表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
十歳最年少の特級魔法使い、魔法を解析しながら勇者の旅についていく!  作者: 赤松勇輝
第五章 フォーゼルの街 黒幕との戦い

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/26

2、聖女の作戦

 昼間なのに曇天のため薄暗い状況の中、私はフォーゼルの街に到着した。だけど、私は街の中に入れず、街が見える林のそばで、どうしたものかと木に持たれて腕を組む。


「……はぁ。まさか、手配書が街の中に貼られているなんてね」


 一度街に入ったけれど、街の広場や、酒場、宿屋など至る所に私の手配書が貼られているのを発見してすぐさま撤退した。先日、スリーツの神殿から宝を奪ったものとして。


 敵に捕まれば、ライズには会えるかもしれない。


 だけど、敵に捕かまれば術中に嵌ることになる。その中でライズを助けることができなくなってしまう。そうなれば敵の思う壺だ。


 曇天の薄暗い状況とはいえ、明るい昼間に向かうよりかは、夜に潜入した方が私の姿もわかりづらいだろう。


 夜まで待つしかない。海辺のそばにあるフォーゼルの潮の香りがふわりと広がる風を受けながら、目を閉じる。


 ……それにしても静かね。


 待つのは苦にはならない。本を読んだり、ライズと出会う前だったら何も考えなくてもいつの間にか時間が過ぎ去っていた。


 だけど、ライズが旅に同行するようになってからは、純粋な笑顔で話しかけてくれたり、魔法で驚かせてくれた。


 そんなライズが隣りにいないと、胸に穴が空いたように感じる。その穴を埋めるためにも——あの笑顔を取り戻すためにも……。


 私はライズから託された指輪を見て、きつく握りしめる。


「……助けに行くまで、余計なことしないで待ってなさいよ」


 決意を胸に秘め、ふと街の方に顔を向けると、豪華な白馬の馬車がフォーゼルの街に向かって行くのが見えた。


 白を基調に金の装飾が施された荷台、その屋根には瀟洒な十字架がつけられている。そして、荷台のカーテンが潮風で揺れ、窓から見知った顔が見えた。 

 

 金髪に色の白い肌。黄緑色の神官の服装をしているから間違いない。私は思わず馬車に駆け寄ってしまった。


 これこそ、神のご加護なのかもしれない。女神様に会わせる顔はないけれど、この時ばかりはお礼をせざるを得ない。


 いきなり、馬車の前に立ちはだかってしまったのがいけなかった。護衛の騎士が私に剣を向けてくる。それでも、私は気にせずに中にいる女性に届くように声を絞り出す。


 普段は声を張ることはあまりないけれど、今だけは緊急事態だから。


「セリスさん! 少し、お時間をいただけないでしょうか!」

「何者だ!」


 騎士は訝しんだ様子で、私に剣を向けている。


「護衛さん、剣を下ろしてください。こちらの方は、勇者レイ様です。ご無礼ですわ」


 荷台から顔を出した、セリスさんの制止で護衛の騎士は剣を下ろして、謝罪をしてくる。


「いえ……私が突然出てきたので……」

「お気になさらず」


 セリスさんの柔らかい笑みを見ていると、心が温まるのを感じる。


「……セリスさんは、お仕事ですか?」

「はい、知り合いの依頼で——それよりも、何かお困りの様子ですね。……ライズくんの姿が見えないのも関係ありますか?」


 さすがは、神殿の聖女であるセリスさんだ。すぐに事態を見抜いてくれた。あまり人のことを頼ることに慣れていない私は、優しく接されると、すぐに込み上げてきてしまう。


 ……ライズによく泣くなんて、からかっていられないわね。


 私は頷いてから、セリスさんに経緯を伝える。


「フォーゼルに向かっている途中で、神殿で剣を盗んだ女がライズを攫っていきました」

「なんですって! あの、一生懸命な可愛いライズくんを攫うだなんて! 許せませんわ!」


 セリスさんは憤慨してくれている。嬉しいけれど、ライズに可愛いというと怒られる。子ども扱いされるのを嫌う年頃だ。


 だけど、攫ったことに憤る気持ちは同じだ。


「……はい。ただ、ライズを助けに行きたいのですが、街の中には、スリーツで剣を盗んだ犯人として私の手配書が掲示されていて、街でうまく動けず……」

「敵は用意周到ということですわね」


 セリスさんは思案顔になり、すぐに手を合わせた。


「それなら、一つ妙案がありますわ!」


 セリスさんは笑っている。


 だけど、なんだかアストリアさんから感じたことのある、強行してでも何かを成し遂げようとする、そんな笑みを見て、私は冷や汗をかいた。



 洞窟の一室。俺が聖剣を壊すために使わされてる部屋は、ただの牢屋だ。空洞に鉄格子をつけただけの空間なんだもん。結界も貼られてるみたいで、外の様子もわからない。


 まぁ、研究できるなら、道具さえあればどんなところでも俺は気にしない。


「……まだ、解析できない? カーズ様も焦っているわ」


 シンさんが檻の向こうから尋ねてくる。


「うーん……もう少しでできそうなんだけど、なんだか不貞腐れちゃってる感じがするんだよね」


 あぐらをかき、腕を組みながら、俺は床に置いた聖剣を解析魔法を使いながら見つめる。何度も、対話を求めてみたけど、拒まれてる感じだ。


 まぁ、わざと時間をかけてるのもあるけど。


 無理やり封印を解かれたから、俺の解析も拒んでるんだと思うけど、拒まれ続けると解析が捗らない。


 俺としては壊せなくても——


「……痛ってえ! もう、思っただけでも、激痛がくるのは慣れないなぁ」


 カーズにつけられた呪いの首輪は、カーズの意に反した言動を取ることで呪いが発動して激痛が伴う。そして、激痛を浴びすぎると死んでしまうという呪いだ。


「ライズくんは、こんな状況なのに、まだカーズ様に逆らおうとしているの?」

「もちろん! ……っ、レイが……絶対に助けに来てくれるからな」


 俺は、痛みを堪えながらシンさんに言った。


 レイは絶対に来てくれる。洞窟の中にいるから今が何時かわからないけど、多分だけど、俺がここに来て五日は経ったはずだ。


 途中まで来たから、レイもそろそろ来てくれる。


 ……俺は余計なことはしないで、レイを待つだけだ。


 今はカーズがいないから、絶好のチャンスなんだけどなぁ。そんな風に考えていると、お腹がなった。俺はほっぺたをかきながらシンさんに言う。


「ねぇ、シンさん、解析で疲れたから甘いものもらえないかな?」

「ふふっ、良いわよ。檻の外からごめんね」


 シンさんは檻の外から、クッキーやチョコレートを差し出してくれたから、すかさず受け取って、まずはチョコレートを一口。


 口の中で、スーッと溶けて甘い味が口の中に広がる。幸せだ。


「……カーズ様には内緒よ」

「うん! やっぱり、シンさんは優しいね」


 解析のために必要なものではあるけど、カーズからは最低限の食料しか渡されないようにされている。


 しかも、ここ最近は解析が進んでないから食事もろくにもらえてない。お腹が空いたら解析にも響くのに……だから、シンさんからお菓子をもらうのは解析のために必要なものだから痛みはない。


「でも、カーズはどうして、時々洞窟からいなくなることがあるんだ?」


 だからこそ、今はこんなに呑気に話をしてるんだよね。最初はどこで聞かれてるか分からないから猫を被ってたけど、聞こえてない範囲もシンさんが教えてくれたから話をしている。


「……昼は昼の顔があるの——魔力を見れるライズくんなら分かると思うけど、カーズ様は人間の姿をしてるけど禍々しい魔力を持っているでしょう?」


 初めて会った時に感じたことだ。


 俺が頷くと、シンさんの表情が暗くなっていく。


「……人間の姿——あの方が私の本当のご主人、カイド様なの」

「えっ!? じゃあ、カイドさんの体にカーズが取り憑いてるってこと!?」


 シンさんが頷く。


「……カーズ様はなんらかの戦いで大怪我を負い、肉体を保てなくなった。依代としてカイド様に取り憑いたの」

「そっか、そんなことがあったんだ」


 だから、シンさんはカイドさんを取り戻すためにカーズの命令を聞いて動いているんだ。


 ……やっぱり、シンさんは悪い人じゃなかった!


 それが分かっただけでも、俺は嬉しい気持ちになる。


「だけれど、それでライズくんのような子どもを危険な目に遭わせるなんて、最低だよね」


 シンさんは力なく笑う——そんなシンさんを勇気づけるために、俺は叫ぶ。


「そんなことない! シンさんは、カイドさんを助けたいだけなんだから、仕方ないよ! 悪いのは全部……カーズだ……!」

「……ライズくん、ありがとうね」


 シンさんの目尻に涙が浮かぶ——その直後、洞窟の扉が激しい音を立てて開いた。コウモリの姿をした魔物が体当たりして開けたようだ。


 コウモリは一直線にシンさんの元に飛んでいく。何やら耳打ちしている。話している内容は聞こえない。


 だけど——


「……スリーツの聖女様が? わかりました、すぐに向かいます」


 スリーツの聖女様といえば、セリスさんだ。神殿での戦いの時は、色々と協力してくれた。また会えるかもしれないのは嬉しい。


 どうしてだろうと考えている俺に、シンさんが目配せする。ウインクしてなんだか、訴えているような感じだ。


 セリスさんが来て慌ててる。神聖力のすごい人だったから、カーズとっては天敵だろう。焦ってシンさんに助力を求めてるくらいだもん。


 そして今のシンさんの目から——俺は事態を理解してシンさんに笑みを向けた。


「……キミはそこで解析に集中するように。カーズ様からの命令よ」

「分かりました。解析に、集中します」


 シンさんの背中を見送って、俺はクッキーを口に運び、手を組んで前に突き出す。


「さてと、今がチャンスだな!」

 

 セリスさんの介入でカーズの監視も弱まる。


 クッキーをサクッと噛む音が洞窟内にこだまする。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ