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世界は新しく生まれ変わった

よろしくお願い申し上げます!

 何日死んでいたのか定かではない。


 あの金髪の少女の言葉を解釈すれば恐らく死んでいた事は間違いない。


 が、ある意味味わう事は出来ないであろう体験が出来たのは事実だ。経験というものはやはり重要である。



 そこで俺の中である問題が生まれた。


 睡眠と死の境界が今回の経験でわからなくなった。

 人はいつか死ぬ。


 しかしこの体験をしてしまうと睡眠することが怖くなる。


 この意識の無い『無の時間』は、自分の意識が再び覚醒した俺にとって睡眠と何が違うのか本当にわからなくなる。この世に意識が戻る事が確率的に高いのが睡眠であって、限りなく可能性が無いのが死だと括っても良いぐらいだ。


 そして死ぬ間際に起きたあの恐怖。苦痛と呼ぶべきなのか?

 あの感覚も、もう二度と味わいたくない。


 あれを『死への痛み』と仮定して名付けておこう。


 まぁ死について語りたい訳ではないのでこの辺にしておくとして。



 俺は目覚めた。


 目覚めた場所は馴染みのあるベッドの上だった。

 周りを見渡しても結婚してから建てた一軒家の俺の部屋に間違いない。殺風景な部屋で白い壁紙に茶色い机がひとつ。姿見の鏡に漫画とラノベの小説が並ぶ本棚、そしてこのベッド。


 それこそ夢でも見てたのかと錯覚するほど何も変わらない。





 ーー!!!!!



 ベッドから身体を起こし、徐ろに姿見に写る自分の姿に驚愕した。自分の眼で自分の姿を確認しているはずなのに自分ではないのではないかと本気で思うほどあり得ない現象を目の当たりにしている。



 俺はこれからそういう経験を嫌というほど味わい、ここが確かに一度死ぬ前の世界とは異なる事を実感していく事になる。


 その始まりが正に自分の身体という訳だ。


 長く綺麗な黒い髪に可愛らしい顔、膨らんでいる胸部に違和感しかない下半身、細身で弱々しい肉体。


 これは間違いなく女性の身体である。

 そして明らかに若い。


 そういえばあの金髪の女の子が呟いた呪文に「17歳と設定」だがなんだか言っていたのを思い出し、こういうことなのかと頭を抱えた。そしてもう一度自分の姿を見る。


「…」


 本当に女性だ。

 しかもそこそこ可愛い。


 この理解不能の状況で、もし自分が女性に生まれ変わったらやりたかった事を実践してみた。


 膨らんだ胸部を掴む。


「…」


 もっと興奮を覚えるかと思ったが、予想以上に何も感じなかった。まぁそりゃそうだよな。自分の身体を触って興奮する訳ない。


 溜息をついて椅子に腰掛ける。

 とりあえず状況が全く理解出来ない。


 とりあえずここが元々住んでいた我が家であるのであれば、ここは二階である事は間違いない。外の景色もいつも見てる光景だ。


 俺は一階に降りて他に変化が無いか確かめようと思い椅子から立ち上がろうとした瞬間、どこからか可愛らしい声が聞こえてくる。


「こんにちわー!おーい!」


 声は確かに聞こえるが、どこから誰が出してるのか分からない。聞こえている声からして近くの筈なのに…


 周囲に視線を散らしていると額に石ころでも当たったかのような痛みが走った。


「ここだよメイ。ここ!」


 俺は幻覚でも見ているのか。


 自分の頬を叩き、もう一度声のした方に視線を戻すがやはり幻覚では無さそうだ。



 …手のひらぐらいの大きさの羽根の生えた人間が目の前を浮遊している。



「何ビビってんだよ!これからよろしくね!メイ!」

「あの…どちら様ですか?」



 自分の年齢が十歳近く若返り性転換。

 挙げ句の果てに目の前に羽根生やした小さい人間が現れる。



 この状況で冷静に居られる方が異常だろう。



 しかしそんな俺の事なんて気にも留めずに小さい羽根の生やした人間は話し続ける。


「イデルの化身としてこの世界にカムバックした芽色メイロ メイ。僕は化身のサポート役のルディだよよろしく!一応妖精って事になってるからそこんとこよろしくね!」

「…」

「何で無反応なんだよ!自己紹介しろよクソ野郎」



 言葉遣いの悪い妖精だなこいつ。



 それはそうととりあえず黙ってても埒があかない。

 出された情報をひとつずつ確認していくとしよう。



「じゃあルディ、俺の名前は芽色メイロ アキラ。今の状況は全く理解出来てないけど、とりあえずそのイデルってのは、あの金髪の女の子のこと?」

「女の子?ただのババアだろ間違えんなよ!」

「まぁ容姿で年齢を判断しちゃだめだもんな…。分かった。で、俺の容姿がこんな変わったのもそのイデルのせいなんだな?」

「そうだ。お前は契約したんだろ?前の世界で死ぬ代わりにイデルがリビルドしたこの世界で新たな人生を歩むって」



 ルディの話は真実だが、あれが契約になるのか定かではないが話を聞く限りそうなのだろう。



 そしてリビルドしたって…


 英語で直訳すれば『再構築』あたりが妥当か。


 それより世界を新たに作り替えても英語や日本語はそのまま使えるのはこういう展開で助かる。

 ゲームやラノベ小説で鍛えた厨二病脳がここで役立つとは、人生やって損な事って本当にないんだなと痛感した。



 しかし気になる事がまだある。


 いやありすぎるが前提として世界を再構築した割には変化が無い。

 確かに俺の容姿も目の前の妖精も再構築後に何らかの設定?的なものが変わり今までの世界ではあり得ない事が起きている事は理解出来るが、こういう場合大体中世のヨーロッパ風な感じの場所とか戦国時代の戦場だったりするのが通例じゃないのか?明らかに環境に変化がみられない。


 ただ俺が性転換と若返りを果たしただけなのか?


 俺の疑問は増え続ける。




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