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第12話 誘拐

惑星カイナのレイドール国にやってきたノヴァ傭兵団。レイドール国のセミス大臣宅へ秘密文書を届けに来た一同だったがなにかよからぬことが起こっていそうな雰囲気がする。

/////

コンコン


ガチャ


「ノヴァ傭兵団の方々をお連れいたしました」

「……入ってもらいなさい……」


その返事は元気がなく弱弱(よわよわ)しいものだった。ギャレンたちは屋敷に入ってからも慌ただしそうに動き回る使用人を見て一国の大臣と会う時とは違う緊張感を抱きながら部屋の中へと入っていく。


「今回依頼を受けて例の文書を運んでまいりましたノヴァ傭兵団です。私は団長のギャレン。そしてバーグにピナにリーシャという仲間たちです。こちらがその文書でございます」


椅子に項垂(うなだ)れた形で座っているセミス大臣の机に文書を置く。


「……感謝する。私がセミス・スタバールだ。この文書は長年の戦争状態が続いている敵国であるサッダー国のアーテル議員とこの無駄な戦争を終結させるための文書となっている……これで戦争にて両親を亡くした戦争孤児が出てこなくなるのに一歩進んだことだろう……」


感謝を伝えているセミス大臣だったがその言葉には力はない。なにかが起こっていることは明白でギャレンが団長として代表して質問をした。


「あの~なにかあったんですか?」

「……そうだな……迷惑をかけたのはこちらだ……君たちには話しておこう……」


顔を上げたセミス大臣がそう言って口を開いた。セミス大臣を襲った悲劇を。


「……私は様々な活動をしている……それはこの国を……ひいては国民を幸せにするため。 人間は生まれたからには幸せになる義務がある。そして私のように名門の家に生まれた者には国民を幸せに導く義務があると私は教えられて育った……」

「ご立派です」


ギャレンがそう心から伝えるとセミス大臣は力ない笑顔でこたえた。


「ありがとう……しかしそんな私の思想や活動を快く思わない者も世間に入る。 最近になり裏サイトにて私の個人情報が(さら)されるという事件が起こった……屋敷にはもちろん外出するときは私だけでなく家族にも護衛もつけ警備は万全だと思っていた……」

「なにがあったんですか?」

「……娘がさらわれた……誘拐犯の目的は私の大臣の辞職にある……」

「そんな……ひどい……」


黙って話を聞いていたピナは思わず声を漏らす。


「私はこれより大臣を辞職する旨を大統領に伝えようと思っている」


そう言ってセミス大臣はゆっくりと立ち上がる。


「あの!なにも本当に辞職しなくても大統領にそういう嘘の会見をするだけでいいんじゃないですか?」


ピナのその提案はしかしバーグによって否定される。


「いや無理だな。こんなことをする相手の黒幕には確実にセミス大臣を追い落としたいと考える内側の人間がいやがる」

「そうだね。 仮にそれで娘が帰ってきて私も大臣を続けられたとしても……またいつ家族が危険な目に()うかわからない……。 これが……守るものがいる者の弱さなのかもしれないな……」


セミス大臣は完全に心が折れているように見えた。しかしそのセミス大臣の言葉にギャレンは否定する。


「それは違いますセミス大臣。あなたは決して弱くない。 人々の苦しみを感じ取り国の考えとは裏腹に敵国とつながり戦争を終結に向かわせようとする……弱い立場の人に対して必死になれるあなたが弱いわけがない!」


熱弁するギャレン。しかし娘が誘拐され危機的状況にいるセミス大臣はどれほどの言葉をかけられようとも娘の命が大事なのは父親として当然のこと。


「ありがとう……そう言ってくれるだけでも心が救われるようだよ……」


そう返事をするセミス大臣。これから大統領へ連絡を入れるためギャレンたちを帰そうと言葉をかける。


「それじゃあここまで文書の配達依頼をありがとう。傭兵ギルドには高い評価を伝えておくよ」

「……セミス大臣……」


なにもできないギャレンはバーグに誘導されるように部屋を出ようと歩き出すがそこにリーシャがついてこない。


「リーシャ?」

「おら。帰るぞリーシャ」

「リーシャ……気持ちはわかるけど私たちにはどうすることも……」


三人がそう声をかけると今まで黙っていたリーシャがポツリと言葉をこぼす。


「……宇宙海賊カリブス……」


それはレイドール国にたどり着く前に襲撃され追い払った宇宙海賊の名前。それを突如として口にしたことにギャレンたちは首をかしげるが一番驚いたのはセミス大臣だった。


「なっ!?どうしてその名前を!?」


その驚くようでギャレンは突如として浮き上がってきたひとつの可能性を問う。


「もしかしてその誘拐犯って宇宙海賊カリブスですか?」

「……そうだ……その宇宙海賊カリブスから娘は預かったという手紙が送られてきた……しかしそれについては私は君たちに話していないはず……どうして……」


誘拐犯が宇宙海賊カリブスと分かりギャレンたちは笑みを浮かべる。


「セミス大臣!俺たちなら娘さんを助けられるかもしれません!!」


そうしてノヴァ傭兵団はセミス・スタバールの娘救出という追加依頼を請け負うことになった。

セミス・スタバール(37歳)。

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読んでくださりありがとうございます!


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