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十歳最年少の特級魔法使い、勇者の魔法を解析しながら魔王討伐の旅に出る  作者: 赤松勇輝
第一章 オーネスの村 勇者との出会い

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4、勇者との旅立ち

 イランナさんの経営している宿に戻って、私はライズをベッドに寝かせた。


 気持ちよさそうに寝ているけれど、寝相は悪い。布団をかけても、すぐさま蹴って落としてしまう。時々、寝言を言っている。


「……強がって、本当に子どもじゃない」


 嘆息しながら、ライズから受け取った手紙に目を向ける。


 アストリアさんは、私が勇者の力を覚醒した時に出会った人だ。魔物が攻めてくる村を、暴走した私含めて救ってくれた恩人。


 そんな人からの手紙……一体何が書いてあるのだろう。


 封を切って、中身を取り出そうとした瞬間、一枚の紙が飛び出し、床に魔法陣が出現した。光り輝くと同時、アストリアさんが姿を表した。


 正確には幻影だけれど。


『レイちゃん、久しぶりね! 元気してる?』


 慣れ親しんだアストリアさんの声に、気持ちが落ち着いてくるのが分かる。


「……は、はい。それなりには」

『そっか——それでどう? 私の弟子のライズは?』

「……無茶をして寝てます」

『相変わらずねぇ』


 そう言いながらも、アストリアさんは嬉しそうにライズの寝顔を見ている。


『ライズは、魔法の解析や理論に関しては天才なんだけど、実践経験がほとんどないのよ。そこで!』


 アストリアさんはウインクしながら私を指差した。


『レイちゃんの旅に同行させて、実践経験を積ませたいっていう、師匠からのお願いなんだけれど』


 ニヤリと笑うアストリアさんに、私は嘆息せざるを得ない。


「私は勇者で、魔王討伐のために旅をしています。その旅に、子どもを連れて行く訳には行きません」

『あらぁ、ただの子どもじゃないわよ。最年少特級魔法使いの資格を持つ、最強の子どもよ』


 魔法の腕前は確かに目を見張るものがあった。使用者の私ですら制御できない魔法を、ほんのわずかだけれど誘導させて、アークゴブリンを倒すことができるくらいには。


 でも、私の魔法を制御しようとして、ライズは相当苦しそうだった。現に、まだ眠ったままなのだから。


「……人が傷つくのを見たくないんです」

『レイちゃんも相変わらずねぇ』


 アストリアさんはクスッと笑みを浮かべる。まるで、私が断ることも前提で話をしている印象だ。


『でもまぁ、ライズがレイちゃんに会った時点で、もう詰みなんだけれどね』

「……どういうことですか?」

『ライズは可愛い見た目をしてるけど、芯を曲げない強い男の子ってことよ。そして、そんなライズをレイちゃんも放っておけない優しい女の子だわ』


 アストリアさんの言っていることが、いまいちわからない。


「……詳しく説明を」

『——えっ? あっ、ごめん王様から呼ばれちゃったから、またね! 通信用の魔法陣を入れておくから、困ったことがあったら連絡ちょうだい』


 それから、アストリアさんはライズを指差した。


『ライズのことよろしく! じゃね!』

「あ、アストリアさん。私は……」


 最後まで言い終わる前に、通信は切れてしまった。


「……どうして、私がこの子の面倒を見ないといけないわけ?」


 ライズに目を向けると、いまだに気持ちよさそうに寝ているばかりである。


「……全く」


 蹴飛ばした布団をかけたけれど、すぐさま蹴飛ばしてしまった。



 目を覚ますと、俺はベッドで寝ていた。寝相が悪かったせいか、布団は床に落ちて、服もめくれ上がってしまっている。


 まぁ、寝相が悪いのはいつものことだからいいとして、どうして宿にいるんだ?


「……うっ、頭痛い」


 身体を起こすと、途端に頭痛を感じた。そういえば、相当無理してアークゴブリンと戦ったんだ。無理な解析をするといつもこうなる。


 もう一度、ベッドに横になると部屋の中からため息が聞こえてきた。


「……ようやく目を覚ましたのね」


 呆れたような声の主は、レイのものだ。深呼吸をしてあらためて身体を起こすと、ベッドの脇の椅子にレイが腰をかけていた。


 顔を見ると、なぜだかすぐに背けられてしまった。


「ようやくって、俺はどれだけ寝てたんだ?」

「……七日間よ。そんなによく眠っていられたわね」

「な、七日間も寝てたのか!?」


 いくら無理して解析をしたからって、七日間も無駄にしたのは悔しすぎる。その時間があれば、レイの魔法の解析も進んだのに……。


「そ、それより、あんた身体は平気なの? ……目から血も流していたけれど」


 思いがけないレイの俺を心配してくれる台詞に、嬉しさを感じながら、立ち上がって大丈夫なことをアピールしようと思う。


 だけど、その前に俺の腹が、壮絶な音を鳴らした。


「ははっ、お腹すいたよ」


 恥ずかしくて頭の後ろに手を当てて言うと、レイは呆れたようにため息をついた後でクスッと笑った。


「……それだけお腹が空いているようなら大丈夫そうね」

「馬鹿にしてるだろ!」

「……私もお腹すいたし、食事でも食べに行こうかしら」

「待って、俺も一緒に行く!」


 ひと足さきに部屋を出ていくレイの後について、俺もローブを羽織って部屋を飛び出そうと思ったけど、途中でふらいついたからゆっくりと階下に向かう。


 レイを追いかけて宿の一階の食事処に到着すると、俺に気づいたイランナさんとイリスが、駆け寄って来てくれた。


「ライズくん! もぅ、七日間も目を覚まさなくて心配してたのよ!」

「具合は大丈夫?」

「はい! いっぱい寝たのでもう元気いっぱいです!」


 こんなふうに心配してもらえると、なんだか恥ずかしい気持ちもあるけど、嬉しい気持ちにもなる。


「勇者様と一緒に魔物を退治してくれたんですってね!」

「はい! ちょっと無茶しちゃいましたけど……」

「無理もほどほどにね、まだイリスと変わらない年齢なんだから」

「……すみません」


 俺が謝ると、イランナさんが人差し指を立ててニコッと笑った。


「でも、二人のおかげで村周辺の魔物が減って、採取もまた行けるようになったの」

「えっ、本当ですか!」


 俺が言うと、イリスが笑顔で頷いた。


「うん、ありがとねライズくん!」

「俺は魔法使いだからな! 困ってる人を助けるのは当然だ!」


 胸を張って言うと、みんなに笑われたのはなんでだろう?


「それじゃあ、ライズくんも目を覚ましたことだし、腕によりをかけて食事を作るから少し待っててね!」

「はい! ありがとうございます!」


 イランナさんとイリスがキッチンへ向かう背中を眺め終わった後で、俺はレイと席に座って、レイに視線を向ける。


 表情を変えずに頬杖をついているから、何を考えているのかはわからない。


「……何よ?」

「いや、何考えてんのかなって」


 思ったことをそのまま伝えると、レイははぁっと息を吐いた。


「それはあんたよ、無茶して私の魔法を制御して……」

「確かにちょっと無茶したな」

「死ぬかもしれないじゃない。現に、七日間も目を覚まさなかったのよ」


 真剣なレイの物言いに少しびっくりしたけど、俺は魔法を信じてる。だから、レイに笑って伝えることにする。


「言っただろ、魔法は裏切らないんだ! レイの魔法に俺は助けられたんだよ」

「あれは……あんたが制御したからでしょ」


 俺は首を振る。


「あんなのは制御とは言わないよ。俺はただレイの魔法を導いただけだ。レイが撃ってくれたから導けたんだぞ!」

「……あっそ」


 そんなふうに言うと、レイはサッと俺から顔を背けてしまった。レイの顔を見ると、どうしてだろう、耳が赤らんでいるように見えた。


 そんなレイの魔力を改めて解析してみる。うん、やっぱり一筋縄じゃいかないほどこんがらがってる。


 これは俺が絶対に解析して、安全に使えるようにしてやるしかない!


「そういうわけだから、レイの旅に俺も付いていくからな」

「……はっ?」


 レイは俺にサッと視線を戻して、目を丸くして俺のことを見ている。


 あれ?


「アストリアの手紙、まだ見てないのか? というか、レイが俺の修行の旅に付き合ってくれるんだろ? まっ、嫌だって言っても俺が付いていくけどな」

「何を勝手に……」


 レイは顔を顰めているけど、気にせずにレイに笑いかける。


「俺は、レイの魔法の解析をしたいんだよ!」


 レイと一瞬目があったけど、すぐに顔を背けられ、ため息をつかれる。


 でも、俺は気にしないで続ける。


「俺は、魔法を使って困ってる人の役に立ちたいんだ」

「私は困ってなんか——」

「魔法を制御できるようになれば、レイだって勇者として困ってる人をもっと助けられるようになるんだからさ! その手伝いを俺にさせてよ!」


 レイと一瞬目があったけど、すぐに肩をすくめて逸らされてしまう。


「……本当、アストリアさんの言う通りね」


 今度は俺が首を傾げる番だ。


「やっぱり手紙見たんだな! なんて書いてあったんだ?」

「……教えない」

「ケチ!」

「……全く、あんた本当に生意気ね」


 俺とレイが睨み合っていると、イランナさんとイリスが食事を運んできてくれた。


「うわぁ、美味しそうだなぁ」


 俺が涎を垂らして食事を見ていると、レイが俺を見てフッと鼻で笑った。


「……子どもね」

「俺は子どもじゃない! 特級魔法使いだぞ!」

「……はいはい」


 そう言って、レイは嘆息してから食事を食べ始めた。


「食事をしたら、次の目的地、ダブトの村に向かうんだから。……しっかり食べないさいよね」

「えっ?」


 レイはそれっきり食事に集中してしまったから、何も言わなくなった。


 でも、そんな風に言ってくれるってことは、俺が一緒に行ってもいいってことだ。俺は嬉しくなって、見てくれないけどレイに笑顔を向けた。


「これからよろしくな、レイ」


 レイがチラッと俺のことを見てきたけど、すぐに視線を食事に戻した。そんなレイの耳がまた赤くなっていた。

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