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第二十一章 棺を葬る

 親父のオーラはものすごく、ただの人間である俺たちでさえ、その圧倒的な威圧感を肌で感じることができた。


 ましてや、相手は道士の亡霊——怖がって震え上がり、内心では後悔の嵐だったに違いない。

 命と引き換えに俺を道連れにするつもりだったんだろうが……まさか俺の父親があの有名な「天師」だなんて、完全に予想外だったようだ!


 伝説によれば、天師とは三界を自由に行き来できる存在。何物にも縛られず、三界すべてから敬意を払われるとも言われている。

 今まで俺は、そんなのただの作り話だと思っていた。だが、まさか本当にいたなんて……!


「天師様!どうか命だけはお助けを!恩はいつか必ずお返しいたします!」


 道士の魂は、涙ながらに必死で命乞いを始めた。


 だが親父は、冷然とこう言い放った。


「我が子に手を出す者、地の果てにいようと容赦せん!」


 その態度からして情け容赦なし。

 道士の魂は観念しつつも、もしかしたら……と最後の望みにかけて逃走を図った。


 森の方へとふらふらと浮かび、木々に紛れて姿を隠そうとした、その時——


「小賢しい…」


 親父がゆっくりと右手を上げ、指を鳴らすと——


「ドオォォォン!!」


 空から轟音が響き渡り、稲妻が何本も真っ直ぐに落ちてきた!


 雷は寸分の狂いもなく、道士の魂を直撃!


 次の瞬間、道士の魂は煙となって空中に溶け、完全に消滅した!


 俺は唖然としながら親父を見つめた。

 まさか邪気をこんな手段で消し飛ばすとは……まるでケツをナイフで裂かれた気分だ。目からウロコがボロボロ落ちるぜ。


「ううううう……」


 ん?誰か泣いてる?


 皆で声のする方を見てみると、泣いていたのは……なんとお爺さんだった。


「うぅぅ……棺が……わしの棺がぁぁぁ……台無しじゃああ〜〜」


 さっきの雷で粉々になった自分の棺を見て、まるで子どものようにしくしく泣いている。


「心配いらん!楠の木で棺を作り直してやる!しかも側面には八匹の天龍を彫ってやるぞ!どうだ?」


 親父が豪快に腕を振って、まさかの大盤振る舞い!


「ちょ、ちょっと父さん、それってさすがにやりすぎじゃ……?」


 俺はこっそり耳打ちして、父に親自重するように言った。

 楠の木の棺なんて、俺らの地方じゃ本当に裕福な名家じゃなきゃ無理な代物だ。

 めちゃくちゃ重たいし、値段もすさまじい。一枚の棺のフタだけでも、屈強な男十人でやっと持ち上がるレベルなんだから!


 しかも親父はそこに「八匹の天龍彫刻」とか、余計なことまで言い出すし、どれだけ金かかると思ってんだ……


 なにより、俺は朝からこき使われてるってのに、雇い主からはまだ一円ももらってねぇぞ!?

 この上さらに棺代まで立て替えとか、いくらなんでもキツすぎる!


「でもなあ、ここまでカッコつけといて、今さらショボいこと言ったら、父親として格が落ちるだろ?俺は誰だ?そう、大天師様なんだぞ!」


 ……なんて、どこまで見栄っ張りなんだこの親父。


 父さんはすっかりその気で、言ったことは水に流せないとばかりに堂々たる態度を崩さない。


 でもさ……本当に楠の木の棺なんて、あの爺さんが欲しがってるとは限らないじゃん?もしかしたら断るかもしれないし——


「素晴らしいっ!ずっと夢だったんですよ〜楠の木の棺、欲しかったんですぅ〜〜天師様、大好きっ!」


 ……出たよ、調子のいい爺さん。

 まんまと乗っかりやがって、目をキラキラさせて父さんを見つめるその顔、今にもキスでも飛ばしてきそうな勢いだった。


 ……まあいい。ここまで来たら父さんの顔を立てるしかないか。

 約束どおり、楠の木の棺を作ってやるとしよう。


 俺は手早く道具を片付け、爺さんの魂を再び壺の中にお招きしてお帰り願った。

 そして李さんに連絡を入れて、楠の木棺の手配を頼むことにした。


「おいおい鉄男くん、お前すげえな!初仕事でいきなりそんなビッグな注文取ったのか?楠の木に加えて、棺に天龍を八匹も彫るだって?こりゃガッポリ儲かっただろ〜?おじさんにも少し分けてくれや〜」


 ……言いたいことは山ほどあったが、俺はただ苦笑いを浮かべるだけだった。

 この騒動で、実は一銭ももらってねぇんだよ。

 むしろ先に一万以上立て替えてんだからな。しかもまだ「手付金」ってレベルだし。


 村医者からもらった五万、あっという間に四万になっちまったよ……


「はぁ……雇い主がせめて、棺の費用だけでも払ってくれりゃ、それで充分だよ……」


 もう報酬がどうとか望まねぇ。ただ、赤字にならなきゃそれでいい。

 頼むから、せめてトントンで終わらせてくれ……


 三日後——


 真っ黒でピカピカに光る楠の木の棺が、村に堂々登場!

 その棺には五匹の天龍が彫られていて、まるで今にも飛び出しそうな勢いだ。


 李さんはドヤ顔でトラクターを運転してやってきた。後ろの荷台には例の棺。堂々たる風格!


 トラクターの排気口からは真っ黒な煙がもうもうと立ち上り、重すぎる棺のせいでエンジンも悲鳴を上げていた。


 俺たちはそれをお爺さんの墓地まで運び、まずは「焚き火の儀」を行ってから、慎重に棺を墓穴に下ろすことにした。


 が、この棺をトラクターから下ろすのが……また一苦労でな。


 村人総出で持ち上げようとしたけど、びくともしねぇ。

 結局、隣村からクレーン車を呼んで、ようやく墓穴に納めることができた。


「お爺さん、これで満足かい?」


 棺の中からは、お爺さんのニッコニコな気配が伝わってきた。

 まさか自分が、あの昔の王様みたいな葬送を受けられるとは、思ってもみなかったんだろうな。


 魂は嬉しそうに棺の中へと吸い込まれていき、再びクレーンが動き出し——

 棺のフタが、重々しく上から閉じられた。


「さあ——鎮めの釘を打て!」


 棺に打ち込むその釘は「鎮釘ちんてい」と呼ばれ、「子孫釘しそんてい」という別名もある。


 全部で七本打たなければ意味がなく、子孫繁栄と家運隆盛を祈願するためのものだ。


 棺をふたするとき、河南一帯では孝子(こうし/死者の子ども)は近づいてはならず、家の外で控えていなければならない。


 中では釘を打つたびに、外の孝子が「驚くなかれ!」と高らかに叫ぶ。これを「釘を避ける(躲釘)」という風習だ。


 納棺時、最後の一本の釘は打ち込まずに残しておく。その釘は必ず死者の血縁者が打たねばならない。


 女子や婿養子の場合は、その実家側――つまり娘の実家や婿の父家の者がその釘を打つ。


 山東地方では、嫁いだ女性が夫の家で亡くなった場合、納棺の際に棺の蓋を釘で止めるのは、必ず女の実家の父母や兄弟でなければならない。この行為は「引釘いんてい」と呼ばれる。


 もし実家の者が来られない場合、夫側の者が勝手に蓋を釘付けすることは許されない。


 たとえ中年を過ぎ、子や孫に囲まれた者であっても、例外はない。


 この地域では「天下において舅(しゅうと=母方の叔父)こそ最大の存在」と考えられており、棺の封印には母方の親族が立ち会うことが絶対条件となるのだ。


 棺の蓋が完全に打ち付けられた後は、蓋の隙間に骨膠にかわや粘着剤を塗り、空気や湿気、埃の侵入を防ぐ。


 さらに、魔物や邪霊が死者の魂を驚かせないように、棺の上に鉢が置かれる。これは死者の魂の安寧を祈るための儀式だ。


 地域によっては鉢の代わりに青いわんを用いることもあり、その底には小さな穴が開けられていて、これが故人の守りとなるという。


 釘打ちの際、特に中央に打つ「子孫釘」は慎重に扱われる。


 この釘には赤い糸を結びつけ、それを孝子が手で引っ張りながら、大工が軽くトントンと一回だけ打つ――これでよし。意味は「子孫が続きますように」という願掛けだ。


 この釘を完全に打ち込んでしまうと、後代に悪影響があるとされている。


 長男が子孫釘を軽く叩いたことで、埋葬の第一段階は無事に完了した。


 親父は五穀を持ってきて、長男に棺の上へ均等に撒かせる。その後は、毎日三回、紙を燃やしながら泣き、香を手でひねって祈る――これを「香を捻る(ねんこう)」という。


 その他の儀式や事務的な処理は、父と俺とで代行することになった。


 今回の件は新たな葬儀ではなく、「棺の移し替え」であるため、細かい儀式は割愛された。


 棺が墓に納められた後、土を盛っていき、しばらくすると立派な盛り土の墓ができあがった。


「礼を成せ!」


 親父が声高にそう叫ぶと、お爺さんの葬送はこれで一応の完成を迎えた。


 そして親父は特別に、長男へこう忠告した――「これから墓参りに来るときは、必ず空腹で来てはならぬ。しっかり飯を食ってから来るように」と。


 三日後には「円墳まるぼ」、すなわち墓の仕上げ作業に入ることができる。


 長男は何度も頷き、必ず実行すると約束した。


 親父は一通りの段取りが終わると、「まだ他に片付ける用事がある」と言い残して先に村を出た。


 俺は親父と別れてから雇い主の家へ戻り、彼の食事や世話を続けた。


 ――そして半月もしないうちに、雇い主はもう普通の人と変わらないほど、元気に歩き回れるようになっていた。

風は東に巡り、龍の気が動くとき——このページにたどり着いたのも、きっと「縁」の導きに違いありません。


筆者・蘭亭造は、大陸・龍虎山にて古術を学び、風水・命理・陰陽五行を長年研鑽してまいりました。


干支、八字、五行方位、九星気学など、古より伝わる術数を用い、多くの方の人生に光を灯すお手伝いをしてきました。




本作はフィクションの体裁をとっていますが、登場する風水理論や相術の多くは、実際に伝わる術理をもとに構成されています。


一部は、筆者自身の体験に基づいた内容でもあります。




もし、この物語の中に、あなたの人生に役立つ「何か」があったとしたら——


それもまた、偶然ではなく必然。


このご縁に、心より感謝いたします。

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