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十歳最年少の特級魔法使い、勇者の魔法を解析しながら魔王討伐の旅に出る  作者: 赤松勇輝
第一章 オーネスの村 勇者との出会い

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2、魔物襲来!

 村の入り口から、警鐘がけたたましく鳴り響いている。魔力を持った大群が村に攻め込んできているのを感じるから、理由はこれだろう。


 ひりつく魔力を感じる。相手は魔物だ。


 襲来してくる方角を、手でひさしを作って眺めながら俺は言う。


「すごい数の魔力だ」


 ざっと数えただけでも、二十体以上の魔力を感じる。そんな大群が村に攻め込んで来たら大変だ。


「……皆さんは村で待機してください。私が行きます」

「ご武運を」


 レイがイランナさんに言うと、レイは颯爽と駆け出した。


「お、おい!」

 

 レイの魔力は不安定だ。剣で攻撃することもできるかもしれないけど、敵の数が多すぎる。魔法を使おうとしても、今の状態じゃ暴走してしまうだけだ。


 魔物の大群なんて見たことがない。魔力を感じるだけでも怖い。


 でも……。


 レイの魔力を解析したい気持ちもあるけど、危ないかもしれない人を放っておけない!


「ちょっと、ライズくん! どこに行くの! 危ないから戻ってきなさい!」


 イランナさんが叫んでくるけど、俺は振り返らないで叫んだ。


「俺もレイのところに行きます!」


 レイは先に行ってしまって、後ろ姿も見えない。


 俺は走りながら、懐から杖を取り出して腕に当てる。今まで色々な魔法を解析してきている。その中に、身体強化の魔法だってあるから再現できる。


 緑色の魔法陣——風属性の魔法による『身体強化』の魔法を使用すると、一気に身体が軽くなった。


 全力で走ると、すぐにレイに追いつくことができたから、レイの隣に並んで俺は大きな声で言う。


「レイ、俺も一緒に行く!」

「……足手まといよ。子どもは村に戻りなさい」

「戻るもんか。レイはうまく魔法が使えないんだろ?」


 俺が言うと、一瞬レイの表情が固まったように感じた。でも、すぐに立ち止まってため息をついた。


「……アストリアさんが絡んでいると、本当に厄介ね」

「何がだよ?」

「……命が惜しかったら今すぐ村に戻りなさい」


 レイは吐き捨てると、また駆け出したから、俺はカチンときたけど、進んでいる先から大量の不穏な魔力を感じとったから、俺はレイに叫ぶ。


「待って、この先から魔物の大群が来るぞ!」


 俺の言葉を受けてレイが立ち止まった瞬間、森の奥から手に棍棒や槍を持ったゴブリンやオーク。それから、杖を持ったガイコツのような魔物まで様々な魔物の大群が現れた。


 魔物たちからは不穏な気配を感じる。だけど、その矛先はどういうわけか全部レイに向けられているみたいだ。


「ケケケッ、この先の村に勇者がいると言うグレムリンの報告は本当だったな。ボスが来る前にやって、首を差し出すぞッ!」

 

 ゴブリンの一体が群れに向かって叫ぶと、他の魔物たちも呼応したかのように猛りの声をあげて襲いかかってくる。


 狙いは、元からレイだったわけだ。さっきの逃げたグレムリンが村にいることを伝えたみたいだ。だから、村に襲いに行こうとしていたのか。


 森道は細く、左右は木の壁。逃げ場は後ろ——村だけだ。ここで俺たちがやられたら、村も襲われるかもしれない。


 魔物の大群を目の前にして、心臓がドキドキしてくる。


 でも、レイは不安に感じていない様子で、剣を素早く振り抜いた。


「……あんたは早く逃げなさい」


 そう言って、レイはゴブリンやオークと闘い始めた。剣の扱いは見事なもので、瞬く間に魔物を斬り伏せている。


「……かっこいい」


 ガイコツの姿をした魔物が黒い魔法陣を杖から出現させた。狙いはレイだ。杖の先端はレイに向けられている。


「……ま、魔法ならっ!」


 目に力を込めて、解析魔法を発動させる。


 ……なるほど、雷属性の魔法だ。


 とは言っても初級レベルの雷魔法だ。ちょっと魔力の流れを滞らせて、膨れ上がらせてしまえば——


「魔力が暴発するってわけだ!」


 爆風が巻き起こり、ガイコツの魔物は吹き飛んだ。パラパラと、ガイコツの骨が宙から雨のように降ってくる。


「……やるじゃない」

「へへっ、特級魔法使いだからな!」

「……油断するんじゃないわよ」

「わかってるよ!」


 レイはやたら俺に厳しく喋るなぁ。


 でも、レイの言う通りで魔物はまだまだいるから油断はできない。


 ゴブリンやオークはレイが戦ってくれている。でも、ガイコツの魔物は今のやり取りで照準を俺に移してきた。


 怖い。だけど、レイが一緒にいるからかなんだか勇気をもらえる。

 

 ガイコツの魔物五体の雷の魔法が一斉に俺に襲いかかってくるけれど、さっき見た魔法と同じものだから、杖を一振りして霧散させる。


 驚きで後ずさるガイコツの魔物たちに、俺は杖を向ける。


「じゃあ今度はこっちの番だ!」


 ポーチから液体の入った瓶を取り出す。水は透き通っていてキラキラと輝いている。


「これは聖水だ。俺は色々な魔法を解析して、自分で再現することもできるけれど、一般の人でも使えるように魔道具も作れるんだよね」


 そう言って、ガイコツの魔物に見えるように、俺は中の液体を揺らした。魔物は明らかに警戒しているように聖水を見ている。


「ただ、威力が高すぎて城じゃ使っちゃダメって言われたんだけど——ガイコツ相手なら話は別だ!」


 その聖水の入った瓶を俺は、ガイコツの群れに向かって投げた。宙に浮いているところで、緑色の魔法陣から風の魔法を放ち聖水の瓶を割った。


 輝く雨がガイコツの群れに降り注ぐと——悲鳴にもならない呻き声をあげ、ガイコツたちは消滅していった。


「結構使えると思うんだけどなぁ」


 俺が腕を組んで、消滅したガイコツの群れがいたところを見ていると、レイも最後の一匹を倒した様子で、先陣を切って叫んでいたゴブリンが断末魔の悲鳴をあげているところだった。


 俺はレイの元へと駆け寄る。


「こっちは終わったよ!」


 Vサインをして笑って見せると、レイはため息をついている。


「……アストリアさんの関係者のくせに、実践経験はないわけ?」

「なんだよ! ……まぁ、確かに研究ばっかりで、魔物との実践なんてあんまりないけど」


 必要な素材があっても、城で用意してくれたから俺が自分で魔物を倒す機会はほとんどなかった。


 俺が手をぎゅっと握って、地面を向きながら言うとレイのため息が聞こえてきた。


「言っているでしょう、危険なことは勇者の私に——」


 レイが何かを言おうとしてたけれど、森の奥から今まで感じたことのない不穏な魔力を持った存在が迫ってきて、背中がゾワッとした。


 色々な魔法を解析してきたけど、ここまで禍々しい雰囲気は感じたことがない。よっぽど負の魔力に満ち溢れた存在なんだと思う。


「……今すぐあんたは村に戻りなさい」

「でも……」

「震えているあんたを守りながら戦うのは無理。……足手まといよ」


 確かに怖くて震えている。レイの役に立ちたいと思ってここまできたけど、今森の奥から歩み寄ってくる魔物の雰囲気は、今までの魔物とは別格だ。


 だめだ。この場にいちゃダメだってわかってる。レイの邪魔になっちゃうってわかってる。でも、足がすくんで動けない。いつもは軽々振れる杖が、鉄の棒を持ってるみたいに重く感じる。


「……早く!」


 レイが叫ぶけど、俺は恐怖で身体がすくんで動けない。


 俺が震えていると、森の奥から三メートルはあろう巨体のゴブリンが姿を現した。手には1メートルはある剣を持って。


 一歩進むごとに地面が沈んで、また一歩進むと木々が軋んでいく。


「……アークゴブリン」


 レイがアークゴブリンを睨みつけると、アークゴブリンがニヤリと笑う。


「貴様が勇者だな、我が配下を倒すとは……まぁ儂が貴様を屠れば問題ない! カーズ様にその首を献上させてもらうぞ!」


 けたたましい雄叫びをあげるアークゴブリンの声を聞いて、俺の全身はひりつき、いっそう体が震えてくる。


 俺は、このまま何もできないのか……。


 震える手で、俺は杖をギュッと握りしめた。

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