この世界は、魔法という理不尽な力が常識
仕事と地震の影響で端末使えず暫く更新できず。。。
また頑張りますのでよろしくです!
この日は周りからの痛い視線を感じながら過ごすという最悪な1日になったわけだが、寺島 忍のフォローもあってなんとか過ごした。
だが悪いことばかりではない。
学生という設定で本当に助かったと思えた瞬間でもあった。
この世界に無知な俺にとって学校の授業は全てが新鮮だった。
今まで数学、古文、科学、日本史、やりたくもない勉強を受験のためだ将来のためだと必死にただ脳内に詰め込んでいた学生時代、社会人になって勉強から解放されるのかと思えば、就いた職種の基礎的な知識から、業務と関係なさそうな資格の取得、おまけに上司や関連会社の役員に気に入られるために無駄な労力や知識を、疲れた仕事帰りにビール飲みながら参考書など読んで勉強したもんだ。
人生は毎日が勉強とはいうものの、自分が求めていない知識を習得し続けるのは苦痛である。
今それが役に立たなくても将来きっと役に立つ時もある。そう自分に言い聞かせ、努力し稀に役立つ時もあったが費やした時間と天秤にかけたとき、絶対的に効率の悪い作業だったと振り返っても思う。
だが今日受けた授業は、そんな感覚に陥らなかった。
授業項目がもはや笑えてくる。
一時間目 運動(一時間永遠にランニング)
二時間目 国内史
三時間目 魔法工学基礎
昼飯
四時間目 マナ攻撃
五時間目 マナ支援
六時間目 マナ防御
マナとは魔法エネルギーと呼ばれる意味不明なこの世界の基盤でもあるよく分からないエネルギーの通称。
なんでも大地や空気には常に魔法エネルギーが滞在しており、人間はそれを常に取り込み吐き出す。この世界の人間はその魔法エネルギーを体内で貯蓄、製造が可能で、訓練を積めばその魔法エネルギーを消費することで、ゲームとかによくある、炎とか水とかを任意で発動し様々な用途に使えるらしい。
国内の歴史に関しても昔からマナの存在があることを除けば、割と元いた世界の歴史に近い。
登場人物までは流石に同じではないが、連想しやすく歴史に関して大まかには理解できた。
ただやはりマナの影響のせいか歴史がおかしい方向に行ってる部分もあるので、これからしっかり勉強しようと思う。
また魔法工学ってのは、人間のマナを電源として動かす機械技術全般のことを指すらしい。
ここまで乗ってきたシルムーヴもそうだし、今持っているスマホもそうだ。初めて使用するときに何か身体から流れ出ていく感じは俺の体内のマナがスマホに流れたからだろうと推測できた。
そしてマナは訓練しなければ自由に扱えない。魔法工学は訓練を積もうが積まなかろうが誰でも便利に使えるものを作ることが目的として作られ始めたのが経緯らしく、マナを扱う能力の差はあまり関係ない。
魔法を扱うのもセンス、潜在能力も不可欠と。なんか前の俺の世界も魔法では無いにしろセンスや潜在能力ってのはやはり大事だし、それで人生変わるからな。
人間が世界に蹂躙する以上その価値観は恐らく変わることは無いのだろうと改めて思った。
午後のマナシリーズ授業は見学だった。
魔法工学による様々な器具はマナの扱いの能力が低くても使えるが、この午後の授業はそういった機械などを使わずに自分自身で魔法エネルギーを行使、変換などをして行う授業らしく、当然今までそんな奇想天外能力なんて無かった世界の俺が突然できるわけもない。
午後の時間は途中から精密検査みたいなやつをやっては見学に戻る。また呼ばれては検査。また戻るを繰り返した。
そして六時間目が終了する間際に再び椿 飛鳥担任から呼び出しがかかり、小さい面談室みたいなところで話をした。
ーーまぁあれだ。
結論から言うと、人間である最低限のマナ保有量、生産量はあるが、全ての潜在能力のマナ関連全て赤子以下だったらしい。
訓練努力で伸びるらしいがここまで適正値が無い人間は見たことがないとさえ言われた。
なんか人間じゃ無いって言われてる気分だ。
ただ手がないわけではない。
強制的に潜在能力をあげる方法もあるらしく、それはマナへの適正値や適応力が低ければ低いほど効果があるという話だ。
まさに俺のためのシステムだと思った。
前の世界でも平民平凡だった俺だが、この世界では普通以下の潜在能力設定だなんて何の為に新しい世界を求めたのか分からなくなる。
折角世界が変わったって、その世界で活躍する能力が無いのなら前の世界より酷い未来が待ってるに違いない。
椿 飛鳥の説明も全て聞き終える前に返事をしようとした時、自分の耳元で声が聞こえた。
『だめだよ。君はそれで人生エンドだ』
そこにはルディの姿があった。俺の顔は見ずにじっと椿 飛鳥の顔を見つめている。
ふざけている様子は無い。
「どういう…意味だよ」
聞き返そうと声を出した瞬間、校内に聞きなれない甲高い音が鳴り響いた。
火事の時流れるサイレンみたいな音だ。
「あらごめんなさいね明さん。このお話はまた後日。教室に戻って待機してて、ちょっと騒がしくなるから」
椿 飛鳥は特に動揺もせずニコッと笑い部屋を出て行った。
何やら校内も騒がしくなっていて、廊下を走る生徒も多数すれ違った。
指示通り俺は教室へ戻る。
道中突然ルディが話しかけてきた。
「人前で僕と喋るのはオススメしない。僕が君に必要なことを伝えるときはさっきみたいに君の体内のマナに共振させて伝える。わかったね?」
真面目な声のトーンで言うものだから、「わかった」と色々質問したいところだったたが素っ気なく返事をしてしまった。
まあいい。
さて…
体内のマナに共振?声を伝える?
厨二病全開で考えてある程度は理解できる。
さっきのルディの言葉は俺の脳にだけ聞こえるようにした伝心なわけで、これもまた魔法エネルギーの活用。
なるほどなんでもできるんだな。
そりゃ魔法魔法マナマナうるさい授業てんこ盛りなわけだ。
この世界は恐らく最も重要な能力はマナなのだろう。
喧嘩が強いとか、金持ちだとか、賢いとかそれ以上にマナという力が絶対的に必要な世界なのだろうと悟った。
そして我に帰る。
とすれば、そのマナへの適性も適応の皆無な俺の人生って詰んでるんじゃないのか。と。
「まじ、既にこの人生クソゲーだな…」
色々昔の事も思い出していたらつい呟いてしまった。