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十歳最年少の特級魔法使い、魔法を解析しながら勇者の旅についていく!  作者: 赤松勇輝
第二章 ダブトの村 精霊と聖杯

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1、不穏な光

 オーネスの村を出て、俺たちはダブトの村を目指して歩いている。


 レイによると、オーネスの村から徒歩で三日ほどかかるということで、野宿をする必要もある。だけど、俺の魔道具があればそんな不便なことにはならない。


「……野宿する必要がないのは嬉しいけれど」

「あれ、嫌だった? 俺も野宿は嫌だから、家を作ったんだけど、何か不満があった?」


 首を傾げる俺に、レイはため息をつく。


「……魔法って、なんでもありな訳?」

「なんでもありってことはないよ。時を操ったり、死者を生き返らせることはできないからね」


 俺は、レイの作ってくれたケーキを頬張って、思わず笑った。


「……あぁ、頭を働かせた後の甘いものは最高だ」


 頬を抑えてクリームが口の中でとろけていく感覚を味わっていると、正面の席に頬杖をついて腰掛けているレイがため息を漏らす。


「私からすれば、瞬時に家を建てるなんて、なんでもありだと思うけれど」

「そう?」


 俺としては当たり前のことだから、レイの言い分に首を傾げることになる。


 オーネスの村を出発して初めての夜。野宿をすることになったけれど、魔物がいる外で過ごしていたら身の危険だ。


 森に木はたくさん生えているから、それらを使って魔道具を作るのと同じ要領で家を作っただけだ。


「まぁ、これでも特級魔法使いだからね。そこらへんの魔法使いとはちょっとは違うと思うよ」

「……ちょっとどころじゃないわよ」


 そう言ってレイは嘆息してから続ける。


「……全く。それより、私の魔力の解析は進んでいるの?」


 俺は満面の笑みで首を振る。


「全然ダメだよ! いやぁ、難しすぎるね。どうして、こんなにもレイの魔力と魔法がチグハグなのかわからない」


 食事前に改めてレイの魔力を確認したり、何が要因でこんがらがってしまっているのかを解析してみたけど、まだまだ謎だらけだ。


「でも、それだけ俺のやる気を刺激してくれるんだ!」

「……馬鹿じゃないの」


 レイはそう言うと、あくびをした。今日は歩きっぱなしだったから、疲れているんだろうな。


「寝室にはベッドもあるから、眠たくなったら寝ても大丈夫だよ!」

「……やっぱりおかしい」


 レイはうろんげな表情で俺のことを見てきたけど、立ち上がってあくびを一つ。


「……あんたはまだ寝ないの?」

「俺はもう少し研究してから寝るよ!」

「元気ねぇ。……ほどほどにしなさいよ」

「うん!」


 あくびをして寝室へと姿を消したレイを見送ってから、俺は残りのケーキを頬張る。甘みを噛み締めてから、飲み込む。


「さてと、もうちょっと頑張るぞ!」


 レイの困り事を解決するために! 俺は羽ペンを握りしめた。



 ベッドに横になりながらふと窓の外を見ると、宵の帷が広がる中で、空からは星の明かりが綺麗に輝いている。


 目を閉じれば今すぐにでも眠れそうだけれど、どうしてもライズの顔を思い浮かべてしまう。


 ……あいつといると、なんだか落ち着かないのよね。


 元々、王宮で宮廷魔法使いをしていたけど、アストリアさんの計らいで、修行の一環として旅に出されたという。


 年齢は私より六歳も年下の十歳。魔法が大好きな点を除けば、そんじょそこらの男の子と言っても過言ではない。


 だけど——困っている人を助けたいって気持ちは本当なんだと思う。私ですら見放していた聖なる雷の魔法を解析しようと、躍起になっているのだから。


 面白半分というか、私の魔法の解析をしているのはライズの趣味でもあるような気がするけれど、それでもできないとは言わなかった。


 ……私でも、使えるようになれるかしら?


 手を天井に向かって伸ばすと、右手の甲にある勇者の紋章がうっすら輝いている。


 アークゴブリンの言葉を思い出す。確かに、勇者として覚醒した当初、村を襲ってきた魔物相手に魔法の制御ができなくて、村を跡形もなく消し飛ばしてしまった。


 大切な家族も助けられなかった……。


 それ以来、勇者として剣術ばかり磨いてきた。でも、それだけじゃ太刀打ちできない相手もいた。現に、アークゴブリンには手も足も出なかった。


 魔王の討伐をする以上、このままじゃ絶対に勝てない。剣術ばかり鍛えても……。


 魔物にとっては弱点である、聖雷を制御できるようにならないと、絶対に。


 そんな時にライズに出会えたのは嬉しい反面、怖くもある。魔法が制御できることじゃない。ライズが無理をして、目から血を流してしまっていたことだ。


 ライズの人を助けたい気持ちは、顔から滲み出ている人の良さを見てればすぐにわかる。でも、自分を犠牲にしてしまうのは……。


 そっけなくすれば諦めてくれるかと思ったけれど、ライズは私の魔法の解析を諦めるつもりはない様子だ。


 ……私のせいで、傷ついてほしくない。


 あの時のように——私のせいで人が傷つくのはもう見たくない。


 そんなふうに思っていると、部屋の外から爆発音が聞こえてきた。


「……な、何?」


 もしかしたら、魔物が攻め込んできたのかもしれない。急いで起き上がって、ライズのいる部屋に向かう。


 部屋に到着すると、黒煙が舞い上がっている中で、ライズがいつものように笑みを浮かべながら頭の後ろに手を当てている様子が見えた。


 無事ではあるようだけれど……。


「……何、してるの?」

「いやぁ、失敗、失敗。レイの魔法の解析は、難しいや……」


 そう言って、ライズはフラフラとその場に倒れ込んだ。怪我でもしたのだろうかと思ったけど、違った。気持ちよさそうに寝息を立てている。


「……本当、疲れてるんだったら早く寝なさいよね」


 ライズを運んでソファーに横にさせる。近くにあるブランケットをライズにかけ、私は寝室へと戻ろうと思っていると、外が怪しく紫色に光るのが見えた。


 怪しい色で、嫌な予感がする。だけど、私にはライズのように魔力を辿ることはできない。すぐに、調査しに行くのが勇者たる私の役割。


 そう言い聞かせて、すぐにでも出発しようとしたけど——


「へへっ、もうお腹いっぱいだよー」


 幸せそうな表情で、気持ちよさそうに眠るライズを見て、ため息をつく。一体どんな夢を見ているのやら……。


「……本当、調子狂うわね」


 このままライズを放っておいて、家を魔物に襲撃されて、怪我でもされたら困ってしまう。魔法使いとしての力量は相当だけれど、実践経験はほとんど皆無だ。


 幸い、外の光は今の一度だけで、連続して光ることはない。


 ……明日の朝一番にライズに調べてもらえばいい。それに、何かあればそれは勇者である私が止めてみせる。


 私はあくびを一つ、寝室へと戻った。

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