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十歳最年少の特級魔法使い、魔法を解析しながら勇者の旅についていく!  作者: 赤松勇輝
第四章 大きな森 特級魔法使いの決心

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1、森の中の出会い

 スリーツの街を出て、五日が経った。スリーツからフォーゼルまでは徒歩で行くと十日はかかる。ようやく、フォーゼルまで半分といったところだけど、まだ、到着できないのはもどかしい。


 そんな道中の森の中を、俺は心なし早足で歩く。


 のんびりしてたら、ダブトで奪われた聖杯やスリーツで奪われた封印された剣が敵に悪用されちゃうかもしれない。


 でも、フォーゼルには古の勇者の剣を持って行った、俺のことを心配してくれたお姉さんがいる。剣を奪われた時も悲しそうな顔をしてた。


 ……あのお姉さんとは戦いたくないなぁ。


「あのお姉さんは、どうしてあの剣を盗んだんだろうな」

「…………」


 頭の後ろで手を組んで俺がポツリと呟いたけど、レイには聞こえていない様子で、レイは進む先を見つめているばかりだ。


「……レイ?」


 レイのことを見ると、なんだか表情がいつもと違って目がトロンとしている。顔も赤いし、足取りもいつもよりも遅い。


「ねえ、レイ、ふらふらだけど大丈夫? 顔も赤いし、呼吸も荒いよ。熱があるんじゃないか!?」


 俺が首を傾げると、レイは首を振った。


「……気のせいよ」

「本当に?」

「……あんたに心配されるほど、やわじゃないわ。あんただって、眠そうな顔してるじゃない」

「そ、そんなことないよ」


 ……確かに、ちょっと眠い。


 いつも通り、夜更かしして魔法の研究をしてるから。どうしても作りたい魔道具があった。レイの魔法の制御に必要なものだ。


 一応、完成したけど、最後の確認をしてから渡そうと思ってる。


「俺はいつも通り夜更かしして眠たいだけだけど、レイはいつもと全然違うじゃん」

「そんなこと……」


 そう言ってレイは咳き込んだから、俺はレイに言う。


「少し休んだ方がいいよ」

「……私たちは、早く聖杯と剣を取り返さないといけないの。休んでる暇なんてないわ」


 レイの真剣な表情を見て、俺は心配と同時にハッとした。いつも、俺が無茶をしてるとき、レイも今の俺とおんなじ気持ちだったのかもしれない。


 確かに、レイの言う通りだけど、無茶をして具合の悪い状態で敵と戦うことになったら、勝てる勝負でも負けちゃうかもしれない。


 そうは言っても、回復魔法は外傷を治すだけだし、そもそも俺は回復系の魔法がちょこっと苦手なんだよね。今まで一度も成功したことがない……。


 熱を治すには魔道具としての薬を作った方が俺は得意だ。


 解熱に使える薬草を見つけて、薬を作ればどうにかできるけど、ふらふらなレイを一人にして薬草を探しに行くわけにはいかない。


 無理にでも、レイには休んでもらわなきゃ!


 そんなふうに考えていると、隣を歩くレイに体力の限界がきたみたいで、倒れ込みそうになった。


「レイ!」


 レイを慌てて受け止めようとして、支えられなくて俺は尻餅をついた。


「……いてて。レイ! 大丈夫!?」


 レイは、俺の返事にも答えられないくらい辛い様子で、荒く息を吐いている。おでこを触ると、すごく熱い。


 こうしちゃいられない!


 俺は一目散に、魔法で家を作って、レイを家の中に運んだ。ベッドに横にさせて、レイの顔色を見ると真っ赤だ。すごく苦しそうに、時折顔をしかめている。


「……やっぱり、すごく無理してたんじゃないか!」


 俺の気持ちは、眠ってしまっているレイには届いていない。だけど、いつも俺を助けてくれるレイを今度は俺が助けたい!


「薬草を採ってくるから、ちょっと待ってて!」

「……私を、一人に、しないで」

「えっ?」


 レイのことを見ると、しっかり寝ている。熱があるから、嫌な夢を見てうなされてるのかもしれない。


 でも、なんだかすごく不安そうな声だから、勇気づけてあげたい。聞こえてないかもしれないけど、俺は眠ってるレイに言う。


「大丈夫、俺がレイを元気にしてあげるからさ! 安心して待ってて!」


 レイに伝えた後で、俺は家を出る。だけど、そのまま出ていちゃうと、無防備なレイが魔物に襲われちゃうかもしれないから、家の周りに結界を張っておくことにする。


 杖を取り出して、家を覆うように魔法陣を展開する。


「使う魔法は土——それから雷。その上で風で補強すれば——強力な結界を張ることができる!」


 三種類の魔法を融合して作り出した結界を家に施す。よほどのことがない限り破られることはない。


 ……でも、長くは持たない。


 魔道具で補助すればもっと強力な結界を張れるけど、即席の結界だから日が沈むまでには戻らないと結界が解けちゃう。


 ……急がなきゃ!


 解析魔法を使う。目的のものはレイの具合を良くするための薬草だ。


 ちょうど森の中を歩いていたから、薬草を探すのは簡単だ。解析魔法を使えば、見たものの効力だって分かる。必要な薬草を探すにはうってつけだ。


 歩きながら、周辺の植物に目を向けていく。


「……やっぱ、すぐには見つからないかぁ」


 植物はいろいろ生えているけど、雑草ばっかりで目当てのレイの体調を良くするための薬草は生えてない。


 でも、諦めるもんか!


 いつも、俺のことを助けてくれるレイが今は苦しんでるんだ。こんな時ぐらい、いつものお返しをしたい。


 辺りをキョロキョロ探しながら歩いていく。お腹が空いてきて、お腹がなってきたけど、今はレイは具合が悪くて寝てるんだ。早く探して、レイのところに戻ろう。


 途中でゴブリンやオークといった魔物が襲ってきたけど、戦闘経験も積んできてるから、襲われても冷静に俺は魔法で魔物を倒していく。


「へへっ、どんなもんだ!」


 倒した魔物を見ながら笑っていると、お腹がまた大きな音を立てたから、俺はその場に座り込む。


「……やっぱ、お腹すいたなぁ」


 街や村で過ごせないときは、いつもはレイが食事を作ってくれた。俺は魔法は得意だけど、料理なんてできない。


 手伝いはしてたし、レイが料理をしてるところを見ていたから、動きとかはなんとなく分かるけど、実際にやったことはない。


 なんでも入るポーチの中を見てみたけど、中身に食べられるものは入っていない。魔法の研究に使う道具しか入れてない。


 いったん戻って準備をしなおそうか——うん!?


「……うあぁ、なんだかすっごくいい匂いがするぞ!」


 鼻をクンクンと動かすと、近くで誰かが料理をしているような、美味しそうな食べ物の匂いがしてきた。


 こんな森の中で誰だろう? 


 もしかしたら、俺たちと同じように旅をしてる人かもしれない。


「……頼んだら、分けてもらえないかな」


 そんなふうに考えて、俺は鼻をクンクンと動かしながら匂いの元を辿っていく。何かを焼いた香ばしい匂いから、温めた牛乳のような甘い匂いもして、思わず涎が垂れちゃう。


 歩いていると、森の中のひらけた場所に到着した。匂いの元はここだ。パキパキと薪が燃える音。その薪のそばには、まるでクマみたいに屈強な筋肉をしたおじさんが座っている。


 金属製の鎧に、俺の足よりも太い剣を持っている。多分、冒険者の人だ。顔はちょっと怖いけど、理由を話せば分けてくれるかもしれない。


「……あ、あの」

「なぜ、こんな森の奥に子どもが一人でうろついている? 同行者は?」


 すごく低くて、お腹に響く声に。俺の心臓は勝手にドキドキし始める。おじさんの目つきが悪いから、怒られてるようにも感じて余計に。


 俺はローブをギュッと握りしめる。おじさんの顔が怖くて見たくない。でも、何が起きるかわからないから、頑張っておじさんの顔を見ながら俺は言う。


「えっと、俺は、その、仲間と旅をしてるんですけど……その、仲間が病気になっちゃって、だから、その、一人で薬草を探してるんです」

 

 緊張したけど、なんとか俺が一人の理由を言うことができた。でも、おじさんは、まだ俺のことを睨みつけてくる。


 食事を分けてもらうことよりも、おじさんの雰囲気が怖くて、心臓がドキドキなりっぱなしだ。


 やっぱり諦めて走って逃げようと思っていると、おじさんが立ち上がって、俺を睨みつけながら俺の元まで歩いてきた。


 魔物よりもよっぽど怖いぞ……。


 俺が恐怖で動けないでいると、おじさんが俺の側まで歩み寄って、しゃがんで目線を合わせてきた。


 こんなところに俺一人でいたことを、怒られるかもしれない。


「坊主一人で探しているのか?」


 睨みつけるような視線に、低い声で言われて、怖くて声が出ない代わりに俺は頷いた。でも、おじさんから目は逸さなかった。


 すると、おじさんは俺の目を見て、大きくため息をついた。


 その時のおじさんの表情が一瞬だけ、目を細めて寂しそうな表情に見えた。理由はわからないし、気のせいかもしれない。


 そんなふうに思っていると、おじさんが俺の頭の上に手を乗せてきた。


「……坊主、お前の仲間をどうしても助けたいんだな」


 おじさんの声がさっきよりもちょっと優しい声になったから、こわばっていた俺の体から少しだけ力が抜けた。


「……うん。大切な仲間なんだ」

「そうか……」


 そう言って、おじさんは立ち上がった。


「……俺も手を貸す」

「いいんですか!」


 正直、一人でちょっと不安だったけど、協力してくれる人がいると安心だ! 嬉しい気持ちでおじさんを見ていると、また俺のことを目を細めて見てきた。


「あぁ、子ども一人で危険な場所をうろつかせるわけにはいかん。もし、怪我でもされたら寝覚めが悪いからな」


 子ども扱いされたことには少しムッとしたけど、手伝ってくれるのに文句は言えない。


「ありがとうございます! 俺はライズです、よろしく」

「俺は冒険者のナイツだ」


 握手をして——


 安心した俺のお腹がグーッと大きな音を立てた。ナイツさんの第一印象が怖くて忘れてたけど、俺はそもそもお腹が空いていい匂いがしたからここに来たんだ。


「……腹減ってるんだな」

「へへっ、俺、いい匂いにつられてきちゃったんだよね」


 笑いながら言うと、ナイツさんは額に手を当ててため息をついた後で、言う。


「……まずは、腹ごしらえだな。食事ならたくさんあるから、分けてやる」

「やったー! ナイツさんありがとう!」


 お礼を言う俺をナイツさんは優しい表情で見た後で、フッと笑った。


「食べ終わったら、薬草を探しに行くぞ。薬草は森の奥地に群生している。魔物との戦闘もあるから、今のうちにしっかり食べておけ」

「うん!」


 結界が解けるまであんまり時間がない。俺はこれからの戦いに備えて、ナイツさんお手製の料理をたらふく食べた。

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