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第三十七章 共通点

 ショベルカーの運転手があまり乗り気じゃない様子を見て、富豪は彼に補償として2万元を渡した。


 すると、運転手は「お客様、またこういう仕事があったら、ぜひ俺を呼んでくれよ。俺たち、専門なんで!」


 富豪は軽く笑って、手を振っただけだった。


 俺は赤いの棺の前に歩み寄り、蓋を開けようとした。だが、ビクともしない!


 まるで中の誰かが、棺の蓋を死ぬ気で押さえているかのようだった!


「運転手さん、すみませんが、ショベルカーでこの棺の蓋をこじ開けてくれませんか?」


「了解っす!」


 運転手はショベルカーに乗り込み操作を始めた。彼もこの赤い棺が不気味な代物だとはわかっているが、金のためなら喜んで手伝ってくれる。


「ギギギギギ……」


 ショベルカーの馬力を最大にしても、棺の蓋はびくともしない!


 中にいる二体の死体、一体何者なんだ?

 怨念があまりにも強すぎる!


 俺はちょっと事態が想像以上に厄介だと感じた。

 あの日、富豪の夢に入ったときは、この二体の女の死体はなんの反応も示さなかったのに、いざ棺を開けようとしたら文句を言い始めたとは?


「運転手さん、もうやめてください!」


 こういうのは力ずくで解決できるもんじゃない。まずは中の女の死体たちが何者なのか、ちゃんと調べなきゃならん!


 俺は富豪に、日が暮れたら法事を行い、二体の女の怨霊を呼び出して事情を聞くと伝えた。そうすれば、次の段階に進める。


 あっという間に夜の8時になった。


 俺は黒い机、桃木の剣、二本の招魂幡、白い蝋燭二本、火炉三つ、そして大量の江米を用意して、招魂の儀式を始める準備をした。


 富豪には、儀式の間は誰一人として壇に近づかせないように念を押し、撮影も一切禁止、別荘内のカメラもすべて切ってもらった。さもなければ、禍根を残す。


 この二体の女の死体、今まで静かだったくせに、なんで今になって騒ぎ出したのか——きっと何か言えない事情があるに違いない。

 だからこそ、俺も真剣な姿勢を見せる必要があった。


 机の上の蝋燭に火を灯し、桃木の剣を手に取り、清酒を口に含み、桃木剣に吹きかけた!


「太上敕令、超汝孤魂、鬼魅一切、四生治恩、有頭者超、無頭者升、枪殊刀殺、跳水懸繩敕救等衆、急急超生!魂來!」


 俺が桃木の剣を高々と掲げ、招魂の呪を唱えると、瞬く間に風がうねり、砂嵐が巻き起こった!


 頬を切り裂くほどの風で、腕や顔、耳、まぶたまでズタズタにされて血が滴り落ちる。正直、めちゃくちゃ痛い!


 でもな、この仕事はこういうもんだ。

 この飯を食って生きてる以上、ルールは守らなきゃいけない。

 雇い主が金払ってんだから、俺は本物を見せなきゃならん!


「幡を上げろ!」


 頃合いを見てそう言うと、富豪が三つの火炉に点火した。俺は片手に招魂幡を持ち、高台に登って幡を振り始めた。二体の女の怨霊を引き寄せるためだ。


 空には幽鬼がチラチラと現れ、数えきれないほどの悪霊が俺の招魂幡に吸い寄せられてきた!


 なのに、肝心のあの二体の女の怨霊だけが現れない!

 俺が一番恐れていた展開が、ついに起きた!


 招魂幡を使うってことは、ある意味殺生を意味する。四方八方からやってくるのは、行き場のない魂たち。今、全員俺の目の前に現れてる。俺ができるのは、全部招魂幡に封じることだけ!


 悪霊は幡の中で一体ずつ斬り捨て、善良で無害な魂は、幡を通じて然るべき場所へと導く。


 どんどん幡が重くなる。無数の魂が幡の中に吸い込まれ、「ジジジジジ……」という音と共に、悪霊が煙のように消えていく。


 30分ほど経つと、空の幽鬼もようやく減ってきた。


 でも、招魂幡は酷使されたせいで大きな穴が開いてしまった。

 幸い、俺は抜かりなく予備の招魂幡を用意していた。すぐに掲げて再び招魂開始!


「魂よ、来い!!」


 俺がもう一度叫ぶと、赤い棺が「ドンッ!!」と音を立てて爆ぜた!


 二体の女の死体が、空中に浮かび上がり、俺めがけて突っ込んできた!


「ハハッ、ようやく来たか!あきらめなくて良かったぜ! 破ッ!!」


 招魂幡は魂や怨霊、幽鬼などには効果があるが、肉体を持った存在には効かない。

 こいつら二体の女の死体は肉体が残ってる以上、幡には封じられない!


 俺は大きな江米の盆を抱えて、二体の女の死体が目前に迫った瞬間、全力で米をぶちまけた!


「アアアア!!」


「ブシュウウウ!!」


「ドンッ!!」


 米粒がまるで雷のように、女の死体に炸裂する!


 ヤツらは痛みに顔を歪め、肉が焼けるような匂いが空気中に立ちこめた。

 だがその匂いは、食欲どころか、富豪をえずかせるほど強烈な悪臭だった!


「幡を収めよ! 儀、了ッ!」


 俺は幡をしまい、持っていた黄色の袋から「鎖魂網」を取り出して、二体の女の死体に投げかけた!


 バサッ!


 二体は完全に絡め取られ、身動き一つできなくなった!


「ふぅ~」


 俺は大きく息を吐いた。今回の招魂、かなりうまくいった。大きなミスもなかった。


「お二人さん。死んでからもう五十年も経つってのに、なんでまだ肉体にしがみついてるんだい?」


 俺は単刀直入に訊ねた。

 どうして五十年も経ってるのに、魂が肉体から離れないのか?


「ふん、小僧が我らの事情を知ろうとは、笑止千万!」


 やはり手強い。上から目線の態度だ!


 雇い主が目の前にいなければ、すぐにでも成仏させてやるところだ。


 この二体の死体はすでに五十年経ってるにもかかわらず、その顔立ちはまだはっきりとわかる。輪郭はしっかり残っていた。


 そして、この二体の女の死体には共通の特徴があった——


 唇が薄く、眉毛は乱れ、耳が小さく、顎が尖り、そして額が狭い!


 唇に肉付きがない女ってのは、たいてい薄情だ。感情なんてどうでもよくて、もっといい生活を与えてくれる相手が現れりゃ、さっさとそっちに乗り換える。


 そういう奴らにとっちゃ、金が永遠に一番大事だ。金のためならどんなことでも平気でするし、道徳なんてクソ食らえ、他人の評価なんか眼中にねえ。


 眉毛がボサボサな女は、自分の欲望に正直すぎるタイプだ。そういう奴は自分の行動を隠そうともしねえし、恋愛関係なんかグチャグチャになってるのが当たり前。一途になんて絶対ならねえし、そんなもん押しつけようもんなら「つまんねぇ人生」とか言ってすぐ逃げる。刺激と新鮮さに飢えてるタイプってやつだ。


 耳が小さい女って、一見すると守ってやりたくなるような小動物系に見えるんだが──中身はめちゃくちゃ奔放だ。遊ぶのが大好きで、ひとりでいるとすぐ寂しがるし、刺激を求めてふらふらしてる。


 こういう奴らはロクでもない男ばっか寄ってくるし、自分でも感情をコントロールしようなんて気はさらさらない。ただ「楽しいから」で生きてる連中だ。どんな相手でも、気分次第で受け入れる。


 顎が尖ってる女──もちろん上記の特徴を全部満たしてるって前提だが──は、まさに男を惑わす顔つきをしてる。自分の色気をひけらかすのが大好きで、誰かにチヤホヤされればされるほど「私ってモテる♪」って優越感に浸ってやがる。


 周囲の目なんか気にしちゃいねえ、むしろ堂々と男を誘惑するような真似も平気でする。まったくタチが悪い。


 額が狭い女ってのも、やたら男の視線を集めやすい。妙に色っぽい雰囲気をまとってて、ついつい目が離せなくなるタイプだ。


 しかも自制心ゼロ。ちょっとでも男に言い寄られると、すぐグラついて、あげくの果てには自分から誘惑するような真似までしやがる。そのくせドハマリして抜け出せなくなる。


 ……こりゃまさに、生まれながらの“夜の女”ってやつだな。間違ってなけりゃ、生きてた頃は風俗街の看板娘かなんかだったろ?


 そんな気がして、俺はその女の死体のひとつに近づいて、ポケットをまさぐった。すると、出てきたのはクシャクシャの証明書。しかも、白黒写真付き……本人に間違いねえ!


 やっぱり、噂は本当だった。この世には、ああいう証明書が実在するんだな。


 ……っていうか、写真の中の女、めっちゃ美人じゃねぇか。そりゃ、男どもが落ちるのも無理ねえわ。


 証明書は二ページ構成で、最初のページの左上には「民国」の文字、中央には警察署の赤い印章、右側には誓約文と本人のサインと手形がびっしり!


「于珍珍、年齢18歳、本市在住、借金返済のため、自らの意思で娼婦となることを──」


 俺は証明書に書かれている文面をそのまま音読したんだが、これが女の死体の怒りに火をつけた!


「ろくな男がいないっ!! お前らなんて全員くたばれぇぇぇ!!!」


 次の瞬間、二体の女の死体が怒り狂って暴れ出した!


 縛られてんのに無理やり暴れようとして、こっちに襲いかかってきそうな勢いだ……!

風は東に巡り、龍の気が動くとき——このページにたどり着いたのも、きっと「縁」の導きに違いありません。


筆者・蘭亭造は、大陸・龍虎山にて古術を学び、風水・命理・陰陽五行を長年研鑽してまいりました。


干支、八字、五行方位、九星気学など、古より伝わる術数を用い、多くの方の人生に光を灯すお手伝いをしてきました。




本作はフィクションの体裁をとっていますが、登場する風水理論や相術の多くは、実際に伝わる術理をもとに構成されています。


一部は、筆者自身の体験に基づいた内容でもあります。




もし、この物語の中に、あなたの人生に役立つ「何か」があったとしたら——


それもまた、偶然ではなく必然。


このご縁に、心より感謝いたします。

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