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十歳最年少の特級魔法使い、魔法を解析しながら勇者の旅についていく!  作者: 赤松勇輝
第二章 ダブトの村 精霊と聖杯

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3、VSダークスライム

 ダブトの村を出て、俺たちは村の川の源泉がある山に向かっている。昼時とはいえ、山には魔物が多い。魔物を退治しながら進んでいく。


「……はぁ、山登りは疲れるなぁ」


 体力があんまりない俺は、その場にへたり込んだ。ポーチから水を取り出して水分補給をする。


「あんた、体力無さすぎでしょ——私にも水もらえる?」

「うるさいなぁ」


 そう言いつつもレイに水を手渡し、二人で一息つく。


 それから、俺は山頂を見上げる。山頂付近に泉があるようで、そこから村で感じた瘴気がより濃くなった雰囲気を感じる。


 加えて、山に登ったからわかるけど、魔物の存在も感じ取れた。この間のアークゴブリンと同じくらいの魔力を感じる。


 この間、握りつぶされそうになったことを思い出すと、恐怖がよみがえってくる。手にはジワッと汗が滲んでくる。


 それでも、泉の水を消して瘴気をもたらした正体を倒さないと、村を救うことができない。


「……あんた、山頂の出来事、解決できると思ってるの」

「えっ? ど、どうしてそんなこと聞くのさ」

「どうしてって……震えてるじゃない……」


 そう言われて、俺は自分が震えていることに気づいた。慌てて、震えを隠すために手に力を入れる。


「……そんなこと、ないよ」

「おおかた、今回の件も魔物の仕業なんじゃないの?」

「……うん、そうだと思う」


 俺が頷くと、ため息をレイはついた。


「じゃあ、あんたは村に戻りなさい」

「なんでよ!」


 俺は立ち上がって叫んだ。


「俺だって、この村の困りごとの解決の役に立ちたい! ここまで来て、戻るなんて絶対に嫌だ!」

「相手は魔物なんでしょう? しかもそれなりに強い——あんた、戦えるの?」

「……それは」


 魔法のことならすぐに頷けるけど、強い魔物との戦闘に関してはすぐに頷けない。この間だって、恐怖で震えてやられそうなレイをすぐに助けることができなかった。


「全く……期待させるだけさせて期待に応えられなかったらどうするの? 勇者としての私がいるから何も言わなかったけれど、もう少し考えて行動しなさい」


 レイの厳しくも優しい声を聞いて、俺は地面を向いた。込み上げてきて、涙がポタポタ落ちて地面を濡らしていく。


 もしかして、ウラトさんの家で俺のことを冷たい目で見てたのは、これが原因だったのかもしれない。


 また、俺は何も考えずに依頼を引き受けてしまった。前回も何も考えないで首を突っ込んで、アークゴブリンにやられそうになった。


 宮廷魔法使いの時もそうだ。魔法で役に立てるくらいの認識しかなかったから、王様の期待に応えることができなかった。


 自分の情けなさに悔しくて、手をぎゅっと握っていると、レイが俺の頭の上に手を乗せてきた。


「……アンタには、私の魔法の解析をしてもらわなきゃ困るの。……だから、怪我でもされたら困るんだからね」

「わかってるよ!」


 俺が泣いているのを誤魔化すために大きな声で言うと、頭上でレイがふっと笑ったような気がした。


「……まっ、もしかしたらあんたの制御がまた必要になるかもしれないから。……泣いてないで行くわよ」


 泣いてる顔なんて見せたくない。俺は急いで顔を腕で拭ってから、レイを見やる。


「泣いてないし!」

「全く……懲りてないなら置いていくわよ」

「あっ、ちょっと待ってよ!」


 スタスタと先へ進んでいくレイの背中を、俺は走って追いかけた。



 山頂には、もともと泉があっただろう大きな窪みがあって、窪みには奥に通じる洞窟が見えた。風が洞窟に吸い込まれて、不気味な鳴き声を出している。


 洞窟の奥からは、うっすら感じる神聖な魔力をかき消すように、村で感じた瘴気をより濃くした魔力を感じる。加えて、アークゴブリンと同じくらい不穏な感じの魔力も。


「そっか、魔物だとこの神聖な泉の洞窟の中に入れないから、泉の水を消したんだ! レイ、俺たちも洞窟の奥に行こう! 洞窟の奥に、魔物がいる」

「……わかった」


 頷いて、レイと一緒に窪みに降りて洞窟へと駆け出す。


 洞窟の奥は薄暗いから、俺の魔法で照らしながら進んでいく。湿った空間に俺たちの足音が反響する。


 コウモリがバサバサと飛んでいて気持ち悪い。でも、足は止められない。何せ、この奥には魔物に加えて、村に瘴気を撒き散らしている危ないものがあるからだ。


 洞窟の奥に進んでいくと、やがて紫色の光が見えた——


「待っていましたよ、勇者さん」

「うわっ、なんだ、きったなくてでっかいスライムがいるぞ!」


 紫色の大きなスライムが洞窟の奥にいた。


 そして、その奥の台座には精霊の姿を模った、杯を抱える石像が置いてある。だけど、羽が砕かれ、力を失ってるみたいで、足元からは禍々しい瘴気が漏れ出している。


「汚いとは失礼な小僧ですね。まぁ、子どもには私の美しさがわかりませんよ」


 スライムが俺のことを馬鹿にしたように笑い出したから、俺は地面をダンダンと踏み締める。


「なんだと! お前みたいなきったないやつのどこが美しいっていうんだよ! 泥団子みたいな姿してくるくせに!」

「汚い汚いって、さっきからうるさいぞクソガキ!」

「やーい、汚いもんは汚いんだよ」


 ベーッと舌を出して、さっき小僧って馬鹿にされた仕返しをする。


「……子どもの喧嘩みたいね」


 ため息まじりに吐き捨てるレイに、俺は怒鳴り声をあげる。


「一番バカにしてるのはレイじゃないか!」

「そんなことよりも」


 と、レイは剣を抜いてスライムに向ける。


「ダークスライム——あんたがダブトの村を襲った魔物ね。勇者の名にかけてここで葬ってあげるわ」


 ダークスライムも俺からレイに視線を戻して、咳払いをしてから口を開く。


「威勢だけはいいようですね。ですが、それだけでは私は倒せませんよ!」


 スライムの巨体がズアッと、まるで波が押し付けるように襲いかかってくる。見た目は泥団子だけど、力量はこの間戦ったアークゴブリンと同じくらいの力量だ。


 しかも——


「そんな! レイの剣がすり抜けちゃう!」

「……チッ」


 舌打ちするレイに、不愉快な笑みを浮かべるダークスライム。しかも、ダークスライムに触れた剣が少し腐食しているみたいだ。


 あいつの体に当たったら、溶けちゃうのかもしれない!


「剣による攻撃は通用しませんよ——さぁ、お得意の魔法でも使ってみてくれませんかねぇ。まぁ、ここで暴走すればそのクソガキもタダではすみませんがね」

「くっ……」


 レイの剣術じゃ、ダークスライムを倒すことができない。


 剣じゃ倒せない……なら魔法は?


 ダークスライムはダークという名前がついている性質上、解析してみると、どうやら雷属性の魔法が弱点みたいだ。


「それなら……」


 懐から杖を取り出す。使う魔法は雷——黄色の魔法陣が杖の先端に暗い洞窟を照らすように出現した。


「魔法による攻撃なら効くんじゃないか! くらえ『雷刃衝戟』」


 ダークスライム専用に作り出した雷の槍は、光の速さで襲いかかった。


「グアアアアアッ! 熱い、熱い!」

「やった! 効いたぞ!」


 嬉しくて俺は思わずガッツポーズをする。


「……クソガキがッ! 私の美しい体に傷をつけるとは……許さぬ!」


 怒ったダークスライムが猛スピードで襲いかかってくる。


「……う、うわっ!?」


 思わずその場にしゃがみ込んでしまったけど、ダークスライムが襲ってくることはなかった。恐る恐る顔を上げるとレイが俺の前に立っていた。


「レイ!」

「……実戦で、よそ見をするなって言ったでしょう」

「あっ、ごめんなさい」


 素直に頭を下げると、レイはフッと笑ってダークスライムに目を向けた。


「でもまぁ、弱点は見出せたようだし——私が引きつける、あんたは攻撃に専念しなさい」

「……わかった」


 ダークスライムはレイに斬られて真っ二つに分裂したけど、すぐにくっついて元の大きさに戻っていた。


 剣で切っても元に戻る。しかも、剣は攻撃するたびに溶けていっちゃうから、あんまり猶予はない。


 それなら、ありったけをぶつけてやる!


 弱点は雷だ。雷の魔法を使うのは当然として、威力を底上げするために属性強化の風の魔法を組み込む必要がある。


 黄色の魔法陣が緑色の魔法陣を追加して、黄緑色の魔法陣に変化する。


「な、何っ!? こんなクソガキが魔法陣を融合させただと!」

「……邪魔はさせないわ」


 ダークスライムの焦ったような声と、レイの冷静な声が聞こえてくる。


 目の前では、激しい攻防が繰り広げられているけど、今は魔法に集中だ。雷を属性強化して打ち出す——その上で対ダークスライム特効用の魔法として作り替える。


 杖を前に向け、魔力を込めると黄緑色の魔法陣が眩しく輝く。


「お前だけを滅ぼす魔法! くらえ『滅闇雷波』ッ!」


 魔法陣が膨れ上がり、極太の雷がダークスライムを飲み込んだ。


「こ、この私がああああああっ!」


 断末魔の悲鳴と共に、ダークスライムは弾け飛んで消滅した。


 シンと静まり返る洞窟、俺は疲れてその場に座り込んだ。


「や、やった! ……でも、ちょっと、疲れた」


 そんな俺のそばにレイが歩み寄ってきた。


「……特級魔法使いっていうのは、あながち嘘じゃないみたいね」

「嘘じゃないよ! 何度だって証明してやるぞ!」


 俺は懐から、特級魔法使いとしての資格証をレイに見せつける。


「……本当、ただの生意気な子どもなのにねぇ」

「なんだって! ……あぁ、だめだ、お腹が空いて、怒る力も湧かないや」


 その場に大の字で寝転ぶと、コウモリが飛んでいるのが見えた。それも一体じゃない。どんどんと膨れ上がって——


「レイ! 何かおかしいよ」


 急いでレイに声をかけたけど、遅かった。身体を起こすと、精霊の石像の上に杯を持って佇んでいるフードを被った人がいた。


 解析する力が弱っているけど、目の前の人からは人の魔力も魔物の魔力も感じる。感じたことのない魔力だ。


「……それは、渡さないわ」

「…………」


 精霊の石像の上に乗っている人は指を鳴らすと、コウモリが竜巻のように渦を巻いて体を包み——コウモリが消えると姿が消えていた。


「……何者なの」

「わからない——って、なんだ!? 洞窟が揺れ出したぞ」


 洞窟内が地響きを立て、精霊の石像の足元からドス黒い瘴気がドバッと溢れ出した。

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