う……はい。薬草を採ってたら迷子になっちゃって、食料も尽きて……」


消え入りそうな声で答えるミレに、レナはクスリと笑い、エドが切り倒したまま放置していた手頃な「切り株」を指差した。


「そこに座って。今、温め直すから」


レナは残っていたローストポークの一切れを石窯の余熱で素早く炙り直し、木のお皿に乗せて切り株のテーブルへと運んだ。


「どうぞ。暴食猪のローストだよ」


「え、でも私、お金もアイテムも何も……」


「いいから。冷めないうちに食べて」


促されるまま、ミレは震える手でフォーク(エドの予備の短剣)を握り、肉を口に運んだ。


「――ぁっ」


ミレの瞳から、ポロポロと大粒の涙が溢れ出した。

柔らかい赤身から溢れる肉汁、ハーブの爽やかな香り。味覚シミュレーターが伝えるその「温かさ」は、孤独と飢えに震えていた初心者の心と体を、芯からじんわりと解きほぐしていく。


【料理名:『暴食猪の極上石窯ロースト』】

【効果:空腹度完全回復。スタミナ継続回復(中)。状態:『安心』を付与】


システムログもまた、彼女の心に寄り添うように穏やかなバフだけを告げていた。


「おいしい……っ、すごく、おいしいです……!」


「よかった。ゆっくり食べてね」


ミレは涙を拭いながら、夢中で肉を頬張る。

その足元では、幻獣が「美味しいよね」と同意するように尻尾を振り、少し離れた場所では、エドが「騒がしい奴らだ」と鼻を鳴らしながらも、決して追い払おうとはしなかった。


殺伐としたVRゲームの森の奥深く。

切り株のテーブルを囲むその光景は、誰の目から見ても間違いなく、温かな『食堂』のワンシーンだった。

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