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倉庫《静 side》

「ありがとう。それじゃあ、次に行こうか」


 ────という言葉を合図に、僕達は『BAR ジャスミン』を後にした。

外で待たせておいた車に乗り込んで二つ目の目的地へ向かいつつ、彰達に連絡。

というか、情報共有を行った。

普段は一日の終わりにまとめて報告するのだが、今回はかなり重要な情報を手に入れたので。

あと、画像の編集を頼みたいというのもあった。

『こっちは正直、手一杯だから』と思案する中、彰から返信が届く。

ただ一言、分かったと。


 相変わらずクールだね、ウチの弟は。


 などと思いながら、僕はスマホを仕舞う。

と同時に、車は停まった。

どうやら、目的地に到着したらしい。

『本当に休む暇もないな』と嘆く僕を他所に、扉が開いた。

すぐそこにある大きな倉庫を見据え、僕と兄は車を降りる。

その途端、どこからか狙撃された。

と言っても、被弾はしていないが。


「どうやら、ここがそうみたいだね」


 足元にある弾痕を見やり、僕は『当たり』だと確信する。


 今日はあくまで確認だけだし、このまま引き返してもいいけど、相手に勘づかれた以上悠長にはしていられないね。

出直している間に、アレら(・・・)を他の場所へ移されたら困るから。

今、ここで決着をつけるしかなさそうだ。


 『まあ、兄上も居るし、大丈夫でしょ』と考えつつ、僕は懐へ手を入れた。


「じゃあ、突入しようか」


 筒状のものを取り出し、僕は倉庫に視線を向ける。

『正面突破でいいよね』と考える僕を前に、兄は少しばかり目を剥いた。

慎重派の僕らしくない行動に、驚いているようだ。

でも、直ぐに平静を取り戻す。


「スナイパーはどうする?」


「無視でいいよ。倉庫に入っちゃえば、あっちは撃てなくなるだろうし」


 『中で保管しているものを傷つけないためにね』と語り、僕は一歩前へ踏み出す。

すると、兄が僕の首根っこを掴んで持ち上げた。

その瞬間、また狙撃が。


「ありがとう。おかげで、助かったよ」


 自分の元々居た場所にある弾痕を一瞥し、僕はニッコリと微笑む。

と同時に、兄は首根っこを掴んだ手を離した。


「さっさとソレ投げろ」


 僕の手にある筒状のものを顎で示し、兄はスーツの内ポケットから拳銃を取り出す。

『起爆はやってやる』と述べる彼を前に、僕は


「はいはい」


 と、返事した。

そして、筒状のものを前方へ投げると、兄はすかさず拳銃を発砲。

見事、目標を撃ち抜いた。


「行くぞ」


 兄は筒状のものから噴射された白い煙を見据え、走り出す。

なので、僕もそれに続いた。


 発煙筒の改造版、なかなかいいね。これなら、スナイパーに居場所を悟られずに済みそうだ。

ただ、本来の方法と違う形で起爆したからか勢いが凄いね。


 『本当は打ち上げ花火みたいに地面へ設置して、着火する仕様らしい』ということを思い返し、僕は周囲を見回す。

が、やはり白い煙しか目に入らなかった。

『これ、下手したら迷子になるんじゃ?』と一抹の不安を覚えるものの、兄は迷いのない足取りでどんどん前へ進む。

────と、ここで足を止めた。


「倉庫の入り口についた。静も拳銃を出しておけ」


 野生の勘なのか、何なのか……兄は目的地へ辿り着いてしまった。

カチャリとサングラスを押し上げる彼の前で、僕は


「分かった」


 懐から自前の拳銃を取り出す。

と同時に、兄の顔を見て小さく頷いた。

準備万端だ、と示すために。


「じゃあ、お前は三十秒くらい時間を空けて入ってこい」


 スナイパーから倉庫の警備をしている者達へ情報が流れていることを危惧し、兄はそう指示する。

『オーケー』と素直に了承する僕の前で、彼は前を向いた。

かと思えば、観音開きの扉を開け放って倉庫へ突入。

直ぐさま、複数の銃声と悲鳴が飛び交った。


 そろそろかな?


 体内時計でおおよそ三十秒経過したことを確認し、僕は慎重に中へ足を踏み入れる。

周囲を警戒しながら目の前の棚へ駆け寄り、辺りを見回した。

と同時に、口角を上げる。


 あぁ、やっぱり────外部の勢力が武具を隠していたのは、ここだったか。


 等間隔に並べられた棚から銃や防弾チョッキを見つけ、僕は改めて確証を得た。

『寝る間も惜しんで捜索した甲斐があった』と思いつつ、ホッと胸を撫で下ろす。

この量の武具が他者の手へ渡る前に確保出来て良かった、と。

無論まだ安心出来ないが、供給源を押さえられたのはかなり大きい。


 いくら売人や購入者を捕らえても、大元を絶たなきゃ意味がないからね。


 『また新しい人材を探せば、いいだけだし』と肩を竦め、僕はスマホを取り出す。

────と、ここで倉庫の奥から兄が姿を現した。


「一先ず、中に居た連中は全員倒した。何人かは生け捕りにしたから、後で尋問しとけ」


「了解。仕事が早くて、助かるよ」


 『お疲れ様』と労をねぎらい、僕はスマホで部下に連絡を取る。

さすがにこの量の武具を車一台で運び出すのは、無理そうなので。

『忙しいところ悪いけど、手伝ってもらおう』と思案する中、兄が目の前の狙撃銃を手に取った。


「えっ?それ、どうするの?」


 『まさかのネコババ?』と驚く僕に、兄はこう答える。


「外のスナイパーを撃退するのに使う。運搬のとき、撃たれたら困るだろ」


「あー、そうだね」


 曖昧に笑って返事する僕は、少しばかり考え込んだ。


 本当は部下にスナイパーの始末を頼もうと思っていたんだけど……兄上に任せようかな。やる気満々みたいだし。

それにどうせ、もうやることもないからね。


 見張りの意味合いも兼ねてこの場で待機するしかない現状に、僕は『ぶっちゃけ暇だよね』と思う。

まあ、休息を取れると考えれば悪くはないが……こんなところでただ突っ立っていても、疲労なんて癒せないだろう。


「じゃあ、スナイパーのことは兄上に任せるよ」


 そう言って顔を上げると、怪訝な表情を浮かべる兄が目に入った。


「はっ?何言ってんだ?」


「えっ?」


 動揺のあまり目を見開く僕は、『何って……?』と聞き返す。

すると、彼は手に持った狙撃銃をこちらへ差し出した。


「お前もやるんだよ」


「んん……!?」


「てか、お前が殺るんだよ」


「はい!?」


 特に殺人に抵抗はないものの、まさか自分にその役目が回ってくるとは思わず……目を白黒させる。

『兄上が殺るんじゃないの!?』と困惑する僕を前に、彼は大きく息を吐いた。


「あのな、いくら俺でも居場所の分かんねぇスナイパーを狙撃は出来ねぇーよ」

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