灰と蒸気の戦場
コア・アーカイブ内部に警告音が響き渡る。
壁面の魔導管が一斉に赤く点滅し、ARK-NETの声が頭に響いた。
《警告──第三者の侵入を確認》
《ID:帝国特殊部隊〈シュヴァルツェ・ハーケ〉》
《ID:IMC強襲課〈オメガ・ディビジョン〉》
《交戦予測まで残り──60秒》
「隊長、来ます!」
ルーンがフェアリーを展開し、リアルタイムマップを投影する。
「帝国は東通路、IMCは南通路からだ」
アルスが銃を握り、低く息を吐いた。
「どっちも本気で殺りに来るな……」
ラゼルがモノエッジ・ブレードを抜き、刃の符文を起動させた。
・帝国特殊部隊〈シュヴァルツェ・ハーケ〉
東通路から現れたのは、漆黒の強化外骨格に身を包んだ十二名。
肩章には帝国の双頭鷲、その上に赤い稲妻の紋章が刻まれている。
彼らが展開する兵器は《マギ・プレデター改》。
蒸気圧駆動と魔導力場を組み合わせた重装型人型兵器で、
対人・対物どちらにも高い制圧力を誇る。
「正面突破は無理だな……」
ルーンがデータを確認し、低く呟いた。
・ IMC強襲課〈オメガ・ディビジョン〉
同時に南通路から迫るのは、IMCの白銀装甲部隊。
全員が《インダストリアル・アームズ・モデル5》を装備し、
背部には《モビリティ・ブーストスラスター》を装着。
地面を滑るように高速で接近してくる。
その中央には、IMC強襲課課長 レイナ・ヴァルクの姿があった。
漆黒のタクティカルスーツを纏い、片手に**対魔導徹甲ライフル《S-99バンシー》**を構えている。
「……IMCも本気だな」
アルスが息を呑む。
「ルーン、ストラタスを起動しろ」
「了解、隊長」
ルーンの端末から魔導波が走り、《マギ・ストラタス・インターフェース》が起動。
私たち全員のHUDにリアルタイム戦術データが流れ込む。
《交戦予測:帝国部隊との接触まで45秒》
《推奨ルート:中央シャフト経由、敵同士をぶつける》
《最適射撃角度:アルス+12度、ラゼル+3度》
「すげぇ……考えるより先に答えが出てくる」
アルスが感嘆し、ヴェクター・レヴァナントを構えた。
「ラゼル、アルス、俺と左へ回り込む。ルーンは後衛で制御を頼む」
「了解!」×3
東通路から帝国の強化兵が突入してきた瞬間、
私はヴェクターを対力場徹甲モードに切り替え、一射目を放った。
黒銀の弾丸が帝国兵のシールドを貫通し、胸部コアを破壊。
蒸気が噴き出し、装甲兵が崩れ落ちる。
「一体撃破!」
アルスがすかさずVex-45でカバー射撃。
さらにラゼルが左翼から斬り込み、敵を切り裂いた。
しかしその直後、南からIMC部隊が突入してきた。
レイナの声が響く。
「クロウズ・ネスト、退きなさい!
ここはIMCが制圧する!」
「悪いな。ここで引くわけにはいかない」
私はヴェクターを再装填しながら即答した。
次の瞬間、IMCの装甲兵がブースターで跳躍し、
対魔導徹甲弾を撃ち込んでくる。
「蒸気シールド展開!」
私は背部カートリッジを叩き、《Veil-α》を起動。
高密度蒸気幕が形成され、弾丸を逸らす。
「隊長、右側抜かれます!」
ルーンの警告に反応し、アルスが側面を制圧射撃で押さえ込む。
ARK-NETの声が響く。
《観測報告:コア・アーカイブ防衛率低下中》
《提案:一時的停戦し、第三者協定を締結せよ》
「帝国とIMCと一時休戦だと?」
ラゼルが吐き捨てる。
「……それしかないかもしれない」
私は短く答えた。
しかしレイナが冷ややかに返す。
「交渉は後。まずは、生き残ってからよ」
そのとき、ARK-NETが異常警告を発した。
《外部防衛システムの再起動を検知》
《識別不能兵器群、接近中》
《予測接触まで──90秒》
「おい、また別の敵かよ!?」
アルスが叫び、ラゼルが舌打ちする。
「帝国とIMCに構ってる暇はねぇぞ、隊長」
「……分かってる」
私は深呼吸し、ヴェクターを再装填した。
「ここからは三勢力、協力して生き残るしかない」




