第三十四話 ジュノ編 ~北の草原~
リューザたち一行は夕焼けに染まる草原の道を北西の方へと進んでいた。
あの後リューザはシフォンダールの町の北西の門を通り、町の外へと出ていったのだった。
「それにしても、あの町の他に人が集住してる場所があったなんてね。正直驚きだわ」
馬を引きながらブレダが言う。
「ブレダさんたちは、南から来たんでしたよね? それなら、そう思ってしまうのも無理はないと思います。なんせ、南には村どころか人一人住んでいませんからね。北の方はもともと王国との繋がりとか何とかで、そうでもないんですよ」
荷車を押しながらクレルが答える。
「今でも北には人が多く住んでるの?」
「そうですね。以前よりは減っていると思いますよ。王国が関所を封鎖してからは特に顕著です。まあ、ぼくの村は例外的に移住者は出ませんでしたけどね」
「移住者か……」
移住者と言われて思い出すのは、町で見かけた貧民街の連中たちだ。恐らく、北の村からの移住者は町の北部に住み着いているのだろうか。
リューザたちは町を出る道中にシフォンダールの北西部を経由したが、同じ貧民街とはいえど南部とはいたく様子が違っていたのを思い出す。
「そういえば、シフォンダールは北部の方が安全そうな雰囲気だったよね? クレルはどうして態々、南部に来ていたの?」
リューザが質問をするとすぐさまクレルから答えが返ってくる。
「闇市場ですよ。ああいう手合いに会う危険はあっても規制が少ないんです。町の南部以外だと中々こんなに沢山の武器は調達できませんよ」
そう言うクレルの隣まで来るとブレダは荷車の白い覆いを少し捲って中身を見る。
「武器もかなり買い込んでるみたいね。こんなに持って行って一体何に使う気なの?」
その質問にクレルは少し苦い顔をする。
「うーん……。ぼくからはあまり言えないです。でも、村に着けば村長がきっと話してくれると思いますよ」
クレルは濁すようにそう言う。そんな彼の困った様子を察してか、リューザは別の話題で助け舟を出す。
「ところで、クレルは一人でここへ来たの?」
「はい。村では自由に動ける人が少なくて……。こうして、よく町まで買い出しに行ってるんです」
その言葉を聞いてリューザは少し顔を緩める。
「そっか……。大変なんだね……」
「いえ、村のためだと思えばどうってことはありませんよ」
クレルは胸を張って答える。
そんなクレルにリューザは少し疑問を持ち始める。なぜ、彼はここまで村に尽くそうとするのか、町で買い込んだ武器は一体何の目的なのか、彼の村で今一体何が起こっているのか……。恐らく、その疑問は村にたどり着けば自ずとわかることだろう。
とにかく、これから行くジュノ村にも何か秘密がありそうだ。そんなことを考えているとクレルから声がかかる。
「見えてきましたよ! あれがジュノの村です」
「ふふっ! まさか今日中に着けるなんて思ってなかったわ!」
クレルが指さす方向を見てみると、北に広がる山々の麓から煙が上っているのがわかる。どうやら、村では丁度夕飯時のようだ。一行はゆっくりと足を進めていくのだった。




