【2話-1】収納!収納!収納!
タリスは岩を粉砕した直後、家にすぐさま帰り、両親に叱られる前に皿とスプーンを食卓に並べた。
両親は急に飛び出していったタリスを不思議に思ったが、また魔法の練習をしに行ったのだろうと、責めはしなかった。タリスは家族とともに朝食を取った。
家族には魔法を収納することができて、岩が砕け散ったことを話さなかった。
まだよく分からなかったのだ。
フレイムの魔法を2つ出したのに大きな火球が1つしか出なかったこと
2つのフレイムの魔法を合わせた魔法で本当に岩が割れたのか
今朝は時間がなかったので2つのフレイムだったがもっと多くのフレイムを入れたらどうなるのか
そんなことを、イチャイチャしている両親を尻目に考えていたら、
「兄ちゃん!
なんかいいことあったの?
森できれいな石でも拾った?」
「兄ちゃんは英雄になる方法をやっと見つけたんだ。
ラピにも今度見せてあげるよ。」
妹のラピに小声で話す。
タリスは5兄妹の3番目だが妹にも弟にも超優しい。
妹たちを溺愛している。
英雄になるための努力を惜しまないタリスは、年上にも年下にも愛を忘れないのだ!
両親のイチャイチャタイムには自分の愛は捧げないが・・・
朝食を食べ終えたタリスは、早速森にでかけ、粉砕した岩とは別の岩に、収納したフレイムを当てることにした。
【フレイム】
【収納】
―――――――――――
【フレイム】
【収納】
【取出】
毎回全力の火球を出すために、10セメリも待つ必要があるのが億劫だと思いながら、大きくなった火球が岩に当たるのを待った。
バーンと火球は岩に当たったが、岩は砕け散らなかった。
「あれ?
今朝は2個収納して岩が割れたけど、やっぱり毎日フレイムを当ててたから脆くなってたかな?
それに、火の玉を取り出すときは、石とかと違って混ざって1つになるみたいだな。
つまり、たくさん収納して取り出せば、もっと大きな火になりそうだな。
とりあえず10個収納して取り出してみようかな!」
タリスは100セメリの間フレイムを唱えて、火球を出して収納するのを繰り返した。
「時間かかるな―・・・
大変だけどやっと10個フレイムを収納できたから、取り出してみよう!」
【取出】!!
現れた火球はタリスの倍、彼の父親ほどの大きさの火球になっていた。
火球の速度は速く、目にも止まらぬ速さで岩に直撃した!!
岩はバーンと音を立て2つに割れたが、火球から岩に燃え移った火は消えなかった。
「森に燃え移ったらまずい!」
タリスは
【スプラッシュ】
と唱え、手から水球を発射した。
岩と火に水球が命中し、なんとか火を消すことができたタリス。
「危なかったー
火が木に燃え移ったりしたら僕のスプラッシュじゃ到底消せないとこだった・・・
それにしてもフレイム10個分の火の玉はすごいな!
石が割れたし、火もすぐに消えなかった。
待つのが面倒だけど・・・」
タリスのフレイムは火球の大きさによって、次に魔法を唱えられる待機時間が決まっていた。
家の釜戸に火をつけるなら次に魔法を放つのに1セメリもいらなかった。
「今度は弱火でフレイムをためてみるか!
今の収納限界は30個までだからすぐでしょ!
今収納されてるものを全部出して・・・」
【フレイム】【収納】【フレイム】【収納】・・・
タリスは親指ほどの小さい火球を収納し続けた。
「いや、小さいフレイムでも30個も収納するの疲れるな!」
脳内で乱雑になったフレイムたちを一度集めるためにタリスはこう唱えた。
【整頓】
「よし、30個フレイムが集まってるかな―?」
【タリス脳内】
フレイム《10》フレア《1》
「フレア??????」