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小説家になろうラジオ大賞4

隻腕の天才ピアニストは、私と伴にソナタを奏でる

作者: 夜狩仁志

小説家になろうラジオ大賞4 参加作品。

テーマは「天才」


投稿時間、間に合いませんでしたね……

 彼よりも先に退院させられる。

 私は擦り傷と打撲の軽症ですんだため。


 でも、彼が……


 学校帰りに幼馴染みの彼と一緒に歩いていると、トラックが突っ込んで来た。


 そこを彼が私を突き飛ばす形で身代わりになり……


 この事件は社会に大きく報道された。


『天才高校生ピアニストが事故!』

『世界的ピアニスト、右腕を失う』


 学校では既に噂が広まっていた。


(あいつをかばったせいで)

(天才の代わりに、あいつが轢かれれば)


 私は学校の皆から非難され、教師らも口には出さないが蔑む目で私を見てきた。


 彼の家族からも心無い言葉を浴びせられる。

『あなたのせいで!』


 守ってくれるはずの家族でさえも、

『お前はなんてことをしてくれたんだ』


 わき見運転をしていた運転手を差し置いて、全ての責任が私へと向けられていた。


 でも、それは私も思う。


 なんで私が助かって、天才の彼が?

 しかも右腕を失うなんて。

 私なら別に死んだって、誰も困らない。


 ある日、私は彼に会うため病院へ。


 どんな顔して会えばいいの?

 もし恨み言や憎しみの言葉を突きつけられたら。


 そう思うと何度も引き返そうと思うが、どうしても会って謝らなくては、と感じていた。


 ようやくICUから一般個室に移った彼。


 私は今にも吐きそうなのを抑え、扉をノックをする。


「……」

「来てくれたんだ、ありがとう」


 ベッドに横たわった彼の右腕の袖は、力なくペタンと垂れ下がっていた。


 夢であって欲しかった出来事が、現実だと痛感させられ、その場で泣き崩れてしまう。


「ごめんなさい! 私のせいで」

「なんで謝るの?」


「だって右腕が!」

「僕にはまだ左腕があるよ。でも君の命は一つしかない」


「私なんかどうなってもいい。これじゃあピアノが弾けない」

「あのね、僕は別にピアノに興味なんてないんだよ。

 覚えてる? 昔、君の前でピアノを弾いた時のこと。僕の演奏を喜んでくれて、それに合わせて歌ったり踊ったりして。

 それがすごく嬉しかったんだ。だからもっと喜んでもらおうと練習して。そしたら回りが勝手に天才だとか言い出して。

 ピアニストとか関係ない。君が無事でいてくれれば」


「……ありがとう」



 その後、彼は演奏家として世界を回ることに。


 今日もその独奏会。


 壇上には一台のピアノ。

 鍵盤の前には椅子が2脚。


 左は彼。


 右は私。


 彼の生み出す伴奏に、私がメロディーで色を付ける。


 そう、世界で類を見ない2人1組の演奏家。


 公私ともにパートナーとなった私たちは、


 今日も(とも)にソナタを(かな)でる……


この作品をお読みいただき、ありがとうございます。


この作品が、なろうラジオ大賞4の13のテーマを使用した短編の13個目となります。


他の作品も読んでいただいた方は、ありがとうございます。

まだの方は、読んでいただけると嬉しいです。


今回も多くの方に読んでいただき、評価、感想をいただき、とても楽しい時間を過ごさせていただきました。

また次回も参加させていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。


ではまた、どこかの作品でお会いしましょう。


皆様の2023年が、良い年となりますように。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 素敵なお話でした。 途中「これどうなるんだろう?」と心配しましたが(字数の関係) きれいにまとまってて良かったです。
[良い点] 不慮の事故、どうなるのかなと見守っていたら、タイトルが最後に繋がっていて、ふたりで奏でる美しいメロディが楽しそうで素敵でした! ありがとうございました!
感想一覧
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