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十歳最年少の特級魔法使い、魔法を解析しながら勇者の旅についていく!  作者: 赤松勇輝
第二章 ダブトの村 精霊と聖杯

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2、瘴気の溢れる村

 俺は意気揚々と、レイより先に目的地のダブトの村へと進んでいる。でも、身長差があるから俺は急いでいても、レイは普通に俺の隣に並んで悠然と歩いているのは少し悔しい。


 でも、ダブトの村の方角から、喉の奥が焼けるような瘴気が流れてくるのを感じて、足を止めていられなかった。


「レイ、急ぐよ! ダブトの村の方角から嫌な気配がする。瘴気のような……悪いものが溜まっているような感覚だ」


 翌朝、レイが夜中に不気味な光を見たと教えてくれたから、俺はすぐに魔力を集中して周囲を調べた。すると、ダブトの村の方角から不気味な気配を感じた。


 村の方角から不気味な気配を感じるということは、村で何かあったのかもしれない。俺に何かできることがあれば協力したいから、急ごうと思っている。

 

「……急ぐのは同意するけれど、あまり焦りすぎないようにしなさいよ」

「どうして?」


 首を傾げる俺に、レイは額に手を当ててため息をつく。


「……あんた、昨日疲れすぎて倒れてたじゃない」

「大丈夫、ちょっと目の奥が痛いけど、いつものことだから!」

「いつものことって……」


 宮廷魔法使いだった時も、俺は徹夜で研究をしていた。作りたいものや気になることがあると、時間を忘れて研究に没頭しちゃうんだよね。


「それに、早く俺が解析することができたら、色々な人を助けられるじゃん」


 そのためには、今度は前のような失敗はしない。独りよがりな魔道具を作り上げても、困っている人が困っている時に使えなきゃ意味がない。


 宮廷魔法使いの時に感じることができなかった気持ちを新たに、俺は魔法で困っている人の役に立つんだ!


 そのためにも——


「急いで、ダブトの村に行くぞー!」

「……朝からうるさいわね」


 ジャンプして空に向かって拳を突き上げる俺の隣では、レイがため息をついていた。



 ダブトの村は、オーネスの村と同じくらいに自然豊かな村だけれど、淀んだ空気が周囲を支配していて、活気は全くない。外を出歩いている人も全くいなくて、閑散としている。 


「嫌な空気が滞留してるみたいだ」

「……そこ、川が流れていたようだけれど今は水が流れていないみたいね」


 レイが指さす方を見ると、確かにこの間までは川が流れていたような堀があったけど、今はすっかり水が干上がってしまっている。


「本当だ」


 堀の近くまで歩み寄って、その場にしゃがみ込んで、解析魔法で堀を確認して見る。


「なるほど、この川が干上がったせいで、この村に瘴気が滞留しちゃってるんだ」

「……どういうこと?」

「この川の水にはうっすらだけど、神聖な力を感じる。簡単に言えば聖水みたいな効力があったんだ。だけど、その水がなくなっちゃたから村に瘴気が滞留しているんだよ」


 俺が立ち上がると、レイは腕を組んで思案顔をしている。


「水の干上がりと、私が見た紫色の光と何か因果関係があるのかしら?」

「瘴気は村の奥の山から流れ込んできてる。山に行けば何かわかるかもしれないけど……」


 理由は分からないから首を振る。


「でも、困っていることは事実だろうから、誰かに話を聞きに行こう!」


 歩き出して、ふと立ち止まる。


「ところで、誰に聞けばいいんだろ?」

「……まぁ、村長に話を聞きに行くのが妥当でしょうね」


 そういうわけで、俺たちは村の人に村長さんの家の場所を尋ねてから、村長さんの家に向かった。


 村長さんの家は、村の小高い丘の上にあった。村を見渡せる位置にあるから、瘴気が漂ってなくて澄んでいる状況だったら綺麗に見えるんだろうな、という感想もそこそこにレイがドアをノックする。


 数秒後に顔を出したのは、すっかりやつれてしまった様子の杖をついたおじさんだ。顔からは生気が失われていて、目も虚だ。


「……どちらさまかな」


 レイは顎で俺に前に出るようにサインを出す。どうやら、俺から用件を伝えるようにしてほしいということみたいだ。


 村長さんの前に歩み寄ってから、俺は咳払いをする。


「旅の勇者と魔法使いです! この村で——」

「何、勇者様ですと!」


 勇者という言葉を聞いた途端に、村長さんの目に輝きが戻ったように感じた。やっぱり、何か困っていることがあるようだ。


 勇者というのは、人の希望になれるような存在なんだ。


 ……羨ましいなぁ。


 俺だって、特級魔法使いなんだ。俺のは俺のできることを頑張るぞ!


「ささっ、勇者様にお連れの方もどうぞお入りください。外はこんな状況です、部屋でお話をさせてください」


 勇者という言葉に希望を抱いた様子の村長さんの後について、俺たちも家の中に入る。


 通されたリビングの席に、俺はレイと並んで座り、正面に村長さんが腰をかけた。


 テーブルにはクッキーなどのお菓子が載っていて思わず涎を垂らしそうになってしまったからだろう、村長さんがクスッと笑う。


「どうぞ、お食べください」

「いいんですか!」


 俺が村長さんをキラキラと見つめたからだろう、村長さんは優しそうな顔で頷いてくれた。


 お礼をしつつ、お菓子を頬張っていると村長さんが口を開く。


「私は、ダブトの村長ウラトです」

「俺は魔法使いのライズ——で、こっちが勇者のレイです!」


 口にお菓子を頬張りながら俺が自己紹介をする。


 あぁ、それにしても甘いものはどうして美味しいんだろう。クッキーがサクッと口の中で崩れていく感覚と、口の中に甘さと香ばしさが広がる感覚は幸せだ!


 静かな部屋の中に俺の咀嚼音だけが響く中で、ウラトさんがレイに目を向ける。


「レイ様、村の状況はご覧になられたでしょうか?」

「……えぇ」


 レイが頷くと、ウラトさんがため息を漏らす。


「数日前、謎の光が村のそばの山を照らしました——その後からです。この村の川が干上がり、瘴気が漂うようになったのは」


 光という言葉を聞いた途端、俺は口にお菓子を詰め込みながら言った。


「ふぉれは、むふぁふぁふぃふぃろふぉひふぁりじぇしちゃか!?」


 目を丸くするウラトさんを見て、レイは俺の頭に手刀を一つ。


「……飲み込んでから話しなさいよ」

「痛いなぁ」


 涙目で頭を押さえつつ、お菓子を飲み込んでから、改めて俺はウラトさんに尋ねる。


「その光は、紫色の光じゃなかったですか?」

「その通りです」


 ウラトさんの話を聞いて、俺はレイと顔を見合わせた。


 村のそばの山で起きた紫色の光のせいで、村の川が干上がった——これにはやっぱり因果関係があった。


「そうなると、やっぱり山に何かがありそうだ!」

「……そうね」


 レイと話し合っていると、ウラトさんが頷いた。


「山にはこの村の川の源泉となっている泉があります。そこは、魔を封じていると言い伝えられております。そこに、何かがあったのかもしれません。村人には病気になるものも現れ……」


 魔を封じている泉の水がなくなれば、その魔の力が漏れ出て、村に瘴気が溢れてしまうのもおかしな話じゃない。


 全部繋がったぞ!


 俺は胸をドンッと叩いてから、ウラトさんに言う。


「それじゃあ、俺たちがその山の調査に行きますね!」

「よ、よろしいのですか?」

「もちろんです! 困っている人たちを放っておけません」


 俺が笑って言うと、ウラトさんの目から涙が溢れた。


 でも、どうしてだろうレイの表情は冷たいままだった。

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