第3話 宇宙海賊ゴードン
ギャレンはなんとかオルタシア帝国から脱することができた。
「はあ〜。安心した〜」
天然のワープホールに入ることで追っ手から逃れたギャレンは一安心して座っていた椅子の背もたれに背中を預ける。
「これからはとりあえず近場の惑星に行って傭兵登録してお金を稼ぎながらエルフとかに会いに行かないとな」
宇宙には傭兵が存在し比較的どこにでも傭兵ギルド支部が存在する。ちなみに傭兵が存在する理由としては決して安全とは言えないこの宇宙において、宇宙海賊の討伐や危険地帯への配達などを行っていたりする。
「そう言えばこの船のこと全然確認してなかったな。なんか運んでそうな感じのことを言ってたけど?」
とりあえずギャレンは運転をマニュアルからオートに切り替えて船内を探索することにした。それによってギャレンは己の愛機となるアンドアーマーに出会う。
宇宙船内を探索中のギャレン。2つの部屋を発見しそこには本来の乗組員の2人の荷物が置かれていた。
「そりゃそうか。あの人たちの荷物もあるよな」
使えそうなものを物色し再度移動。
「最後はこの扉だけか?この先にさらに広がってなければだけど」
ウィーン
扉が開きその先は大きく開かれた場所。そこにポツンと1体の白いアンドアーマーが置かれていた。
「アンドアーマー?なんで1機だけ?」
その部屋を調べるとそのアンドアーマーについて書かれている書類を発見。そこにはそのアンドアーマーの詳細が書かれていた。
「ノヴァシリーズ第0号機"ディアマンテ"。オルタシア帝国の最新鋭機…………やばいか?」
そこでギャレンは理解した。この宇宙船がオルタシア帝国の最重要物を運んでいたことを。それにより今更になり冷や汗を流し出すギャレン。
「……ここがオルタシア帝国から近くないことを祈るか……」
それからもギャレンはディアマンテについての書類を読む。すると警報が鳴り響く。
ビー!ビー!ビー!ビー!
「なんだ?」
ギャレンは急いで操縦室へ戻る。すると近くにこの宇宙船よりも大きな宇宙戦艦が存在しそこからアンドアーマーが降りてくる。
「これって……」
出てきたのは3機のアンドアーマー。それらがレーザーアサルトを一斉に宇宙船に向ける。
『わ、我らは!?』
どもった高い声がギャレンの宇宙船に響く。それはオープン回線での相手からの通信だった。
「宇宙海賊、だよな?」
ギャレンは相手が宇宙海賊と思い緊張が走ったがその頼りない声に肩透かしを食らった気分。
『ごほん。 我らは宇宙海賊ゴードン!死にたくなければ投降しろ!少しだけ時間をやろう!その間で判断しろ!』
「時間をくれるのか。優しい宇宙海賊だな。 それともあれが普通なのかな?」
宇宙海賊に狙われたギャレン。だがギャレンの中に投降の二文字はない。ギャレンはそのまま最奥の扉を開ける。
「さあ、お前の初陣だ。オルタシア帝国の技術の粋を集めたノヴァシリーズ第0号機"ディアマンテ"。その性能を試させてもらうぞ?」
ギャレンはディアマンテに乗り宇宙海賊の迎撃に移る。
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一方で宇宙海賊ゴードンは、
「ほ!?本当にやるんですか!?バーグさん!?」
「馬鹿野郎!まだ怖気づいてんのか!もうこうするしかねえんだよ! あと船長って呼べって言ってんだろ!」
「俺らも……とうとう犯罪者か……」
「しょうがねえよ……生きていくためにはそれしかねえんだから……」
「でも……私たちが鍛えてきたのはこんなことのためなんかじゃ……」
宇宙戦艦内では船長以外の船員はなんだかやる気がなさそうな感じ。そしてそれはアンドアーマーを操りギャレンの船に銃口を向けている3人のパイロットたちも同じ。
『『『俺らって……いつまで生きていけるんだろうか……』』』
宇宙海賊といえば宇宙船を襲い略奪を繰り返す暴虐で残忍なクズの集まり。しかしこの連中を見ているととても宇宙海賊には見えない。どうやら事情があるらしい。
ビー!ビー!ビー!
急な警報。それに慣れていないようで慌てる戦艦内。
「落ち着きやがれ!ピナ!何があった!」
「え!?ええっと……どうやらあの宇宙船から1機のアンドアーマーが出てきたみたいです」
「なに!?あんな小さな船にアンドアーマー!?見間違いじゃねえのか!?」
「違うみたい」
そこには今までいなかった十代後半ほどの女の子がおり外に向かって指をさしている。そちらのほうへバーグも顔を向けるとそこにはギャレンが操る白いアンドアーマー"ディアマンテ"がゆっくり近づいていた。
「な!?なに考えてんだ!?こっちは3機だぞ!?」
驚きの声を上げるバーグ。どうやらバーグとしても進んで宇宙海賊をしたいわけではないらしい。するとその女の子がバーグにピナと呼ばれた女性オペレーターのほうへと向かう。
「ピナ。あのアンドアーマーを拡大して」
「わかった」
女の子の指示により拡大されるディアマンテ。それに対してバーグが女の子に問う。
「リーシャ!あのアンドアーマーはなんだ!見たことねえぞ!」
「……私も知らない……少なくとも表に出てる量産機とか誰かの専用機とかじゃない……今まで隠されてきた機体か……どこかの最新鋭機か……」
そのリーシャと呼ばれた女の子の返答。さらに一瞬ディアマンテが戦艦内へ視線を向けたことでバーグは言い知れぬ悪寒がした。
「動き出した」
「ガガ!ギギ!ググ!ゴードンの教えを忘れんな!」
バーグはアンドアーマーに乗っている三つ子にそう声をかける。
『『『意地汚くも生き残る!』』』
そうして戦いが始まった。先に仕掛けたのは三つ子のほう。彼らは三つ子ならではの連携力でギャレンを襲う。ただでさえ3対1と数の上でも不利であり連携力も完璧。互いが互いをフォローしてギャレン相手に有利に動いているように見えていた。
「いけるんじゃないっすか!バーグさん!」
「そうっすよ!相手は三つ子の連携力に逃げてばっかっすよ!」
一部がそう浮足立つがバーグを含めた何人かには理解させられていた。それはギャレンと戦っている三つ子も含めて。
「馬鹿野郎!それでもゴードンか! 相手に遊ばれてるかどうかもわかんねえのか!」
怒りの声を上げるバーグ。それは三つ子の心配をしての苛立ちでもあった。しかしそんな中でじっとディアマンテの動きを見続けるリーシャはその機体にもそれを動かすギャレンにも驚愕していた。
「(見ればわかる……あの機体もそれを完璧に動かすパイロットも……どちらも化け物。 ただ安心なのは戦い方に優しさを感じる点)」
これがギャレンとゴードンたちとの出会いだった。
宇宙船と宇宙戦艦の違いは大きさにある。宇宙戦艦は最低でも乗艦可能人数が10人を超えるもの。さらに船に積んである武装の違いなどもある。
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