表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/40

第十一章 父と娘の再会

 オジサンの様子を見て、俺は確信した。


 昨日、村外れの小屋にいたあの女の子――間違いなく、オジサンが探していた娘さんだ。


 まさか、こんな偶然ってあるか?


 本当はこの件には首を突っ込みたくなかったし、何も知らない通りすがりのフリでもしておきたかった。でも、もう無理だ。ここまできたら逃げられない。


「オジサン、落ち着いてください。俺、あなたの娘さんがどこにいるか知ってます!まずはこの人(雇い主)を診療所に連れて行きましょう。それから一緒に探しに行きましょう!」


 オジサンの手は震えまくり、歯を食いしばる音がギリギリと響いていた。


「……わかった、信じる!」


 オジサンはロバ車のスピードを上げ、俺たちはすぐに村の診療所の前に到着した。


 こじんまりとした診療所だが、中は煌々と明かりが灯っている。こんな早朝から開いているってことは、昨夜ずっと誰かの対応をしていたに違いない。


 俺たちは雇い主を運びながら中に入り、村の医者が慌てて駆け寄ってきた。


「どうしたんだこれは!?ひどい怪我じゃないか!早く、ベッドに寝かせて!」


 医者が雇い主の体を診ながら、ずっと首を横に振っている。これは、やばいパターンだな――と俺は直感で悟った。


「先生、この人まだ助かりますか?もし無理なら、もう連れて帰ります!」


 オジサンは娘のことで頭がいっぱいのようで、医者の反応を見て早くも諦めモード。結論を急がせて、とっとと娘を探しに行きたい様子だ。


 ……ちょっと待て。


 いくら娘さんが心配だからって、今ベッドに横たわってるのも一人の人間だぞ!?

 しかも、俺はあの人の頼みでここまで動いたんだ。報酬もまだもらってないのに、ボランティアじゃねぇんだぞ~~~


「楽観視はできません。筋肉がかなり溶けています。いったい何があったのかは分かりませんが、でも安心してください。ここは俺、ワン様の診療所だ。俺の手にかかれば、絶対に助けてみせる!」


 この医者、なんかすげぇ迫力あるぞ!? 一瞬、誰か別人に見えた。


 いや、本当にただの村医者か?

 なんか、三国志に出てくる華佗かだが現代に転生したかのような貫禄……というより、どっちかっていうと張飛ちょうひに似てる気がするんだけど!


 声も太いし、動きも豪快。何より、顔立ちと体格、しゃべり方まで張飛そっくりじゃねぇか。


 ただひとつ違うのは……この医者、見事なスキンヘッドなんだよな~~


 ……こんな村医者で本当に治るのか?

 正直、ちょっと不安ではある。


「疑ってるな?ふふん、いいか。こいつ、県都の大病院に担ぎ込まれても生き残れる保証はねぇ。でもな、ここなら……俺が治す。絶対に治す!十割の自信がある!」


 村医は俺の表情を見て、何かを察したのか、さらに安心させるような一言をくれた。


 その言葉に、俺もちょっとはホッとした。


「じゃあ先生、あとはお願いします。俺の友達のこと、ちゃんと面倒見てやってくださいね〜」


 そう言って俺は、他に片付けなきゃならない用事があるから、一旦抜けると伝えた。そしたら村医が顔をしかめて、こう言ってきた。


「……お前、まさかトンズラする気じゃねぇだろうな?」


 ――ドカーンッ!!


 雷でも落ちたかのように、その言葉が俺の脳天をぶち抜いた!


 いやいやいや、ちょっと待て。

 逃げる?俺が?

 なんでみんな揃いも揃って俺を犯罪者扱いするんだよ!


 こんなにイケメンなのに、これで三回目の濡れ衣だぞ!?

 心がズタズタだよ……でも泣かない、俺、泣かないから……


「おい、お前、身分証明書持ってるか?あればここに預けろ。そしたら一旦行かせてやる。でもな――妙な真似すんじゃねぇぞ。俺には勝てねぇからな?」


 そう言いながら、村医は白衣をバサッと脱ぎ捨てた。


 ――その下から現れたのは、筋肉モリモリの肉体と、背中一面のド派手な刺青!


 ちょ、マジかよ!?


 本当に医者かよこの人!?

 むしろ山賊の頭領とかって言われた方がしっくりくるぞ!


 たぶん武器を持って殴りかかっても、こいつには勝てねぇ自信がある……

 うん、素直に従っとこ。


「身分証、ちゃんと持ってます。ほら、預けますけど、なくさないでくださいよ〜?」


 俺は大人しく身分証を渡し、さらにポケットの中の最後の50元札をテーブルにバシッと置いた。


「先生、どうか俺の友達を……助けてやってください!お願いします!」


 俺の真剣さを見た村医は、少し口元を緩めた。

 さっきまでのヤクザみたいな顔が、だいぶ穏やかになってる。


 それが俺の誠意に心打たれたからなのか、ただの金目当てなのかは分からないけど……


「よし、預かったぞ。お前の友達、俺の手にかかったら万に一つの心配もいらねぇ!」


 その言葉に背中を押されて、俺はオジサンと一緒に診療所を後にし、再びロバ車に乗り込んで、小さな林の方へと向かった。


 道中、俺の心はずっと落ち着かない。


 頼む、無事でいてくれ――

 昨日見たあの子が、何事もなく元気でいますように。


 ほどなくして、ロバ車が林の前に停まった。


「本当にこの中に……俺の娘がいるのか?お前、俺を騙してないだろうな?」


 オジサンの顔は緊張と疑念でこわばっている。

 あいかわらず俺のことを信用していないらしい。


 ……はぁ?さすがにそれはムカつくわ。


 こっちは、重傷の雇い主を置き去りにしてまで手伝ってるのに、ボロボロの体引きずって娘探しに付き合ってやってるのに――それでもまだ疑うのかよ?


「……もういいよ、信じねぇなら帰れば?お好きにどうぞ〜」


 俺もキレた。

 こちとら、仏じゃねぇんだぞ!



 オジサンは、俺がそっぽを向いたのを見て、すぐに俺の手をぎゅっと掴んできた。

 そして、しょんぼりとした声でこう言った。


「悪かった……さっきは、疑ってすまなかったな」


 皺だらけの顔に、どこか哀愁が漂っていてさ……

 そんな姿見せられたら、こっちも怒るに怒れねぇだろ。


「……行くぞ。前に小屋がある。うちの娘は、そこにいるはずだ」


 俺が先導して歩き、おっさんがついてくる。

 ほんの2分ほど歩くと、小屋が見えてきた。

 その中から、声が聞こえる。


「先生よ、この娘、なかなかいいカラダしてるじゃねぇか。マジで俺にくれるのか?」


「嘘つくかよ。俺だってまだ堪能してねぇのに、譲ってやるんだ。義理ってやつよ」


「ハハ、さすが先生。でもなぁ……でもよぉ……俺、こういう無反応な女って、あんま興奮しねぇんだよ。もっとこう……刺激が欲しいんだよな。分かる?」


「へいへい、分かってるって!」


 その直後、女の子の悲鳴と、男の下卑た笑い声が小屋の中から響き渡った!


 クソッ、あの外道ども、やりやがったな!?

 どうやら、術者のあいつが女の子にかけてた符を外して、もう一人にヤラせたってことか――

 クズにもほどがある!


 オジサンも声を聞いて、娘だとすぐに分かったらしい。

 もう理性なんてどこかへ吹っ飛んでた。

 大股で小屋に駆け寄ると、そのままドアを蹴破って中に突入!


 ――ヤバい!殺しちまうかもしれん!


 俺は慌ててあとを追った。

 オジサンが激情のままに、人を殺しかねない気がして。


 だが、小屋の中に入ると、なんとオジサン――

 すでにあの二人をねじ伏せていた!


 うそだろ!?

 このオジサン、実は武術の達人とかだったのか!?


 そりゃあ怒鳴り声も迫力あるわけだわ……


「……お父さん……わたし……うわあああああん!!」


 娘さんは、服もほとんど破かれた状態で、

 目の前に現れたお父さんを見て、わっと泣き出した。


 父娘は抱き合って、声を上げて泣いた。


「……ごめんな……辛い思い、させちまって……」


 おっさんは、すべてを悟っていた。

 だが、娘の心を少しでも癒すために、悲しみは顔に出さなかった。


 ――そのときだった。


 床にねじ伏せられていた二人の男――

 一人はあのクソ坊主の道士、もう一人は……俺の雇い主の兄貴!


 アイツら、父娘が泣いてる隙にアイコンタクトを取り合い、

 道士の方がこっそりと金槌を取り出し、

 こっそりおっさんの後頭部を狙って――


「死ねやっ!!」


 ――ふざけんなコラァ!!!


 俺は瞬時に飛び出し、左手でその金槌を受け止め、

 右手で道士の面を思いっきりぶん殴った!


「てめぇ、俺のこと完全にナメてんだろうが!!」

風は東に巡り、龍の気が動くとき——このページにたどり着いたのも、きっと「縁」の導きに違いありません。

筆者・蘭亭造は、大陸・龍虎山にて古術を学び、風水・命理・陰陽五行を長年研鑽してまいりました。

干支、八字、五行方位、九星気学など、古より伝わる術数を用い、多くの方の人生に光を灯すお手伝いをしてきました。


本作はフィクションの体裁をとっていますが、登場する風水理論や相術の多くは、実際に伝わる術理をもとに構成されています。

一部は、筆者自身の体験に基づいた内容でもあります。


もし、この物語の中に、あなたの人生に役立つ「何か」があったとしたら——

それもまた、偶然ではなく必然。

このご縁に、心より感謝いたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ