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『餓死寸前の最弱アバターからのサバイバル料理 ~現実世界での完全栄養食に絶望したので、VRゲームで失われた「本物の味」を再現して夢の食堂を開きます!~』  作者: ゆっきー
第2章:「最強の護衛と、夢の食堂の予定地」

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第10話:「最強の重機(エド)と、異常な厨房建築」

挿絵(By みてみん)


「エド、そこの巨木を切り倒して。厚さ五センチの均等な板状にスライスお願い」


「俺の『絶技・飛燕』を製材機代わりに使うな……!」


 悪態をつきながらも、エドの大剣が空を切る。

 凄まじい剣圧が森の巨木を寸分違わぬ厚さの板へと加工し、ドサドサと更地に積み上がっていった。本来ならレイドボスを一撃で沈めるための必殺技だが、今の彼にとっては「次のメシを食うための作業プロセス」でしかない。


「うん、完璧。次はあそこの岩山から、耐火性の高そうな玄武岩を切り出してきて。サイズはこの図面の通りに」


 レナは地面に木の枝で書き込んだ、異常なほど緻密な設計図を指差した。


 現実世界で料理の歴史を漁るうち、彼女の知識は「最高の熱効率を生み出すための熱力学」や「理想の厨房を作るための古代建築学」にまで到達していた。

 味覚を失ったディストピアでは一切役に立たない「机上の空論」。それが今、物理シミュレートが完璧なこのVRゲームの森で、エドという最強の物理エンジンを得て具現化しようとしているのだ。


「おい、寝床の雨風を凌ぐだけなら、適当に木を組めばいいだろう。なぜこんなバカでかい石のドームを作る必要がある」


 大量の岩を切り出してきたエドが、呆れたように尋ねる。


「寝床? 違うよ、これは『石窯(ピザ窯)』だよ」


「……は?」


「木を組んだだけの家なんて後回しでいいの。最高の火力と熱対流を生み出すオーブンがないと、分厚いお肉の中まで均等に火を通せないでしょ? ほら、休んでないでこの粘土を岩の隙間に詰めて」


 レナの目には、狂気的なまでの食への執着が宿っていた。

 自分の寝る場所よりも、食材を最高の状態で調理するための「厨房」の確保が最優先。その異常な熱量に押され、最強の死神は溜息をつきながら土木作業に戻るしかなかった。


 数時間後。


「……できた」


 森の開けた更地の中央に、巨大で無骨な「石窯」と、分厚い一枚板で作られた巨大な「調理台」が鎮座していた。

 家というよりは、野ざらしの厨房施設だ。屋根すらないが、その設備が放つ異様な存在感は、一流レストランの厨房すら凌駕するほどの機能美を備えていた。


「風の通り道も完璧。これなら、どんな巨大なモンスターの肉でも最高のローストにできる……!」


 ススで顔を真っ黒にしたレナが、自身の最高傑作キッチンを撫で回しながら恍惚と笑う。


「よし、厨房は完成した。おい、早くあの『ハツの串焼き』を超えるメシを作れ。俺はもう限界だ」


 エドが血走った目で、完成したばかりの石窯をバンバンと叩く。空腹ダメージで彼のHPバーは再び減少し始めていた。


「わかってる。この最高のキッチンのお披露目だもん、その辺の野犬のお肉じゃもったいないよね」


 レナはペロリと唇を舐め、森の奥深くへと視線を向けた。


「エド、狩りの時間だよ。この森で一番大きくて、一番脂が乗ってそうなやつを獲ってきて」


 最強の重機による建築作業を終え、いよいよ「夢の食堂」の初陣となる、未知の巨大食材の狩猟が始まろうとしていた。

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