第7話 家族
--宇宙海賊コーザの戦艦【アフォーク】内--
「船長!またいいカモがやってきましたぜ!」
「1機は知りませんが残り3機はマキシム8。安物の量産機です」
「あんなのしか買えねえ程度の雑魚なら売れるのは人間だけになっちまいますかね?」
「最近は俺らの噂が立ってカモがいなかったからな。安金でも必要だ。あいつらに言っとけ!絶対に逃がすんじゃねえぞってな!」
「「「へい!」」」
宇宙海賊コーザの連中はすでに終わった後のことを考えている。まさかオペレーターの言及した"知らない1機"の存在によって海賊業の終焉となるとはこの時は知るよしもなかった。
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一方で出撃したギャレンたちは簡単な作戦を伝えていた。
『ガガ*ギギ*ググは三人で行動。相手を倒すことよりも生き残ることを第一優先で』
『了解!団長!』
『でも俺たちもやるときはやるってところを見せてやりますよ!』
『団長には見せれなかった俺たちならではの連携力をな!』
『ははっ。期待してる』
戦端が開かれた。まず動いたのはギャレン。
「(数では6対4だけど三つ子は3人一組と考えたら6対2になる。さらに相手は指名手配されるほどの実力者。引き締めてかからないと……今度は本物だ……)」
ゴードンの時とは違い目の前にいる奴らは本当の残忍な宇宙海賊たち。ギャレンはこれが初陣のつもりで本気で戦う。
ギュン!!
ギャレンは全力で1機の宇宙海賊が乗るアンドアーマーのデントマーク3に迫る。しかし当の本人は危機が迫っていることに気が付いていない。
『は?消えやがっ』
ザン!ボン!
気が付かないままにディアマンテのレーザーソードにて切り裂かれ絶命した。しかし相手は指名手配されようとも何年間も生き残っているような歴戦の海賊たち。その一連の流れが奴らに危機感を抱かせた。
『本気でやれ!!死ぬぞ!!』
『『『おう!!』』』
一方で初めて人を殺したギャレンは、
『……まずは1人(このセリフは一度行ってみたかったんだよな~)……』
などと関係ないことを考えていた。
『『『さっすが団長!俺たちも負けてられねえ!』』』
ギャレンの早速の活躍によりやる気がみなぎってきた三つ子も戦いを始める。
『逸るなよ!』
前世ではもちろん今世でも実戦は初であり人を殺したのも初めて。特に気にしていないように見えるギャレンだが、
「(ふう……落ち着け。 相手は海賊だ。指名手配されるほどに屑の集まりだ。それは実際になんの警告もなしでアンドアーマーを出し攻めようとしたところから事実ってわかる。 俺はみんなを守らないといけない。団長だから。油断して相手に情けをかけた結果、味方を死なせるわけにはいかない……)」
表として気にしていないようにふるまっていても心では自身の行為を正当化するために言葉を並べる。ギャレンの精神は転生しようとも・ヒューマン至上主義の大国に生まれようともファンタジー種族に憧れを持つ前世の日本人のままだった。
『一斉射撃!!』
ズギャギャギャギャ!!
心を落ち着かせるためにギャレンは茫然と立ち尽くしていた。それをチャンスと踏んだ海賊たちはギャレンに向かってレーザーアサルトを一斉で放った。
『『『団長!?』』』
三つ子が叫ぶその声はしかしちゃんとギャレンに届いていた。
『安心しろ。俺は最強だ』
そう言うとギャレンは迫るレーザーアサルトの弾幕をまるで通り抜けるように回避しながら前進する。それは完全なレーザーの把握とゼロコンマのミスも許されない完璧な操作の成せる技。それは人の成せる技だとは思えなかった。
『なんなんだ……なんなんだあいつは……』
あらゆる死地を超えてきた歴戦の海賊でもその圧倒的なディアマンテの動きに恐怖を覚えるほど。
『『『団長すげえ!!』』』
そこからは一方的な戦いになった。さすがに相手の宇宙海賊コーザは三つ子の時のようにお手上げ状態にはならずギャレンに対抗して見せた。さらに控えていた増援も加わりギャレンを倒そうと全戦力を投入したがそのほとんどすべてをギャレン1人で倒して見せた。ギャレンの周囲には破壊されたアンドアーマーがいくつも浮いていた。
「くそっ!?なんだあの化け物は!?おい!?急いで逃げるぞ!?」
宇宙海賊コーザの船長コーザ・サナイゴは船員に逃げるように指示を出していた。しかしそれを阻止するように3機のアンドアーマーがレーザーアサルトを戦艦の操縦室に向けていた。
『『『さすがに逃げられないでしょ』』』
こうして宇宙海賊コーザは1人の化け物の手によって終焉を迎えた。
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仲間のもとに帰還したギャレンたちは歓待で迎えられた。
「「「うおおおおお!!」」」」
パチパチパチパチ!!
「「「団長!団長!団長!」」」
その光景にギャレンは団長を演じなくてはと考え笑顔を作る。
「……ふう……」
ディアマンテから降りてみんなに手を振る。口々にかけられる言葉に笑顔で返す。
「「「いやいや待ってくれ!俺たちも相手を倒したんだぞ!」」」
「わかってるけどあんな活躍のまえじゃあしょうがないでしょ?」
ちなみに三つ子も三人で連携することで1機倒している。そしてそこに副団長のバーグもリーシャもやってくる。
「よくやってくれた団長」
「ああ、まあ。 実質はじめての戦闘って思えばいい出来だろ?」
そう返答するとリーシャがギャレンの顔を覗き込む。
「……」
「どうしたリーシャ?」
「初めてだったの?」
「まあ厳密にいえば三つ子と戦ったけど命を賭けた戦いって言えるのは」
しかしそのギャレンの返答にリーシャは首を振る。
「寝たら?寝て起きて……それはきっと時間が解決してくれる……」
そう言ってリーシャはどこかに去っていった。
「それって……リーシャ……」
するとその場を締めるようにバーグが指示を出す。
「おらおら!作業に戻れ!拿捕した奴らの監視や連行だったりやることは山積みだぞ!」
「「「へ~い」」」
そうしてその場は解散となった。残ったのはバーグやピナや三つ子など一部の者のみ。
「確かに俺らはまだ出会ったばかりでお互いのことをあまり知らねえのかもしれねえけどよ、家族だからってすべてを知る必要もねえし家族になるのに早いも遅いもねえよ。俺たちがどう思うかだ」
「……バーグ……」
「見ろギャレン。お前がこいつらの笑顔を守ったんだ……己に誇れ団長!」
周りを見渡すギャレン。そこには安心し笑顔で作業をする家族がいた。
ガシッ!
バーグはギャレンの肩を組む。
「辛い心も家族がともにあれば救われる。だよなピナ?」
「ええ。助けてくれてありがとうギャレンくん」
なでなで
ピナに頭を撫でられるギャレン。
「恥ずかしいからやめていただけると……」
こうしてギャレンは初めてこの世界で家族を得た。
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