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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

歌舞伎町の大葉子


「オオバコって草を知ってる?」


歌舞伎町の小さなウイスキーのバーで

いきなり話を振ってきた女性がいた。

「オオバコ?」


「これ」

携帯電話には

つくしのような緑の雑草が写っていた。

ため息をついて1人で飲んでいる僕を

心配して話しかけてきたのだろうか。


「あの山道によく生えてる草ですね。

知っています。

僕も事情があって遠い地方から

歌舞伎町に来たんです。

この街の人ならわかるでしょうが

都落ちってやつです。

この草、何度踏まれても起き上がるんですよね」


タバコの香りと

ウイスキーの香りがする女性は

話し続けた。

「人間もまた踏まれても踏まれても

また起き上がって再生するんだよ」


「この草には不思議な生命力がある。

 傷を浄化する力。元に戻る力。

 カタルシスとホメオスタシス

 ですね」


僕はストレートのウイスキーを

グッと飲む。

焼け付くようなアルコールの感覚。

12年もののスコッチの味が舌に広がる。


「私、すべての命には生きる力があると信じたいんだ」


「生きる力、わからんとです。僕には」


僕は店を出て新宿の公園で始発を待った。

もう夜が明ける。


酔い覚ましの缶コーヒーを

飲んでいると

ふと僕の目に雑草がこびりついた。


こんな大都会に

この草が生きているとは。


踏まれてボロボロになったオオバコが

朝日を浴びて光合成をしていた。

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