プレゼンテーション
シオン達しか内容を知らない筈のダンジョンについて、ギルドマスターに話が有ると言ってきた人物は誰なのか?
「分かりました。とりあえず、ギルドマスターに聞いてきますのでお待ち下さい。」
「分かった。」
数分後に受付嬢さんが降りて来た。
「ギルドマスターがお会いになるそうです。」
「では、会いに行こう。」
俺はギルドマスターの居る応接室に入ると、対面にギルドマスターが待っていた。
「初めまして。この王都の冒険者ギルドを預かるギルドマスターだ。」
「初めましてだ。とある理由で現段階では、自己紹介を出来ない非礼を許して欲しい。私の自己紹介は此方が用意したモノを受けてくれる時に出来るだろう。」
「まあ、構わないよ。此方としても、出入口が開かないダンジョンは悩みの種だからな。」
「では、話を始めようか。」
「それでは、なにを話してくれるのだね?」
「あのダンジョンは、ギルドマスターの返事の内容で、開く日が決まると言って良い。」
「どういう事だ?」
「ギルドマスターよ。ダンジョンの事をどれ程知っている?」
「資料によれば、世界で初めて魔王が現れ、討伐した後に現れたモノだ。中は様々な内観で有り、洞窟や氷の世界、火山や密林だったりと色々有る。
共通点が、そのダンジョンを管理をし支配するダンジョン・マスターと呼ばれる存在と、ダンジョンの全てを維持するダンジョン・コアが存在する。
ダンジョン・マスターが死ぬか消滅すると、そのダンジョンは制御が効かなくなり、現状維持になりダンジョン内のモンスターは増えもせず減りもしない。
そのダンジョン・マスターがそういった理由で不在の時にダンジョン・コアに触れるとその者が新たなダンジョン・マスターになる。そして、ダンジョン・コアを破壊するとダンジョンそのものの崩壊が始まる。」
「素晴らしい資料だ!」
「それはどうも。それで、そちらの返事は?」
「ダンジョンは攻略し、破壊するものでは無く、利用するモノだよ。
ギルドマスターに問う。ダンジョンは危険だとして破壊するモノか? それとも危険を承知で利用するモノか? 」
「……危険でも利用するモノだ。」
「充分な返答だ!」
「此方も暇では無いので、本題に入って欲しいのだがな。」
「そうだな。此方の望む返答が出された以上は本題に入ろう。」
「やっとかい。待ちくたびれたよ。」
「改めて自己紹介をしよう。私の名は『カカリ』だ。立場はダンジョン・マスターに仕えるモンスターの1体だ。役目は、ダンジョン・マスターの言葉をそちらに届ける事。」
「何だって!?」
「分かっていると思うが、此方に敵対の意志は無いぞ。」
「分かっている。話を続けてくれ。」
「あのダンジョンの主、ダンジョン・マスターは変わり者で、最初の1階層から3階層までは弱者救済に充てる。」
「どういう意味だ?」
「例えばだが、冒険者で生計を立てている家族で、その冒険者がいなくなり、周りが残った家族を助け無かった場合は、その家族はどうやって生活が出来ると思う?」
「そうだな。冒険者がいなくなった後の家族だと、奥さんが働くしかないな。そして家族という事は子供も居るだろうが、働ける年齢では無い場合は、……!? そういう事か!」
「そうだ。冒険者にすら成れない年齢の子供を抱える家族を助ける為にダンジョン・マスターは、その3階層をある程度開けた林の階層になっており、薬草がそれ相応に採取出来る様になっている。
勿論、足りない様なら増加して多すぎる様なら減らす。階層が3つ在るのは薬草の回復に2日掛かるからだ。」
「そうか。毎日を順番に回って行けばかなりの薬草を期待出来るな。
……!モンスターは、どうなる?」
「3つの階層にモンスターは出るが、最弱中の最弱で食肉用のモンスターともう1種類のモンスターの2種類しか出ない。」
「食肉用のモンスター? そうか。幾ら、頑張ってもたかが知れている。だから、一緒に小さい子供でも倒せるモンスターを用意する事でその日の食料を出す訳か。ん!? もう1種類は何だ?」
「最下層に居ても可笑しく無い強力なモンスターを配備している。」
「な!?」
「勿論、このモンスターはその子供達を襲う事は無いが、その子供達を襲う馬鹿には襲う。つまり、不正防止役と子供達の護衛役をする為に居る。」
「そうだな。冒険者の中にはそんな子供の上前を奪うヤツは居るかもしれないからな。」
「だから、現役を引退した者や引退を考えている者で、周りから信頼されている者に子供達の移動中の行き帰りの監視と護衛をさせてはどうだ?」
「確かに。それならば、まだ動ける冒険者に仕事が回せる。」
「その冒険者を雇う為の費用は、此方から出そう。モンスターや魔石等でな。少々過剰気味に渡す。余りは、子供保護等に使え。まあ、たまに調査してその金がギルドマスターの懐に入っていない事を祈るがな。」
「そんな事をするか!」
「費用はどれくらい掛かる?」
こうして、ギルドマスターとの細かい所を話し合い互いの納得いく形に落ち着いた。
「では、ギルドマスター。それで頼みます。」
「分かっている。それで『カカリ』殿、君がダンジョン・マスターではないのか?」
「それは、正解であり不正解ですな。」
「そうかい。」
「そうです。それは知る必要の無い事ですな。」
俺は応接室を出ると酒場でうつ伏している俺が見えて、頭の中で命令した。
(では、手筈通りにやっておくように。)
(分かりました。マスター。)
応接室から出た男は、買い取りの窓口に行き、受付嬢に幾つかの魔石を渡す。
「この魔石は、ギルドマスターからの指示に従い処理をお願いします。」
「ギルドマスターからですか?」
「直ぐにギルドマスターは降りて来ますよ。では、失礼するよ。」
俺は男と窓口の受付嬢のやり取りを聞いていると、ダンジョンの調査をしていたと思われる冒険者達が戻って来た。
「ダンジョンの調査から帰って来た。ギルドマスターに通してくれ。」
「お疲れ様です。直ぐにギルドマスターに通して来ます。」
「ああ、頼む。」
「受付嬢さん。今日は忙しそうなので帰ります。」
「そうですか?」
「ええ、また来ますよ。」
こうして、俺達は冒険者ギルドを後にして帰った。
それから2週間過ぎて、俺達はマスタールームで冒険者ギルドの玄関前の映像をミアとシアの3人で見ていた。
「見て、子供達があんなに居るわ。思っていたよりも多いわ。」
「そうね。また後にでも、王家に文句の1つでも言っておこうかしら。」
「シア、程々にな。どうやら、ギルドはきちんと動いているようだな。」
「そうみたいね。ねえ、ダンジョンはどんな構成なの? 結局は出来てからのお楽しみとか言いながら今日まで引き延ばして、いい加減教えて。」
「ミア、分かったよ。」
「早く、私を待たせないで。」
俺は甘えて来るミアを抱き上げ、頭を撫でながら話し始めた。
「最初の3つの階層はご存知の通りに場の設定は『林』だ。手に入る物は薬草だ。たまに高価な薬草が出ている。
次はモンスターだが、武器が無くても子供でも倒せる最弱中の最弱の食料になるモンスターと監視と護衛の役割を持つ強力なモンスターがいる。
監視役のモンスターは、子供達からの攻撃からは無視して反撃しない様にしてある。
但し、子供以外から攻撃行為をした場合は潰す。まあ、知能は高くして有るから、ある程度は自己判断出来るけどな。」
「ふ~ん。子供達と冒険者をどう分けるの?」
「ミア、それはな。ダンジョンに入ると、最初は4つの行き先が有る。ダンジョンの出入口から真っ直ぐ延びている通路が冒険者用でトンネルみたいな通路だから途中から『薬草の林』に入る事が出来ない。
次は『薬草の林』に繋がる左右の出入口だ。此処から子供達が入る事になる。一応は出入口にも、監視役モンスターを配置しているから、冒険者は此処から入る事が出来ない。
最後に下に繋がる階段が有るが、これは2階層に行く為の階段だ。下の2つの階層の出入口はこの階段のみになる。
だから、基本的に冒険者はこの最初の出入口からしか、『薬草の林』に入る事が出来ない。後は、下の階層の方が価値の高い薬草が手に入り易い。
だから、ズルをする子供が居るかもしれないから、そういう意味でも出入口に監視役のモンスターが居る。」
「では、4階層からの冒険者用のダンジョンはどうなっているのかしら?」
「シア、冒険者用では有るが、4階層から6階層までは新人冒険者用の研修の場になっている。」
「どういう事かしら?」
「6階層までは、出入口が3つ有る。左右の出入口がその階層のダンジョンで、真っ直ぐ延びるトンネルの通路を進むと下の階層に繋がる階段が有る。
つまり、強い冒険者は雑魚と戦う事無く、自分達に合う階層に行く事が出来る訳だ。」
「じゃあ、新人研修用のダンジョンはどうなっているの?」
「4階層は左右で難易度が違う設定だ。3階層から降りた状態で右の出入口から入ると迷宮で出てくるモンスターはゴブリンで単体のみと同じく単体のホーンラビットだ。
此処でモンスターと戦う事を覚える。左の出入口から入ると、同じく迷宮で出てくるモンスターも単体だが、出るモンスターがウルフの場合かボアが出る場合の2つだ。」
「では、5階層はどうなっているのかしら?」
「5階層のダンジョンの構成は上の階層と同じだな。
右の出入口から入ると、同じく迷宮で出てくるモンスターもゴブリンとホーンラビットと同じだが、単体では無く3匹から6匹の団体で出現する。
それで、左の出入口から入ると、同じく迷宮で出てくるモンスターもウルフとボアと同じだが、此方も3匹から6匹の団体で出現する。」
「6階層は?」
「5階層と同じだが、この階層には罠が存在するが擦り傷程度で済む落とし穴や床や壁の仕掛けを押したり踏んだりすると発動して上からコップ1杯の水が落ちてくる。パシャってな。」
「それだけかしら?」
「後は、4階層の迷宮の行き止まりとかに、宝箱が存在する。中身は鉄の武器がランダムに入っている。鉄の剣か鉄の短剣か鉄の槍が入っている。」
「5階層は?」
「5階層も行き止まりに宝箱が有るが、中身がランダムで、鉄の武器では無く鋼鉄の武器が入っている場合が有る。」
「6階層はどうなのかしら?」
「6階層の行き止まりの宝箱の中身だが、鋼鉄の武器のどれかが入っている。」
「他には?」
「4階層から下の階層は、モンスターを倒すと魔石に変わる。勿論、モンスターの強さによって魔石の価値も変わる。ダンジョン内のモンスターを倒しても、地上のモンスターの様に牙や爪や毛皮等は出ない様にしている。これで、地上のモンスターが増えすぎる事が無い様にしている。」
「もう無いの?」
「後は、4階層の迷宮だが、かなり簡単で見え易い構成にしている。5階層は4階層よりか、難しくなっている。6階層は普通の迷宮だ。」
「すんごい考えているのね。」
「素晴らしい考えだわ。」
「お褒めに預り光栄です。」
俺は抱き付いて来たミアとシアの頭を撫でながら、ダンジョンの映像を見ていた。
「さて、実質的な俺のダンジョン・マスターとしてのデビューだな。」
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